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シニア集客はコミュニティマーケ一択(事例付き)

私は普段、大手ITで新規事業開発をしています。
業務をする中でストックしていきたい知識をこのようにブログ化していく他、アイドル関係について思ったことを記事にしています。

今回は国内シニア層で流行った(ている)Webサービスがどのように流行ったのかケーススタディしながら、シニア集客の勝ち筋を探っていきます。

今回の記事はアイドル関係ないので、ご所望の方は下記を確認ください。

結論を先に記載すると、
・シニア集客は、現状コミュニティマーケでしか成功していない
・そのため、ターゲットを絞りすぎると破綻する
という内容です。

ケース①:ポケモンGO(パソコン教室)

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《概要:ポケモンGO》
狙ったニーズ:とにかく暇。健康志向。
初期ユーザー:パソコン教室通学シニア
再集客の手法:コミュニティマーケ

幅広い年代で受け入れられているポケモンGOですが、シニアユーザーが多いことでも知られていますよね。

実際のユーザーの割合はどの程度かというと、バリューズのツールを使ってねとらぼさんがリサーチした数値がこちらです。ユーザー全体に占める50代以上割合はそうでもないですが、ヘビーユーザーに占める率は40%弱です。

FireShot Capture 1673 - ポケモンGO & ドラクエウォーク、まだ続けてるのはどんな人? リリース当初と現役ユーザーの特徴を分析してみた(2_3) - ねとらぼ調_ - nlab.itmedia.co.jp

出所:ねとらぼ調査隊記事

広告のサポートをした会社によると、狙ったニーズは明確に「健康維持」とのことでした。

「ポケモン GO」がスマホの位置情報を利用して外で歩き回って遊ぶゲームであるという特性に着目し、健康に対する意識・関心が高いシニア層へ「遊びながら運動不足の解消にもなる」というメリットを訴求することで、利用促進が図れるのではと考えました。

この仮説をもとに、既に「ポケモン GO」を利用していたハルトモ(=シニア女性向け雑誌「ハルメク」の読者モニター)と座談会を設定。座談会では、「ポケモン GO」の楽しみ方や利用理由、良いところなど、ラダリング法を用いたインタビューを行って「ポケモンGO」に対する価値構造分析を行いました。

その結果、「シニア層の健康ツール」という商品訴求ポイントを発見できたので、これを記事広告のクリエイティブに反映しました。
出所:ハルメクHD

一方で実際のユーザーの動きを見ると、「膨大に余る暇時間」「コミュニケーションへの飢え」を埋めているように見えます。
今は既にスポンサー契約が解消されていますが、平日の昼間にマクドナルドへ行くと、ポケモンGOしているシニア達が多かったですよね。

定年退職後のシニアは予定なし・会話無しの日々なので、コミュニケーションに飢えています。そこへ上手くハマったのがポケモンGOのグループ・フレンド機能だったのでしょう。

ということで、芯を食ったニーズをとらえたポケモンGOでしたが、初期ユーザーはどのように集めたのでしょうか。

色々と調べていくと、パソコン教室が初期集客のキーになっていたと推測されます。

かつてのパソコン教室というとビジネスパーソンがオフィス系ソフトの使い方を学ぶ場でしたが、ソフトのUX改善やフリー教材の充実によって生徒数を維持できなくなったパソコン教室は姿を変え、高齢者のサロンと化しています

当然サロンを維持するためにはコンテンツの継続的な提供が必須となるので
・Excelで作る年賀状
・写真整理講座
・一眼レフデジカメで写真撮影
のような、パソコン教室?というような講座も多いです。

そのなかで「身体を動かせる×程よく難しい×コミュニティ要素あり」は講座の題材に打ってつけでした。

各町にパソコン教室は1つはあるため、超マイナーなチャネルと思われるかもしれませんが、初期ユーザーの獲得はそれで十分です。

初期ユーザーの獲得ができた後の広がり方も、既存のコミュニティ伝いです。パソコン教室もコミュニティの1つですが、そのほかにも習い事・ご近所・老人会etc・・・様々なコミュニティに属すのがシニアです。

パソコン教室で彼らなりの「最新テク」を学んだ教えたがりシニアが、まさに上のTweetにような形で小コミュニティ単位で広まっていったと推察されます。

《まとめ》
・コミュニケーションの飢えを健康管理名目で解消するニーズにフィット
・教えたがりが集うPC教室を起点にミニインフルエンサが養成された
・教えたがりをハブに、コミュニティ毎にじわじわと広がっていった

ケース②:みてね(子ども世代経由)

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《概要:みてね》
狙ったニーズ:我が子の成長を親に見せてあげたいパパママ
初期ユーザー:テック業界のパパママフックにその父母
再集客の手法:N/A

「みてね」がスマホで撮った子どもの写真や動画を、親(祖父母)へかんたんに共有・整理できるWebサービスです。

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おじいちゃん・おばあちゃんへの共有が前提に作られていて、子世代のUIは今風のUIですが、親世代のUIはシンプルでブラウザで閲覧できるような仕組みとなっています。

つまり、子世代を経由してシニアを集客するサービスです。

2017年3月期の決算説明資料によれば、どこかで爆発的にユーザーが増えたというよりは、地道にユーザーを積み重ねていったようですね。(ちなみに現在は海外ユーザーの数も入れて800万UUのようです。)

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「みてね」の事業責任者はmixi創設者の笠原氏です。
したがって、超初期の集客はテック業界のパパママたちで一定量は取れたのだろうと推察されます。
ただ、それだけでは十分でなかったようで、立上げ当時の笠原氏のインタビューを見ていくと

