『夜の街で』2話【ー思いつき長編ー】
【始める前に】
この長編は以下のリンクの続きになりますので、先にこちらを読んでいただけますと幸いです。
【本編】
女の子は答えた。
「夢を見てた。」
「どんな夢?」
「悲しい夢。」
「どんな風に悲しかったの?」
まるで叱られている子供みたいに女の子は黙ってしまった。
男はグラスのお酒を少し飲むと、もし話したくなかったら無理して話さなくて良いよと言った。
男もそんなに興味があるわけではない。
ただ、聞いて欲しいことを聞かせてくれれば良いのだ。
それに対応した質問を機会的に返すだけ、それが男の仕事だった。
も場を盛り上げて客を取るタイプのホストもいるのだが、男は静かに話を聞くことで、客を喜ばすタイプだった。
売り上げは高いとはいえなかったが一定数の需要はあるようで、上から怒られることもなく、周りからもライバル視されることなく、淡々と仕事をこなしていた。
「信頼していた人に裏切られたみたいに悲しかった。」
「それは彼氏ってこと?」
「わからない。」
「わからない?」
「なんか、裏切られて悲しいって言う気持ちだけ覚えていて、何があったかわからないの。」
「そうなんだ。」
「じゃあ、俺が立候補しよ、みたいなこと言わないの? ホストでしょ?」
「言って欲しいの?」
「みんなそう言うこと言って女の子を落とそうとしているイメージ。」
「最初はそういうやり方で売れようと頑張ろうとしていたけど、もうそんな頑張らなくなっちゃったかな。」
「どうして?」
「まったく向いてなかったからだよ。ホストになったんだからそう言うことを言えるようになろうと思って、一番最初にヘルプで入った客にそれをやったんだ。そうしたらその客がとんでもなくブサイクでね。ジャバ・ザ・ハットってわかるかな。あんな感じだったんだ。」
「スターウォーズに出てくる大きなナメクジみたいな宇宙人でしょ? そんな人見たことないけど。」
「ホストクラブにはそんな客も来るんだよ。とにかく男にチヤホヤされたがってね。先輩だって男だからそう言う客は嫌がるから新人がやらされるんだ。」
「なるほどね、それでジャバ・ザ・ハットにはなんて言って口説こうとしたの?」
(続く)
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