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詩|短篇小説

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ひさしぶりに詩を書きたくなりました。昔はよく詩で表現していたのに、しばらく散文ばかりで。これからはまた、自然にことばを紡いでいけたらと思います。散文詩的なごく短い読み切り小説も、… もっと読む
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2019年12月の記事一覧

ほんの一滴の、それは勇気

これ以上 ひとを 傷つけたくないし これ以上 自分も 傷つきたくないから 目をそむけて 生きているような気がする ひとりで ここがどこかもわからないし 足を踏み出す勇気もなくて 泣きたくても 泣けず いったい どこへ 進めばいいの つまらない女かもしれないけど 自分をつくるのは もうやめたい ◇高校生の頃に書いた詩です。35年ほど前は、こんなふうに悩んで、もがいていました。足を踏み出す勇気はないと言いながら、「自分をつくるのはもうやめたい」と書くのだって、一滴の勇気だ

臆病な自分がとけてゆく

窓をいっぱいに開いて 部屋じゅうに朝日を入れて やさしいクリーム色の光に包まれていると 昨日までの自分が 洗われるような気がする 臆病だった自分が とけてゆくような気がする 後には こんなにもあなたを好きだった私が 残っているのね ◇高校生の頃に書いた詩です。35年ほど前、まだクリスチャンではありませんでした。「あなた」を神さまのことだと思えば、今の私にぴったりきます。当時は恋人を想って書いたのですが(笑)。不安や恐れといった余計な感情をとりはらっていくと、最後にはシンプル

あなたが生きていてくれてよかった

わたしは 雲になりたい こどものころ そう考えていた だって 太陽はきまったところを走るけど 雲は自由に流れていける 大きな空を どこまでも だから 雲になりたかった 現実はうらがえし 自由なんてなかったから わたしは雲になりたかった かなうなら あのころの自分を 抱きしめてあげたい だいじょうぶだよ できるよ つらいことがいっぱいあっても あなたは 自由に なれるから 雲のように自由に 雲よりも 自由に あなたの翼で はばたける かなうなら あのころの自分に 伝えた

ひとりくらい、いてもいい

大切なひとたちがたくさんいます みんな やさしいひとたちです 私はそのひとたちにとって やさしいひとでいられるでしょうか そのひとたちにとって 私はどんな存在でしょうか いくら考えたって 私にはわかりっこないけれど でも 何か こんな私でも 役に立てるといい そのひとが沈んだら 一緒に沈み そのひとが輝いたら 遠くからみつめ そんな人間がひとりくらい いてもいいかもしれない ◇35年ほど前、高校生の頃に書いた詩です。その後「一緒に沈んだらだめじゃん」と思ったこともあったけ

ひとかけらでいいから

パンドラの箱のように 一度開けたら もう何も もとにはもどらない けれどパンドラの箱に 希望が残っていたように 私にも 残っていないかしら ひとかけらでいいから ◇高校生の頃に書いた詩です。35年ほど前、このころはまだクリスチャンではありませんでした。アドベントのいま、この詩を選んだのは、希望の御子の降誕を祝うクリスマスに、イメージが通じるなあと思ったから。当時(聖書の時代)、格差社会でつらい暮らしをしていた人びとにとって、暗い夜空に輝いたベツレヘムの星は、それ自体がひとか