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なぜロビイングがESG/SDGs/CSVのトピックなのか

本記事は、ESG/SDGs/CSVに関しての個人的な学びのアウトプットです。

ロビイングのバイブル」という書籍をざざっと読みました。バイブルと銘打っていますが文字数はそんなに多くないので、さくっと読めて入門書といった感じでした。

なぜロビイングがESG/SDGs/CSVのトピックなのか

ロビイングのバイブル」の学びがなんでESG/SDGs/CSVに関するトピックなのかというと、以下のnote記事で紹介した「戦略的国際標準化加速事業:ルール形成の普及に向けた評価指標とその活用方法の開発に関する調査」という経産省の調査事業のレポートがきっかけになります。

SDGsで表現されるような社会課題と中長期的な事業拡大と企業の持続可能性、つまりは収益性の確保を両立していくというCSV(Creating Shared Value)が求められてくることで、経営にESGが求められるようになりました。

ESGは基本的に、ファイナンスから出てきた考え方です。マーケティングは最近は、デジタルマーケティングが脚光を浴びていますが、このレポートでは非市場戦略という観点が提示されました。この非市場戦略といわれるものが、ルールメイキング、ロビイング、パブリックアフェアーズといった言葉で表現される領域なんだな、と知りました。ということで、ちょっと深掘りしてみようかなと思ったわけです。

ちなみに、先に紹介の経産省のレポートについては、以下でさわりもまとめていますので参照いただけますと幸いです。

対話例:欧米は大義からルールメイクしてくる

ロビイングのバイブル」の中で、欧米は社会をよくする提案に徹し、相手の「No」を正当性で完封するためにルールメイクをしてくる、といった内容が第二章で書かれていて、その中ででてくる欧米人と日本人の対話の例がルールメイキングを非常にイメージしやすかったので紹介します。

欧米に大儀をもとにルールメイクされる対話例

欧米「もっと環境に配慮するために、われわれ人類にできることはなんだろう」
日本「それならうちの製品は省エネですよ」
欧米「今は個々の製品の話をしているのではない。社会制度のあるべき姿について話をしているのだ」
日本「だけど、間違いなく環境に優しいですよ」
欧米「まずはこれ以上の環境破壊を進行させないために、この基準からはずれる製品は販売できないようにしよう」
日本「(制度?基準?またタイソウな話だな・・・。しかし、どんな基準かはわからないが、うちの技術力があれば、どんなものでもクリアできるだろう)」
欧米「ではわれわれが作ったこの基準を、ほかの国でも遵守するようにすべきだな」
日本「(俺たちは環境規制が厳しい日本で商売してるんだ。どんなルールを持ってこられても乗り越えられるさ)」
欧米「ところで、日本が販売しているこの商品は、われわれのルールに反しているから規制する必要があるな」
日本「え!そんなばかな。いったいどこが反しているっていうんですか」
欧米「われわれの基準をよく見てみろ。おたくはAも、Bも、Cも守れていないじゃないか」
日本「(そんな!日本とは全然評価軸が違う!)」
欧米「これでは、今後日本製品は輸入することはできないな。環境を守るためのルールに適合していないんだから」
日本「すいません、待ってください。皆さんのルールに合うように、製品を作り直してきます」
引用:p.64-66, 「ロビイングのバイブル

カリフォルニア州のZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)規制において、2018年モデル以降、ハイブリッド車がエコカー対象から排除されてしまったことを彷彿とさせます。ルールメイクによって、日本は技術力が高いのに、ルールに適応するために作り直しが発生しコストが高くなっていくということに警鐘を鳴らしています。その上で、例えば、技術力をもってして大儀を掲げたコミュニケーションの例が提示されています。

技術を背景に理念に昇華した交渉の対話例

欧米「もっと環境に配慮するために、われわれ人類にできることはなんだろう」
日本「日本の環境規制は非常に厳しいため、われわれの製品は環境負荷も低い。各国においても、日本のルールを参照しながら技術開発をすることが必要ではないでしょうか」
欧米「(確かに日本の技術力は高い。すぐにおいつくことは難しいな)」
日本「合わせて、世界的にも進んでいる日本の環境規制を各国にも導入すべきです。国際的なルールとして採用しましょう」
欧米「それは急でしょう。そんなこと言われてもすぐには対応できない」
日本「いえいえ。世界的な環境問題はもう待ったなしの状況です。各国が手を取り合って環境を守っていくためには、今すぐ行動を起こすべきです」
欧米「しかし、この基準だと厳しすぎる。環境保護は重要だが、多くの企業が倒れてしまう」
日本「では段階的にルールを適用していきましょう」
欧米「(まいったな。今から製品開発しても、規制に間に合うか、ぎりぎりだぞ・・・)」
引用:p.67-68, 「ロビイングのバイブル

きっと、政策渉外の現場におられる方からすれば、こんな交渉ができればしてるよ、と言いたくなるような対話例なのかもしれません。ただ、私はこの2つの対話の例を見て、なるほど、これが今、世界で起きている、ルールメイキングによる戦いなのだな、というのがすごくイメージすることができました。

そのほかのこの領域の書籍

ぱっとググった感じ、この領域では、他に以下の書籍が気になりました。ばばっと目次とはじめにあたりを読んだ感じでは「世界市場で勝つルールメイキング戦略」がよさげかな、と思っています。

世界市場で勝つルールメイキング戦略 技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか/國分 俊史 (著), 福田 峰之 (著), 角南 篤 (著)
パブリック・アフェアーズ戦略/西谷 武夫 (著)

このほか、当方のESG/SDGs/CSV関連の記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie


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