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クライマックスがライブや演奏シーンで盛り上がる映画

映画は体験である。体験であるから人間の五感に訴えかける。なのでストーリーや映像だけではなく「音楽」も重要な要素なのは必然だ。

そして映画の中には「演奏」や「ライブ」がクライマックスに用意された、ストーリーがその「本番」に向かっていくような構造の作品が存在する。そういうのを集めてみた。
なお「単に演奏シーンのある映画」は除外したい。部分的な演奏シーンまで含めてしまうとそういう映画は無数にあるからだ。

基本的には公式の予告編動画を添えてみた。だが、けしからんことにYouTubeではクライマックスシーン「だけ」が切り取られてアップされていたりする。問題があれば取り下げようと思うが、こういうのも映画そのものへの興味喚起になったりするので、いったん紹介してみようと思う。

Twitterではこんな感じで呼びかけてみた。教えてくれたみなさんに感謝。


リンダ・リンダ・リンダ

2005年の映画。監督は『カラオケ行こ!』の山下敦弘。高校の文化祭でブルーハーツのコピーバンドをすることになった女の子たちだが、ボーカルがいなくなり、そこに韓国からの留学生を成り行きでボーカルに…という話。例えばここからメジャーデビューするようなドリームのある話ではなく、あくまで高校のイベントの中でのリアリズムにとどめているのが良かった。ぺ・ドゥナ、香椎由宇、前田亜季らが出演。徐々に開放されていくようなペ・ドゥナの歌声と映画そのもののボルテージがシンクロしているようで良い。


スウィングガールズ

2004年の映画。監督は矢口史靖。「東北の田舎の女子高生たちがビッグバンドジャズをやる」という、一言でいえばそういう映画。キャッチコピーは「ジャズやるべ!」で、この映画はこれだけで言い表せていると言えなくもない。東北弁訛り(山形弁)の生徒たちの垢抜けないやり取りが楽しい。主演に上野樹里、バンドメンバーに貫地谷しほり、本仮屋ユイカ、平岡裕太など。周りを固める大人たちに竹中直人、白石美帆、小日向文世、渡辺えり、谷啓、大倉孝二、西田尚美、高橋一生(!)、佐藤二朗など。全編楽しさに溢れた映画だが、スタンダードジャズを演奏するシーンでは音楽の力を感じられる。日本の「青春音楽映画」としては象徴的な作品で、ビッグバンドジャズがちょっとしたブームになったのもわかる。


スクール・オブ・ロック

2003年の映画。監督はリチャード・リンクレイター。主演はジャック・ブラック。まだ観ていない人がいたら絶対観てほしい映画。金に困ったギタリストのジャック・ブラックが、なりすましで厳格な名門私立学校の臨時教師として学校に潜り込み、授業と称して子どもたちにロックを教え、最終的に子どもたちと組んだバンド「スクール・オブ・ロック」でバンドバトルに出場してライブでキメる、という映画。子どもたちの音楽的才能を引っ張り出す過程が楽しい。特にギターのザックとコーラスのトミカ(圧倒的歌唱力)が素晴らしい。二人とも現在は音楽方面で活動しているらしい。おすすめ。観て。


フラガール

2006年の映画。この頃の映画が多いね。監督は『悪人』や『怒り』の李相日。福島県にある「常磐ハワイアンセンター(現在はスパリゾートハワイアンズ)」が炭坑の町の町おこし事業として生まれた実話が元になっており、登場人物も実在の人をモデルにしている。松雪泰子がダンス講師役、リードダンサー役に蒼井優、他に徳永えり、山崎静代、豊川悦司、寺島進、岸辺一徳など。これもかなりオススメの映画。序盤は「やっとの暮らしを続ける炭坑の町に南国の楽園ハワイ」という世界観のギャップが地元の人に受け入れられない様が見ていてしんどい。だが、トロピカルなハワイアンダンスも修練のいる立派な仕事であって頭までトロピカルなわけではない、ということが地元の人々に受け入れられてから物語が一気にドライブする。このギャップを乗り越えた上での結実とも言える最後のステージは「フラダンスで泣けるとは思わなかった」という感情の新境地を得られること請け合いです。


4分間のピアニスト

2006年のドイツ映画。また2006年ですが。そんなにメジャーではないけど、個人的に好きな作品。むっちゃくちゃに才能があるけど才気走り過ぎて道を踏み外しまくり、刑務所に入ったりしてる21歳のジェニーと、80歳の老ピアノ教師の女性を中心に描かれる映画。天才って大変だ!でも天才ってすごい!でも大変だ!という印象。演奏は野性的でカッコいいです。ルール全部破ってるけど。


