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新刊「親王殿下のパティシエール」ハルキ文庫

久しぶりの更新です。10月下旬から12月下旬まで帰国しておりまして。仕事やら健康診断、取材に旅行とあっというまに二ヶ月が過ぎてゆきました。

さて、滞在中の12月16日に、角川春樹事務所のハルキ文庫から、新シリーズが刊行されました。

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清朝18世紀末の北京を舞台に、第十七皇子の永璘邸宅で、欧亜ハーフの少女、マリー・趙が糕點厨師(菓子職人)の見習いとして働く、歴史時代&お仕事青春小説です。

時は乾隆帝も末期、康熙・雍正・乾隆三世の春を実現させた大清帝国最盛期。一方、西のヨーロッパではフランスで市民革命がおき、絶対王権の時代は終焉を迎えようとしていました。

庶民ではありますが、代々菓子職人として王室貴族に仕えていたマリーと父親は革命の混乱に巻き込まれてしまいます。たまたま欧州外遊に訪れていた皇子永璘の中華食を提供していた縁から、マリーは革命のフランスを脱出し、帰国する永璘について海を渡り、北京で働くことになります。

父親と同じ菓子職人(パティシエール)になりたい夢を抱くマリーは、さまざまなカルチャーショックと人種的偏見を乗り越えて、自分の場所を確立していきます。

ところで、タイトルの「親王殿下」ですが、物語当時の永璘皇子はまだ親王に封爵されておりません。ちょっとネタバレになりますが、一巻でマリーは街の占い師に「親王と縁がある」と予言されます。

菓子職人として、この時代に女性ながら自立を目指すマリーは「一夫多妻の上流階級に縁づくなんて、そんな未来は御免だ!」とばかりに恋愛結婚フラグをどんどんたたき折って我が道を邁進することを心に誓います。

ちなみに、この当時の都には七人から八人の親王がいました。永璘の兄皇子もふたりが、すでに親王に封爵されています。そして、永璘はなかなか親王に昇格する気配がありません。

作者的にこのお話の面白いところは、マリーを取り巻く人々でも、個性豊かな愛新覚羅家の面々です。

安定期の清朝では、どろどろした権力闘争も、中華ドラマにありがちな後宮内の諍いも影をひそめ、どちらかというと皇室がまるっと「ゆとりの時代」にたゆたっていたようで、それなりの事件はあるのですが、全体的に兄弟姉妹仲良しに、それぞれ好き勝手に振る舞いつつ、だらだらと時代が流れていきます。

しかし衰亡の足音はすでにヒタヒタと忍び寄っていますし、欧米の侵略の兆しも見え隠れする時代。

さて、マリーと永璘は甘いお菓子を愉しみ人生を謳歌できるでしょうか。

書店に在庫がなければ、下の予約票を書店員さんに提示していただければ、取り寄せできます。なにとぞよろしくお願い申し上げます。

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