篠貴 美輔

本名も顔も知らない5人が一つの共通の趣味をきっかけにSNSで出会い、そこから小説作りに…

篠貴 美輔

本名も顔も知らない5人が一つの共通の趣味をきっかけにSNSで出会い、そこから小説作りに発展したチーム「篠貴 美輔」です。 他にはない唯一無二の新しい試みに挑戦しようと思ってます。少しでも興味を持った方は是非ご覧になって下さい。フォローもよろしくお願い致します。

最近の記事

『一人の哀れな女性のための回想』7話目(完)

私は久しぶりに佐川さんと暮らした家に帰ってきた。 あのあと、石橋社長は私を脅して利用したことにし、庇ってくれた。 この豪邸にはもう、私しか住んでいない。 久しぶりに帰ると、土地の権利書と建物の所有権が記された書類が置いてあった。 書類には私の名前。そして、書類を持ち上げるとメモがひらりと落ちた。 『私の遺産だと思ってほしい。私のすべてをお前に譲る。』 メモにはそう記されてあった。 私はあの時、佐川さんは自分だけ助かろうとしていたのかと思った。 今までのことを考えたら、そ

    • 『一人の哀れな女性のための回想』6話目

      麗美は静かに私の話を聞いていた。 佐川『お前が恨むべきなのは金ではない。この私だ。』 私は必死だった。静かに話すことができるのは、もう今回限りかもしれない。 佐川『お前を見ているとわかる。人が生きるのは、人のためであるべきだと。お前は金のためにいろいろなものを犠牲にし、多くの人を傷つけた。だが、その責任は私にある。』 麗美は頭を抱えながら私の話を聞いている。 佐川『お前は妹である夏木を大切にしろ。これは俺の遺言だと思ってほしい。』 私は、一番伝えたいことを麗美に伝えた。

      • 『一人の哀れな女性のための回想』5話目

        佐川さんのところに転がり込んだ私は、まだ外に出る気にはなれなかった。 どうして私ばかりこんな不幸な目に合うのだろう。 でも、私には佐川さんがいた。佐川さんは私を見捨てなかった。 あのプレゼンの日。秋菜は鹿島社長に許され、私たちから離背した。 許せない。これは裏切り以外の何物でもない。 秋菜。私はあなたを許さない。 どうにか秋菜を、ランディアを不幸に陥れることができないだろうか。 私はそのことばかり考えていた。 私が持っているカード。 それは佐川さんと…プレゼンのデータ。

        • 『一人の哀れな女性のための回想』4話目

          麗美は人が変わってしまったようだ。 すべて私のせいであるが、これで良いのだ。 いや、自分にそう言い聞かせることしかできなかった。 麗美がどうなろうと、私がどうなろうと、私は麗美を守ると決めたのだから。 麗美は突然、私が社長に躍り出る策があるなどと言ってきた。 私は麗美のためならなんでもやる。 いつかそう誓ったのだ。 私は躊躇なくその策などという話を聞いた。 私は自分の会社が開発した繊維をタイヤに使うという発想に驚いた。 株式会社ランディアなどという会社は、とんでもないこと

        『一人の哀れな女性のための回想』7話目(完)

          『一人の哀れな女性のための回想』3話目

          私は狩野麗美。奈良県の会社で社長秘書をしている。 貧しい家庭で育ち大変な思いもしたけどある人の協力で立ち直り、大切な人もできた。 大切な人は山崎さんといって、同じ会社の営業マン。 優秀で、父親は研究者なんだって。すごいでしょう? 今日は先日ちゃんとできなかった親への紹介をする日。 先日は急遽仕事が入って帰ってしまったけど、私が東京にいるうちに戻ってきてくれるらしい。すごく優しいでしょ? 私は用事があって出かけなきゃいけないから、先に家で待ってもらうことにした。 私はその