北京ヴァイオリン

2002年の中国映画。『さらばわが愛 覇王別姫』の陳凱歌監督作品。貧乏だがバイオリンの才能だけはある男の子が首都・北京にやってきて世界的に有名なバイオリニストに…という『ピアノの森』的な作品を期待してたらちょっと違った。もっと家族の交流に軸足のある話でした。でも当時サントラは買いました。


セッション

2014年のアメリカ映画。『セッション』は日本語訳タイトルで、原題は『Whiplash』で、作中にも登場する練習曲の名前から(意味は「鞭打ち症」)。監督は『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル。以下の映像だけでは伝わらないかもだが、J・K・シモンズ演じる演奏指導者フレッチャーのパワハラがすごい。椅子が飛んできたり、なかなか怖いです。パワハラといえば映画史的には『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹の罵倒が有名ですが、フレッチャーのそれは、時代に合った洗練された隙の無いパワハラと言える。椅子が飛んでくるのが苦手な人にはオススメできない映画ですが、そんな極限の精神状態における「演奏」による斬り合いが堪能できる、あまり他に類のない作品かもしれません。


ブラス!

1996年のイギリス・アメリカ映画。閉鎖騒動のあるヨークシャーの炭坑町を舞台にした映画。『フラガール』に続きまた炭坑です。炭坑って何か象徴的なんでしょうか。生きる希望をブラスバンドに求める人々が、街と自らの誇りをかけて全英大会に出場し、決勝大会を目指します。ユアン・マクレガーも出てますね。『フラガール』と似ているのは、一人の女性がやってきて状況を動かす、ということ。個人的にこういう映画を「マレビト映画」と呼んでいますが、この構造はけっこうワクワクするものが多いです。まあ、この作品はイギリスのどこまでも曇った空のごとくに、スカッとするというよりはもっとしみじみした味わいなのですが。てか、詳細忘れているな。もう一度観たいですね。


シングストリート

2015年の映画。「不況に喘ぐ85年のアイルランド、ダブリン。14歳の少年コナーは父親の失業、転校、両親の別居、いじめ、まさに人生のどん底」という設定からはもう生きていくのも嫌になるような状況に思えるのですが、映画を観た感想としてはコナーくんはけっこう強くて、好きな女の子にはちゃんとアタックするし、いじめてくる奴との関係も克服するしで、そんなに悲壮感なかったですね。その小気味よさがいいんですかね。人気のある作品です。


ぼっち・ざ・ろっく!

アニメだし映画じゃないんですが、演奏シーンが見どころになる作品ということでピックアップ。原作は4コマ漫画。登場人物がみなアジカン(アジアン・カンフー・ジェネレーション)のメンバーと同じ苗字ということで、まあそういうことです。主人公の「ぼっち」ちゃんは本名「後藤ひとり」で、後藤正文の通称「ごっち」にきっちり寄せていて素敵(?)ですね。コミュ障すぎるぼっちちゃんの挙動に最初はイラっとする部分もありますが、ギターを持つと人が変わるという『こち亀』の本田巡査のような豹変ギャップにスカッとさせられます。個人的には廣井きくりのアルコール依存が心配です。


音楽

これ、以前たまたまNetflixに来ていた時期があって、幸運にも観ることができました。めっちゃ検索泣かせのタイトルですけど、『音楽』という映画です。2019年。スキンヘッドの主人公の声優には元ゆらゆら帝国のボーカル、坂本慎太郎。あとシークレットゲストで岡村靖幸が声の出演をしています。Wikipediaにも「秘密」となっていますが、まあ言っちゃうとラストのライブのシャウトのあるボーカルが岡村ですね。見た目よりうんと手間のかかっている作画で、実写で撮影したものをトレースしてアニメ化するという手法で作られています。またNetflix来ないかな。お待ちしてます。


書き進めていたら口調が「である調」から「ですます調」になっていることに気づいた。まあいいや。

その他、以下の作品も候補として出てました。私が観ていないものもあるので詳しく言及はしませんが(でも『天使に〜』と『ボヘミアン〜』は観てる)、一部動画を含む名前だけの紹介とさせてください。

天使にラブソングを


陽の当たる教室


ドラムライン


青のオーケストラ

ストリート・オブ・ファイヤー

コーダあいのうた

RRR

ボヘミアン・ラプソディ

マエストロ!

ソラニン

ブルージャイアント


最初の話に戻るけど、やっぱり音楽シーンのある映画って良いです。映画を2時間ほどの体験とした時に、また別の要素が入ってくる感じで。まさに五感。それが高じるとミュージカル映画の良さの話になっていくんでしょうが。なお、今回は『レ・ミゼラブル』とか『サウンド・オブ・ミュージック』とか『ウエストサイド物語』などのミュージカル映画や、『アマデウス』とか『シャイン』とか『ロケットマン』などは趣旨と違うかなと思って入れていません。あとインド映画もね。

長くなりましたがこの辺で。
天気はイマイチですが、良い日曜日を。

やぶさかではありません!