【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 6 (「澪標」シリーズより)
栃木県小山市の高齢者施設。駐車場に植えられた八重桜が、薄曇りのなか咲き誇っている。
僕と澪さんは施設の玄関前に立っていた。
「……航さん、顔が険しいです。うちの両親に会うの、止しましょうか?」
澪さんが不安そうに、僕の顔色をうかがっていた。
「大丈夫です。ちょっと緊張しているだけです」
再婚とはいえ、ご両親の大事な娘をもらい受けるわけなので、礼儀を欠くわけにはいかなかった。それに、僕にはどうしても彼らに伝えたいことがあった。
「そうですか。私も緊張しています……」
澪