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月の下で香るモクセイ

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#小説

月の下で香るモクセイ 第3話

月の下で香るモクセイ 第3話

 十八時。夕暮れの街を歩いてアパートへと帰る。
 共用部分の廊下に入り、私たちの部屋のドアが開け放たれているのが見えた。中からは鈍い物音がする。
 嫌な予感がし、私は走って部屋に飛び込む。
「姉ちゃん……」
 ダイニングに倒れこんでいる日向。そして彼を痛めつける大柄の男……私の父親。
 どうやら夏美と双子は避難済みらしい。ということは、日向が父親の暴力を受け止めてくれているのだ。
 私の存在に気付

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月の下で香るモクセイ 第2話

月の下で香るモクセイ 第2話

「大型免許を取ってみないか?」
 喜多川課長にそう持ち掛けられたのは、ある日の昼休み。営業所での休憩室でコッペパンをかじっていると、愛妻弁当を持った課長が隣に座ってきた。よく「うちのカミさんが作ってくれてるんだぞ」と自慢している。
「大型免許ですか」
 最近考えていたことなので、タイムリーだなと思いつつも、私は食べかけのコッペパンを置き、課長の方を向く。
「ああ。阪東は優秀だからな。取得したら、手

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月の下で香るモクセイ 第1話【創作大賞2024参加作品】

月の下で香るモクセイ 第1話【創作大賞2024参加作品】

あらすじ
阪東花澄は、両親の虐待から逃れるため、四人の幼い弟や妹を抱えて懸命に働く19歳。だが両親は花澄から金銭搾取をし、弟や妹に暴力をふるい続ける。花澄は、母親の浮気相手と肉体関係まで持ってしまった。ある日、何とか隠しておいた大金までも父親に奪われ、働く気力をなくした花澄は、弟や妹と心中しようとする。だが花澄だけは恐怖で死ねず、ただの殺人犯となってしまった。彼女が逃げ出した先の恵比寿で、宮崎万里

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