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物語綴り

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#小説

窓からのお客さま

窓からのお客さま

窓をコツコツと叩く音で目が覚める

今日も窓の外で羽を休めるこの子に起こされた

なんとなくあの子に向かっておはようと一言

伝わらないのはわかってるけど
なんとなく挨拶

予定より早く起きたことをプラスに捉えて
飲み物の準備
それを窓から少し離れた場所に座って
あの子を観察

ここ最近はこれが日課になりつつある

消えないなにか

消えないなにか

風にはためく洗濯物が
誰かを想起させる

それは想い人かもしれないし
古い記憶の中の誰かかも
もしくはどこかで印象に残った
名前を知らない人かもしれない

はるかぜ

はるかぜ

風が頬を撫ぜる

そんな表現がしっくりくる

春の穏やかな風

こちらの気分次第であてはまる表現が
変わるとは思うけれど

夏のように湿り気をおびるわけでもなく
秋のようにそっけないわけでもなく
冬のように痛々しいわけでもない

そんなことを思う午後の日

波の動きにあわせてたゆたう月の道。
夜道に浮かぶ月が綺麗で、海までやってきた。
そこに見える月の道は、まるで自分を誘うかのようにはっきり映る。
きっと月の魔力がそうさせるのであろう。幻想的な風景に魅了されながら、今日も月夜を彷徨う。