1176と数年かけてようやく和解できた話

どうも、しのです。
最近寒さのせいで体調を崩すことが多くなりました。それでも夏の暑さに比べたらマシです。

さて、いきなり意味不明なタイトルですが、今回は僕と1176についてお話していきたいと思います。
どういうこと? と困惑される方もいらっしゃるかと思いますので、順を追ってお話できればと思います。
多分本職のレコーディングエンジニアさんとかからすれば、いろいろとツッコミどころの多い内容になるかと思いますが、そういう考え方のヤツもいるんだな、くらいに温かい目で見てもらえると嬉しいです。


そもそも1176って何だっけ

いや、今更すぎる話なんですが、1176ってどういうものかっていうのを一度整理しておこうと思います。
1176とはUreiが開発した、世界で初めて流通したオールトランジスタ・コンプレッサーです。
長い歴史があるので、その中で何度も改良が加えられており、様々なリビジョンが存在するのですが、今回は詳しいことは割愛(というか僕もよくは知らん)。

1176の最大の特徴といえば、超ファストアタック。
その値なんと0.02~0.8msという驚異的な速さです。
参考までに他の定番コンプと比較いたしますと、

  • Teletronix LA-2A:10ms

  • Manley Variable Mu:25~70ms

  • SSL 4000G Stereo Bus Compressor:0.1~30ms

  • Neve 33609:3~6ms(現行品。リビジョンによって違いあり)

こうやって見てみると、1176だけアタックタイムの短さの桁が違いますね。
この超ファストアタックタイムを利用した、他のコンプにはない超パツパツサウンドを作ることができます。

僕が1176を使わなくなったわけ

きっかけなんてものはなく、本当に突然でした。

なんか使いづらい。なんか求めてる音にならない。なんかハマらない。
最初はほんとそんな些細な違和感からでした。
で、いろいろ他のコンプに差し替えてみるうちに、

  • 1176の超ファストアタックタイムが僕のスタイルに合わない

  • リダクションの際にザリっとした質感の歪みが出る

という2点が気になり始め、ぱったり1176を使うのをやめてしまいました。

僕は1176は大体9割方スネアに使っていたのですが、元々UAD-2プラグインで1176を使い始める前から、スネアのコンプのアタックタイムはおおよそ10~30msくらいで使うことが多く、そこに当てはめると1176は僕には全く合わないコンプだったのです。
また、1176特有のザリっと乾いた質感の歪みが出てしまうのが気になり、それが僕の求める音ではありませんでした。

さて、そんなことに気づいてしまった僕は以降1176の代わりにEmpirical Labs Distressorを多用することになります。
これはなんとアタックタイム最遅で30ms。僕のスタイルにぴったりです。
用途は様々ですが、主にスネアとエレキベースに使うことがほとんど。
元々ボーカルには1176を使わない僕でしたが、このDistressorに関してはボーカルでもOptoモード(Ratio 10:1、Attack 10、Release 0)で使用しています。

試行錯誤、そして和解

和解ってなんやねん、大袈裟だなって思うかもしれませんが。
つい最近になって結局僕は1176を他の用途で使用することになります。

超ファストアタックタイムでかつ音が歪むのであれば、それを逆手に取ってしまえばいいのでは?

そう思った僕は、前はアタックタイムを長めで使っていたのを、今度は思い切って最速で使うようになりました。
使う場面としては、

  • キックとスネアからセンドしたバストラックに挿して、キックとスネアに明るめのリリースを付加する

  • ドラムのモノラルアンビエンスに挿して、スネアに奥行きのあるリリースを作ってやる

などが主なところです。
ようは、アタック最速でぶっ潰してやれば音が勝手に奥に引っ込むので、それを使って奥行きを出してやればいいわけです。
巷ではスネアやボーカル等結構前に出すパートに使用することが多いようですが、僕は真逆の使い方をすることにしました。
もちろん、これまで1176の代替として使っていたDistressorはそのまま使い続けています。

ちなみに最近は1176のレシオを12:1で使用することが多いです。4:1や8:1よりもより歪みが強く奥に引っ込む感じがするので。リリースタイムも速めですが、これについてはその曲のテンポ等によって変動します。

クソデカ独り言

そもそもアタックタイムが0.02~0.8msとかって時点で、1176って全然普通のコンプじゃないですよね。なのに何でこれこそが定番で業界標準ですみたいな顔してんのよ。
一般的なコンプレッサープラグインを見てみれば分かると思うんですが、標準的なDAW付属のコンプレッサーとかだと、大体アタックタイムは0.1~400msくらいに設定できることがほとんどだと思います。それを考えると1176の異質さたることや。

僕はキックのローを締めるのにEQやマルチバンドコンプではなく、シングルバンドのコンプを使っているのですが、低音は高音に比べて波長が長く、発音されるタイミングが遅いということを踏まえて、アタックタイムの設定次第でローが発音されるタイミングのところに引っかけて、ローをタイトにしてやることができるわけです。
単純計算、例えば80Hzあたりから下を締めるには1000÷80で12.5msにしてやるとか(実際はそんな単純計算ではうまく行かないんだけども)。
で、それを当てはめてやると、例えばスネアの基音が200Hzにあったとしたら、1000÷200で5ms。対して1176は最遅でも0.8ms。どう考えてもスネアの芯の部分が完全に引っ込みます。逆算すれば0.8msで締められる帯域は1.25kHzあたりってことになりますね(まぁ、それを利用してパッツパツにしてやるという意図もあるんでしょうけど)。

え、てことはアタック最速の0.02msにしたら50kHzあたりから反応するってこと? 恐ろしくない?

あとがき

いろいろとつらつらと書いてきましたが、あくまで僕が1176苦手だよっていう話ですので、1176が好きな方はどんどん使えば良いと思うし、それでカッコいい音が作れるならそれで全然いいと思います。僕が1176の良さを分かってやれてないだけかもしれないし。
こういう考え方の人がいて、こういう考え方の野郎が作ったサウンドがああいう感じになるよっていうことを知ってもらえればと思います。











ボーカルレコーディングにはやっぱりOptoコンプがいいな……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?