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ピアノを拭く人 [長編小説] (完結)

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彩子が出会った素敵なピアノを奏でる男性は、些細なことが気になって居ても立ってもいられなくなる病に悩まされていた。
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2021年6月の記事一覧

ピアノを拭く人 第3章 (1)

 温かい爽健美茶が、本社での仕事で強張った身体に、じんわりと染みわたる。彩子は、緊張がほ…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第3章 (2)

 改札を出た彩子は、透と羽生それぞれに買った土産の袋を抱え直した。駅を出ると、冷たいか…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第3章 (3)

   閉店後、透はマスクの中で「僕こそ音楽」を口ずさみながら、クロスに鍵盤用クリーナーを…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第3章 (4)

 彩子は、勤務の終わった透を拾うために、フェルセンの駐車場に車を入れた。木の間にのぞく冴…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第3章 (5)

 月は川面に映りそうなほど、煌々と輝いている。彩子は、信号待ちをしながら、買い物を繰り返…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第3章 (6)

「何?」  彩子は透の目を見るのが怖く、彼の黒いセーターの胸元に視線を固定して尋ねた。外…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第3章 (7)

 彩子はソファから立ち上がり、真っ直ぐバスルームに向かった。  ピンクグレープフルーツの香りのボディソープで、いつもより入念に体を洗う。  誰かのためになることを糧に生きてきた。誰かに幸せをもたらすことで、自分も幸せになれた。誰かのために尽力したことが、他の誰かを傷つける悲しみも知った。それでも、自分は誰かのために生きたい。  いま、愛する人が自分を求めている。  自分が彼の時間を彩り、それを共に構築できることを思うと、生のエネルギーが全身に満ちてくる。  彩子は髪を洗

ピアノを拭く人 第3章 (8)

 年の瀬が迫っているが、車は思ったよりスムーズに流れている。新型コロナウイルスの感染者数…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第3章 (9)

 桐生のカウンセリング室の『睡蓮』は、今日も優しく2人を迎えてくれる。 「お店でのお客様へ…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第3章 (10)

 雀のさえずりで、目を覚ました彩子は、寝起きの頭をフル回転させ、自分がどこにいるのかを考…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第4章 (1)

 遮光カーテンの隙間から、金色のヴェールが差していた。彩子は、エアコンを点けずにベッドか…

may_citrus
3年前
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ピアノを拭く人 第4章(2)

 透の交友関係は、知らないに等しい。誰に紹介されるのか考えても、何も浮かばない。過去に関…

may_citrus
3年前
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