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エッセイ・評論など

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音楽、その他の芸術や社会問題についての評論やエッセイなど。力を入れて書いたものから、気軽に一気に書いたものまで。とりとめのない雑感も。
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心の重みーー堀米ゆず子のバッハ

心の重みーー堀米ゆず子のバッハ

 ヴァイオリニストの堀米ゆず子さんのJ.S.バッハの無伴奏ソナタとパルティータのアルバム(2016年)は、私のヴァイオリン観を覆すほどの圧倒的な演奏で、今でも愛聴盤の一つである(その演奏については以前別の場に書いた)。彼女が昨年11月11日にサントリーホールで開いた自身の演奏活動40周年を記念するリサイタルは、そのバッハの無伴奏ソナタの第1番、第2番、パルティータの第1番、第2番で構成されていて(

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いのちを吹き込む音――寿明義和の配信演奏会

いのちを吹き込む音――寿明義和の配信演奏会

 演奏家の手によって、単に楽譜に書かれたことが「再現」されるだけでなく、そこにいのちが吹き込まれて初めて、聴く者は作品及び作曲者と出会うことができる。よく、「演奏家は作曲家の僕(しもべ)でなければならない」というような言葉を耳にする。言わんとしているところには異論はないし、共感もするが、しかし演奏家の担うその役割の大きさに改めて思いを巡らせると、演奏家の存在は、決して作曲家よりも下位に属するもので

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心に寄り添う6弦――福田進一の配信演奏会

心に寄り添う6弦――福田進一の配信演奏会

 OTTAVAが主催する配信企画「The Concert at Home」にギタリストの福田進一さんが出演した。
 ギターという楽器の特性もあるだろうが、1時間、福田さんがふらっと家に現れて、寛いだ気分で演奏を聴かせてくれたような印象を受けた。勿論演奏は真摯そのもので、曲間のトークで本人が話していたように、彼の中には挑戦があり(古い楽器で1920年代の作品を演奏するなど)、緊張もあっただろうが、瞬

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