『素直で前向きな子』(ホラー)【ショートストーリーのような詩のような何か】
小さい頃にはこう言われて育った。
あなたは素直で前向きなとてもいい子ね。と
そんな僕はある日一目惚れをした。
異性を意識し始める、小学校6年生の時に出会った女の子。
友達が少ない僕に話しかけてくれた子だ。
僕はその子に告白した。
結果は玉砕だった。振られた理由はこうだった。
私、足が速い人が好きなの。
僕は不思議と悔しくなかった。そうか足が速くなればいいのか。
その日から毎日ラントレを始めて、運動会のリレーの選手になった。
中学では陸上部に入り、勉強そっちのけでトレーニングをした。
その甲斐あって、三年生ではスタメンになれた。
スタメンになれたその日に彼女にまた告白をした。
結果は、だめだった。彼女が言うにはこうだった。
私は勉強もできる人が好きなの。
そうか、勉強もできるようになればいいのか。
それからは死ぬ気で勉強をした。
塾にも通った。部活と勉強どちらも死ぬ気だった。
高校に上がる頃には陸上部のエースで、学校の成績は一番だった。
一番になれたその日、彼女に告白した。
彼女の答えはこうだった。
私はお金持ちじゃなきゃ嫌なの。
その日からお金の勉強を始めた。
東大に入って経営を学び、3年生の頃には起業をした。
30歳には会社を売却して、億万長者になっていた。
そして今日。待ちに待った同窓会。君に告白をする。
申し訳なさそうな顔をした君は、左手につけた薬指を見せてきた。
そうか、もう旦那がいるのか。
旦那がいなければいいのか。
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