          『一人の哀れな女性のための回想』3話目

          『一人の哀れな女性のための回想』2話目

          麗美はクリスマスが好きだといった。 理由を聞くと、クリスマスには1年に一度だけシチューを食べることができるらしい。 母親が作るそのシチューが、とても暖かくて美味しいのだと。 私はその日、麗美を高級レストランへ連れていき、シチューを食べさせた。 麗美はシチューに目を輝かせ、首をかしげながら食べていた。 私はそんな麗美を見るのが、楽しかった。 高校生になった麗美は女性の雰囲気を身に纏い、どんどん美しくなった。 私は陰ながら彼女の成長を見守っていた。 そんな麗美に、恋人ができた

          『一人の哀れな女性のための回想』2話目

          『一人の哀れな女性のための回想』1話目

          私の名前は佐川翔輔。私は今日、死ぬ。 なぜ死ぬかって? 今日は私の死刑が執行されるからだ。 私は多くの人を殺めた。無差別殺人だ。 私利私欲のため…いや、本当は違う。 一人の哀れな女性のためだ。 今日は最後に、あの女性のことを思い出そうと思う。 ~15年前~ すべてが憎かった。 目の前のすべてが癪に障る。 おかえりなさい 毎日毎日妻は私を出迎えるが、その出迎えさえ私を苛立たせた。 いつしか、その出迎えは無くなっていた。 この豪邸には、私一人しか住んでいない。 仕事が

          『一人の哀れな女性のための回想』1話目

          【AviUtl】オリジナル小説のPV動画を作りました

          数時間後にあの世へ旅立つ男が想うのは、一人の哀れな女性のことでした。 デビュー作品「陰謀の影には美女がいる」のスピンオフ作品「一人の哀れな女性のための回想」のPV動画を制作しました。 あらすじ私の名前は佐川翔輔。私は今日、死ぬ。 なぜ死ぬかって? 今日は私の死刑が執行されるからだ。 私は多くの人を殺めた。無差別殺人だ。 私利私欲のため…いや、本当は違う。 一人の哀れな女性のためだ。 今日は最後に、あの女性のことを思い出そうと思う。 主な登場人物佐川(40代後半)栗林繊

          【AviUtl】オリジナル小説のPV動画を作りました

          『陰謀の影には美女がいる~続~』全10話

          【はじめに】 篠貴美輔です。前回の小説の続編を書き上げました。お仕事小説でみなさんを元気に。たくさんの人に読んでいただけたら嬉しいです。 【あらすじ】 裁判長『被告人。前へ。』 鹿島は静かに立ち上がった。 ………………… 若くしてタイヤメーカー「ランディア社」を立ち上げた社長である鹿島(かしま)は、次世代タイヤの開発に成功し、そのシェア率は30%に到達した。 順調に売り上げを伸ばしていった矢先、不穏な動きが立ち込める。 突如、裁判席へ立たされる鹿島。 途方に暮

          『陰謀の影には美女がいる~続~』全10話

          『陰謀の影には美女がいる~続~』10話目(完)

          藤木『というわけなんですよ。社長。』 いつものバーのカウンターで、藤木と鹿島が談笑をしている。 鹿島『それにしてもよく俺の伝えたいことを理解してくれたな、なあ夏木。』 夏木『いえ、みんなが事件を紐解いてくれたおかげです。でも控訴期限に間に合わなかった時は本当に焦りました。それより、よく裁判の時点でここまで先読みできましたね。』 鹿島『俺は自分の仕事に自信を持っている。加硫剤が少ないなんてふざけたタイヤは作らない。あの時点で事故を起こしているタイヤは偽物だと確信していた

          『陰謀の影には美女がいる~続~』10話目(完)

