見出し画像

新刊紹介「マッサゲタイの戦女王」古代オリエントの戦記小説 第一回女王の名前

今年2冊目の単行本です。

紀元前6世紀、アケメネス朝ペルシア帝国の勃興期という戦乱の時代に、ペルシア軍を返り討ちにした中央アジア遊牧王国マッサゲタイの女王、トミュリス(作中名はタハーミラィ)の物語です。

当時カスピ海東岸から現在のトルクメニスタン一帯を支配していた、マッサゲタイ族については諸説がありますが、本書ではスキタイ系の遊牧民という見方を採用しています。

宗教的には、太陽神スーリヤを崇拝する多神教ともされています。作中では想像と創作を交えて、古来からのミトラ神崇拝やゾロアスター教に傾倒しつつあったペルシア・メディアとの対比を際立たせるためにインド・アーリア系の神々の名を借用しました。

遊牧民の記録は考古発掘資料の他は文献がなく、文献ではギリシアやペルシア側の残した記録と伝説に頼る他はありません。もちろんトミュリス自身の出自や生涯はまったく知られておらず、もしかしたら「トミュリス(希)/タハムリーシュ(波)」すら、女王の本名ではなかったかもしれないのです。

というのは、カバーの装幀が届いた時にタイトルにペルシャ語で「تهمرییش:タハムリーシュ」あったので、なんだろうと思い辞書で意味を調べたのですね。辞書には載ってなくて、代わりに「تهم:タハム:勇敢な、強い」という単語を見つけました。「رییش」はスペル自動修正で「رییس:ライース:首長」になるので「戦女王」をそう訳したのかな、では最後のشはسのスペルミスかなー、だったら修正した方がいいのかな、と思い担当氏に問い合わせたら、トミュリスのペルシア語表記とのこと。しかもその資料を用意したの私でした😓😓😓

確かにそうでした。つかこの資料と原稿持ち込んだの3年前だし。すっかり忘れてましたポンコツ脳。

赤っ恥はさておいて、ふっと思ったのですよ。なんせペルシア語の古語の発音、現代では知るよしもない。音の転訛があってもおかしくない。まして外国人の名前の音写です。ペルシアーマッサゲタイ戦争について書き綴ったヘロドトスにとっても100年以上も前の昔話です。

「トミュリス/タハムリーシュ」は、個人名を記録しそびれたペルシア側から見た「勇敢なる女王」という敬称が、そのまま名前として残ったものではないのかしら。マッサゲタイ側の人名は、トミュリスの息子「スパルガピセス(希)/シャハールヒーズ(波)/作中シャープア・カーヴィス)」しか残ってませんし、ペルシア人にとってもめっちゃ発音しにくかったんだろうなぁと想像します。

画像1

というわけで、「マッサゲタイの戦女王」

ただいま絶賛予約受付中ですヽ(´▽`)/


よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは文芸関連のイベント費用、取材費などに充てさせていただきます。🙇‍♀️