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ピアノを拭く人 [長編小説] (完結)

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彩子が出会った素敵なピアノを奏でる男性は、些細なことが気になって居ても立ってもいられなくなる病に悩まされていた。
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2021年7月の記事一覧

ピアノを拭く人 第4章 (3)

 彩子は、緊張と名状しがたい重苦しさを振り払うため、マウスを握る右手に力を込め、動画の編…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第4章 (4)

   強風で、車まで揺らされる昼下がりだった。どこからか飛んできた白いレジ袋が、彩子の運…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第4章(5)

「赤城先生が女性だと知ったら、彩子が嫌がると思ったんだ」  重苦しい空気が立ち込める車内…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第4章(6)

 真一の白いBMWを追いかけ、着いた先は彼の父が住職を務めている寺だった。砂利の敷かれた駐…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第4章 (7)

 激しかった風は、だいぶ落ち着き、星月夜になっていた。  彩子はハンドルを握りながら、透…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第4章 (8)

 気温は低いが風はなく、陽が注ぎ、寒凪という言葉が似つかわしい日だった。彩子は、フェルセ…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第4章 (9)

「髪型、すっきりしましたね」  2人を呼びに廊下に出てきた桐生は、透が散髪をしてきたことにすぐに気付いた。患者を迎えにきた他の心理士も、何かしら患者に声を掛けている様子を目にし、彩子は改めてこのシステムに好感を抱いた。 「ええ、ずっと、鬱陶しいと思っていたので。先生も、髪を切りましたね」 「そうなんです。ショートだと、すぐに襟足が気になるんですよ」  透は桐生と自然に雑談をしていた。透がロボットのように緊張していた初回から立ち合っていた彩子は、リラックスした姿を見て心が温かく

ピアノを拭く人 第4章(10)

 Zoomセミナーの開始時間まで、透がピアノで奏でるベートーヴェン 交響曲第9番の第3楽章が流…

may_citrus
2年前
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ピアノを拭く人 第4章(11)

 前半を終えた4人がミントウォーターで喉を潤しているとき、彩子は桐生と透と共に、座る位置…

may_citrus
2年前
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