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2022年8月の記事一覧
濁りのない、清冽な音──アルテュール・グリュミオー『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ(全曲)』【名盤への招待状】第9回
濁りのない、清冽な音を浴びたいとき、アルテュール・グリュミオーの『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ(全曲)』をかける。ソナタ第1番ト短調の冒頭の和音が響いた瞬間から、耳の奥にこびりついたさまざまなものが洗い流されてゆく。淀んだ空気さえも凛とさせてしまう澄みきった音は、宿命的な響きをもつト短調の悲しみをたった独りで引き受けるような高潔さに満ちている。繊細だが内向的ではなく、
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