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夢見るそれいゆ 257
放課後になると、刺すような西日を浴びながら、私は國吉先輩がいる弓道場に向かった。
弓道場は中等部と高等部共用なので、私も入ることが出来る。弓道場に入ろうとしたら、入口のところに見知らぬ中年男性が立っていた。その人は真夏だというのにスーツ姿にネクタイをきちんと締め、じっと國吉先輩の弓を構えるのを眺めている。
まさか、國吉先輩から事件の話を聞き出そうと、部外者が入ってきてしまったのだろうか?そうだとしたら、先輩を守らないといけない。私は意を決して、不審者に話し掛けることにした。
「すいません。あなた学校関係者ではないですよね。何か御用ですか?」
私は不審者に近づくと、鋭い目つきで不審者に睨み付けた。
「す、すいません。私はこういう者です。仕事でこの学校に伺ったのですか、弓道場を見つけて懐かしくなって、見学していました!」
私の睨みに、男性はたじろぎながら名刺を差し出した。
「試験運営……営業部長……海宝 航?」
「はい。ある資格試験にこの学校を会場に使わせてもらえるよう営業に伺いました」
男性は歳下の私に対して丁寧な言葉遣いで説明した。嘘をついているようには見えなかった。
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