          『陰謀の影には美女がいる~続~』9話目

          夏木『何を勘違いしているのかしら?私たちが探しているものが《無い》なら、そのタイヤはランディアが作ったものではないという何よりの証拠ですよ。』 藤木『えっ?どういうことだ?』 石橋『?何を言っているんだ。』 夏木『鹿島社長は最初からここまでの展開を先読みしていたんです。だから社長は特別企業秘密を私たちに託した。』 石橋『だからなんの話をしている。偽物である証拠はあるのか無いのかどっちなんだ。』 夏木『企業秘密とは、タイヤに刻印されたシリアルナンバーのことです。』

          『陰謀の影には美女がいる~続~』9話目

          『陰謀の影には美女がいる~続~』8話目

          ギャロップタイヤの本社を訪れた株式会社ランディア一同を、ロビーで狩野が出迎えた。 狩野『やはりあなたたちだったのね。何の話がしたいのかわからないけど、変な疑いをかけられても困るから話し合いをしてあげる。』 夏木『あら、どうしてわかったのかしら?今日はとことん追求させてもらうからね。』 佐川『私が教えたんですよ。』 夏木『さ、佐川さん?どうしてあなたがここに?』 佐川『我々小島運送の社員にもあらぬ疑いがかけられていますからね。うちの社員を尾行してたのは知ってますよ。…

          『陰謀の影には美女がいる~続~』8話目

          『陰謀の影には美女がいる~続~』7話目

          内山は早速ユーズドカーを訪れ、マイカー用のエコライフを注文した。 店員『あれ?エコライフは販売中止になってませんでしたか?ランディアさんに問い合わせてみますね。』 ランディアに問い合わせの電話をかけた店員は、驚きつつも再販を受け入れた。 店員『では今日注文しますので、2、3日で届くと思います。そのときにまた来てください。』 内山は代車に乗り込むとすぐに夏木に報告を入れた。 内山『これであとはタイヤの流れを追うだけね。あとはお願いしますね、藤木さん。』 藤木は株式会

          『陰謀の影には美女がいる~続~』7話目

          『陰謀の影には美女がいる~続~』6話目

          現状が少しずつ見えてきた。 しかし曖昧なことが多いため、各人は裏付け調査に取り掛かる。 高中は早速東北支部の鞠井に連絡を取り、ドライブレコーダーの確認を依頼した。 同時に藤木は関西支部の坂茶へ連絡し、ランディア研究所の現状確認を依頼した。 藤木『もう出張している時間はないな。とにかく鞠井さんからの連絡を待ってる間俺たちは本社を中心に調査に当たるしかない。』 内山『そういえば、暗号についてわかったことはあるんですか?』 夏木『暗号は私たちが金庫室の裏口を見つけられるよう

          『陰謀の影には美女がいる~続~』6話目

          『陰謀の影には美女がいる~続~』5話目

          関西、東北へ出向いた人員は本社に集まっていた。 夏木『控訴期限まで時間がない。控訴するには、社長が無罪である決定的な証拠が必要です。現時点でわかっていることをまとめましょう。』 藤木『俺は研究所で山崎さんと話したが、冒頭陳述にある加硫剤が少ないなんてことはありえないと聞いた。俺が研究所を見た限りでは、不良品が社外に出回るなんてことは考えられない。それと、これがエコライフの研究データだ。』 滝沢『私は東北支部で、エコライフの事故は中古車販売店の株式会社ユーズドカーが販売し

          『陰謀の影には美女がいる~続~』5話目

          『陰謀の影には美女がいる~続~』4話目

          高中を本社に置いて先行し東北支店に到着した滝沢は、実態の把握に向け書類と格闘していた。 滝沢『出荷の明細が多すぎてなにがなんだかわかりませんよ…。』 滝沢は事故を起こしたタイヤの出荷先を探していた。 そこへ東北支店の経理である鞠井さんが顔を出した。 鞠井『なにをしているんですかー。』 滝沢『事故を起こしたタイヤの出荷先を特定したくて調べているのですが書類が多くて……。』 鞠井『取引先のデータから照合した方が早いかもしれませんよー。こちらでも調べてみますね

          『陰謀の影には美女がいる~続~』4話目