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詩|短篇小説

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ひさしぶりに詩を書きたくなりました。昔はよく詩で表現していたのに、しばらく散文ばかりで。これからはまた、自然にことばを紡いでいけたらと思います。散文詩的なごく短い読み切り小説も、… もっと読む
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#詩のようなもの

弱さを隠さなくてもいい

今朝、声をあげて泣いた 人から見たら、なぜそんなことが? という、小さなことができなくて それは 私にはとてもとても苦手なことで できない自分が苦しくて そんな自分がイヤになって 子どものように声をあげて泣いた 私の泣き声に合わせるように 茶白の子が声を張り上げて鳴いていた あとで夫に聞いたところ 泣く私のほうを見て鳴いていたらしい 夫はそばにきて 「泣いていいよ」といいながら 落ち着くまで一緒にいてれた 実はサビの子は、私が泣き始める直前まで 胸の上で慰めてくれていた

闇の中でこそ

自分の中の暗黒の穴に 吸い込まれそうなとき 同じように苦しんている人の つらさを思う 人を助けたいなんて 考えていたけれど 自分ひとり助けられずにいる わたしに 何ができるというのだろう だから 神に祈り、乞う ホサナ どうかお救いください どうかそばにいてください そしてわたしをお使いください わたしの手を 灯台は闇の中でこそ 小さなまたたきで人を導く 暗黒の穴のほとりで わたしは途方に暮れながら それでも小さな光でありたいのだ ◇見出しの写真は、みんなのフォトギ

ゆるめる

こころもからだも ゆるめるときがあっていい ちからを抜いて ただぼんやりと いま生きている そのことだけを受けとめる ぎゅっと握り締めた 心配事があるとしても いまだけはその手をゆるめて ほんのちょっとの時間でいいから 荷物を降ろして横に置こう だいじょうぶ 休んだっていいんです むしろ ふたたび立ち上がり 艱難辛苦に向き合うために 自分をゆるめる そのひとときが必要です ◇見出しのイラストは、みんなのフォトギャラリーから chona_illustさんの作品を使わせてい

プラチナ

たとえばいつかこの世を卒業したとき たましいだけの世界にいくとしよう 悲しみも苦しみもない 愛だけの世界 やすらぎとよろこびに満たされて 時間をも超越できる 永遠の世界 たましいだけで 愛だけで 存在できたら 満たされて やすらいで 何もかもすべて良し そんな気分になれるだろう 想像してみた そのときを そうしたら 不思議なことに この世のすべてが愛おしく 尊いものに思えてくる まぶしい光に目を細め 頬に受ける陽射しのあたたかさ 耳をすませば 木々と風、小鳥が同じリズム

愛について

愛がほしい、と望むときは 愛するものを数えてみる 青い空を愛していないか 清らかな泉を愛していないか みずみずしい木々の緑を 花の香りを 小鳥たちの歌を愛していないか 星の光を 夜のしじまを 遠い昔に出逢ったあの人を 草や葉がかすかに触れ合う音を やわらかな猫の毛並みとぬくもりを わたしは愛する、愛している たくさんの愛しいものへ 愛はわたしの中からあふれてくる 愛がほしいなんて、思うことないんだ 愛はわたしの内にあるんだから こんなにもいきいきと だけどそれでも 愛がほ

第三アドヴェント ~助ける手

人を助けるのはむずかしい 助ける、ということと 甘えられることとはちがうから さしのべていた手を はなすタイミングをまちがうと 大きな傷を負うことだって あるでしょう あるいは 傷を負う覚悟もなしに 手をのばすなんて かるはずみなのかもしれません そもそも 人が人を助けようだなんて 傲慢といえるのだろうけれど 助けられるのに助けない そんな選択ができるほど わたしは器用ではないから さしのべられる手があるなら そうしたいと考える だけど とうてい自分には助けられない 無

いま、ここ、その先

10月の朝の光は 羽があるみたいに軽い ひんやりと澄んだ空気に 透明な羽がいくつも いくつも跳ねている こんな朝 昔なら 「ここじゃないよ」 そのささやきに誘われて 遠い空の下を目指した 10月の朝の光には羽がある そして、いま、わたしはここに 昔のジブンにありがとう ここへ 連れてきてくれてありがとう そして、ここから その先へ どんなミライへ続いていくのか 道はそなえられているはずだから 勇気をふるって 祈りを抱いて 感謝を捧げて 進んでいこう もしも道を見失った