【コラボ小説】ただよふ 4(「澪標」より)
僕が自分の部屋で鞄の整理をしていた時のこと。
「…あった!」
取引先から「ご家族とどうぞ。」といただいた高級中華料理店の割引券を財布から取り出した。
いつもなら、すぐに捨ててしまう類いのもの。
妻が周りに気を遣ってしまうので、一緒に「そういう場所」には行くことがなくなってしまったから。
何か大きな仕事を成し遂げたら、あなたを食事に誘おう。
僕はその日が来るのを楽しみに、割引券を再び財布に忍ばせた。
うだるような炎天下の中、僕は取引先のS大から徒歩で会社に向かっていた。