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生物多様性をグローバルリスク、TNFD、SDGsそして森って観点で総ざらいしてみた

多様性。ダイバーシティ&インクルージョンという言葉は、社会や組織において、多様な人の考え方、価値観、文化などを受け入れること。それが社会や組織の強さになることだ、と言われています。

生物多様性。最近、「ヒト」の多様性だけでなく、「生物」の多様性という言葉もよく目にするようになりました。こちらは多様な生物、そして生物同士の相互作用で形成されている生態系を維持することが、持続可能な社会、地球環境の維持につながる、というコンセプトです。

この生物多様性に関して、世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書、TNFDのレポート「SCOPE IN NATURE」、SDGsの達成度レポートなどを調べて発信してきた学びのまとめのエッセンスを、総まとめしてみました。

人材の多様性については、以下の記事、参考になれば幸いです。

2022グローバルリスク第3位

以前「グローバルリスク報告書2022年版がでたんで、2021年版と比較してみた」というnote記事で、世界経済フォーラムが出しているグローバル報告書で、気候変動、異常気象に次ぐ3番目のグローバルリスクとして「生物多様性の喪失」が挙げられていることを書きました。

図:World Economic Forumのグローバルリスク報告書2021および2022をもとに篠崎作成

生物多様性の喪失は正確には「生物多様性の喪失や生態系の崩壊」でありその内容は、2021年の日本語版レポートに以下のように定義されています。

生物多様性の喪失や生態系の崩壊
種の絶滅や減少の結果としての環境、人類および経済活動に関する不可逆的な影響や自然資本の恒久的な破壊

World Economic Forum, 2021, 第16回グローバルリスク報告書2021年版

グローバルリスクはつながりあっている

グローバルリスクは、お互いに関係しあっており、広範に影響を与えることも特徴で、レポートでは毎回、印象的なインフォグラフィックが提示されています。以下は、2022のレポートのものです。

図:World Economic Forum, 2022, The Global Risks Report 2022 17th Editionより

生物多様性の喪失(Biodiversity loss)が下側に並べられたいろいろなグローバルリスクと関係しあっていることを示しています。例えば、生物資源危機、やむを得ない移住、感染症、人間環境へのダメージ、異常気象、生活破綻、気候対策対応の失敗などへ影響を与えると分析されています。

TNFDのフレームワーク検討が進行中

このように生物多様性は、大きな影響を経済活動に与えるため企業に対して情報の開示の仕組みの整備が進んでいます。

東証プライム市場の条件として義務化された気候関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)に続いて、自然資本等に関する企業のリスク管理と開示枠組みを構築するために自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:TNFD)という国際的組織が設立されいます。

これによって、TCFDから6年ずれくらいで、企業は、自然資本(ここに生物多様性も含まれると想定)に関して、自社のリスクや機会に関して、投資家へ情報開示が求められるようになると想定されます。以下、記事参考。

TNFDが2021年6月に発行した「NATURE IN SCOPE」というレポートによればTNFD のスコープは、生物、空気、土壌、水などの生きた自然に関連する要素に焦点 を当てています。ざっと読んでみてまとめた当方の以下noteもご参照ください。

生物多様性は、生物の種類だけを見ていてもしょうがなくて、空気、土壌、水などの自然環境および生物同士の相互作用を含む生態系が対象になるわけですね。

世界経済の半分は自然に依存している!?

また、世界経済フォーラムの「Nature Risk Rising: Why the Crisis Engulfing Nature Matters for Business and the Economy」によれば自然に対する依存度が中等度または高度に該当する 経済活動は、世界の経済の産出量の半分以上 (44 兆米ドル分の創出された経済価値)となるそうです。

なかでも特に自然大きく依存する産業トップ3は、建設(4兆ドル)農業(2.5兆ドル)食品・飲料(1.4兆ドル)となるそうです。

本レポートを読んで感じたことは、以下のnoteに記載しましたが、地球温暖化で石炭火力発電に対してダイベストメント(投資引き上げ、投資しない)が起きました。発電であれば、風力発電や太陽光発電など代替サービスがありました。一方で、建設、農業、食品・飲料は、それ自体が人の文化や価値観とも密接に関わる製品・サービスであり、単純に代替サービスにシフトするために産業に対してダイベストメントができないと思われます。

たからこそ、TNFDで情報開示についてのフレームワークが整備されることで、投資家は、生物多様性という観点でしっかりと取り組めている企業へ投資することができるようになることが重要なのだと感じました。

SDGsにみる日本の生物多様性への対応の状況

さて、ちょっと視点を変えます。SDGsの達成度ランキングを公表している「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2021」によれば日本のサマリーは以下のようになっています。

生物多様性という観点でこれを見ると海の多様性に関する14番と陸の多様性に関する15番は赤信号のままということで、日本は生物多様性の対応が芳しくない状況であることがわかります。

レポートの中身をこう少し深堀した記事は、以下を参照いただくとして、中身をみると、絶滅危惧種の状況の悪化や、生物多様性を維持する上で重要なエリアの比率が増えていないことなどが記載されています。

つながっている山・森・土・川・海

例えば、日本には豊かな自然がある、と思われていますが、国土の7割近くを占める森は、戦後の復興で大量に植えられたスギが植えられました。これは生物多様性の喪失に当たるのでしょう。それによって感染症ではないですが、スギ花粉が大量に発生するようになったことが、花粉症という国民病(?)の一要因になっているのだと思います。

また、単一の樹木を植えた森においては、地面の中の生態系が豊かにならなかったりします。これは根の張り方の特徴が樹木によって違ったり、樹木の枝葉の張り方の違いにより地表の日の当たり方の違いだったり、地中の生物の栄養になる樹木が落とす枝葉の栄養が異なったりするためでしょう。

いろいろな種類の樹木や地表の生物がいる森は水源涵養(かんよう)といって、水の保水力が高くなります。そうすると、土砂崩れや洪水といったリスクが下がります。また、川に流れ込む水も栄養が豊かになり、川の生物多様性も高まるでしょう。そして、それは海の生物多様性にもつながっています。

林野庁の森林・林業白書では、森林の有する多面的な機能を以下のように貨幣評価できる一部の機能だけでも年間70兆円の価値を有しているといいます。

図:林野庁, p.67, 令和2年度 森林・林業白書より

生物多様性という概念の広さや影響に関して、こういった観点からも大きさを感じられますね。

おわりに

今回は、これまで当方のnoteで発信してきた情報を最近のキーワードである「生物多様性」という観点で総ざらいしてみました。いかがだったでしょうか?

このほか、当方のESG/SDGs/CSV関連の記事は以下のマガジンにまとめています。もしよかったら「フォロー」してみてください。また、記事への「スキ」もしていただけると励みになります。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie


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