笠原さんは・・・ユーザーからの問い合わせへメールに返信するユーザーサポートも自ら行い、マーケティングの一環として、サービスを紹介するビラを公園で配った。

などなど、地道な努力も重ねられたそうです。

ただ、ユーザー数のグラフの節目にアワードの受賞が挟まれており、質の高いプロダクトを作ることでパブリシティを増やしていくという王道を歩んできたように見えます。

Webサービスの王道のような感じですが、「みてね」の特性が事業成長を難しくしているという側面もあります。

「みてね」は家族に閉じたSNSであることで、通常のSNSであれば「みんな使っているから私も使う」というような形でユーザーが雪だるま式に増えていくネットワーク効果が使えず、持続的にメディア側が集客する必要があります。

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実際に笠原氏の発言を見てみると

「みてね」はママ友間での繋がりで広まってるのが実感としてありますけど、mixiと比べると、弱い面があります。女子高生のバイラルとはまた別の伸び方があるようです。ママ友間は皆忙しくて、暇だからアプリを入れますみたいな感じではないという気はしてます。

という言及もあり、集客には力技が必要なように見受けられます。
実際に、2017年以降はTVCMも始めるなど力技でユーザーを拡大しています。

《まとめ》
・子世代を経由してシニアユーザーを獲得している
・影響力のある事業開発者がいることで、テック業界から初期集客
・プロダクトを磨くことでアワードを取り、パブリシティを増やした

ケース③:趣味人倶楽部(シニアサークル)

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《概要:趣味人倶楽部》
狙ったニーズ:地域の趣味仲間を見つけたい
初期ユーザー:趣味仲間を検索したユーザー
再集客の手法:コミュニティマーケ

趣味人倶楽部はDeNAが立上げて売却したシニア向けSNSです(現在は売却先のオースタンス社が運営)。日記や写真の投稿を互いに見ることができるmixi的な機能のほか、mixiで言うコミュニティが主催するリアルイベントを検索して参加申し込みできるプラットフォームとしての側面もあります。

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多くの会社がシニア向けSNSに挑戦し、失敗してきました。
直近ではSEO集客を軸にしていたセガ社の運営する「シュミカツ!」がサービス終了となりましたし、過去リクルートが参入を検討して断念したという話を聞いたこともあります。

そのなかでDeNAはデジタルとリアルの組み合わせを取ることで、SNSが成立する程度の母集団の形成に成功したと言えましょう。

DeNAが目を付けたのは、「国分寺 写真クラブ」などの地域×趣味名のインターネット検索でした。

当時、地域のクラブを探すには行政の発行している紙媒体を見るか、町のリアル掲示板を見てチラシの問合せ先へ電話をかけるかしかありませんでした。そんな中にあっても、定年後の新たな趣味を求めたシニアが少なからず自身の地域に趣味が無いか調べていたと言われています。

個々の検索量は大変少量ですが、こうした超テールワードに対し丁寧にリスティング広告を張っていくことで、超高効率で趣味を探している個人シニアの集客に成功しました。

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ちなみに、初期はシニア顧客の多いクラブツ―リズムとの提携で、「団体旅行➡グループ化➡インターネット上で旅行以降も交流」というサイクルを作ろうと試みたそうですが、失敗したとのことです。
非デジタルの空間からデジタルに押し上げる集客は負荷が高く(CVRが低く)、加えて集客できる母数もそこまで大きくないことが原因です。

こうして母集団を形成した後の再集客は、コミュニティマーケに依ります。

趣味人倶楽部最大の特徴は「イベント」です。
趣味人倶楽部上で匿名アカウント同士で作成されたコミュニティが運営主体となってイベントを企画・収集します。

このイベントへの参加の際に
「折角だから登録していない○○さんも誘ってみよう」(登録者)
「イベントに行ってみたいのだけど一緒に行かないか?」(未登録者)
のような会話が生まれることは想像に難くないですよね。

つまり、デジタル上で作成したコミュニティを起点にリアルのコミュニティでつながっているシニア達を集めていく仕組みが出来上がっていたわけです。

一回リアルを挟むため、デジタル上のみで拡大するSNSとはスピードに差が出ますが、着実にユーザーを増やしていく仕組みがあったことが勝因です。

《まとめ》
・「暇=趣味探し」のニーズにアプローチ
・趣味探しシニアをロングテールKWで超安価に集めることができた
・デジタル上のコミュニティへリアルなコミュニティを取り込んでいった

まとめ(シニアで大括りするな!はするな!)

シニア向けの新規事業で論点になるのが、「シニアでもどのようなシニアにアプローチしていくのか?」です。

シニアビジネスに関するアドバイザリーを行う会社では、とかく「シニアで大ぐくりするな!」という主張があるようです。

ここまでで紹介してきた事例を見ていくと、「大ぐくりにしない」は正しくない示唆だと思います。

何故ならば、PC教室・家族・既存の地域のコミュニティの規模の差はあれ、何等かのコミュニティを介さない限り大規模にシニア集客はしえないからです。シニア集客はコミュニティマーケ一択と言ってもいいでしょう。

そしてコミュニティマーケを取る限り、精密なターゲティングは不可能です。再集客を自社のコントロール外に置くためです。

他の世代にサービスを考えるのと同様に、表面的なニーズではない根源的な「コミュニケーション欲」「社会や仲間からの承認欲求」までニーズを掘り下げて考え、シニアの個別性をできるだけ排したサービス設計が必要です。

つまり、シニアを大ぐくりにできるサービス設計こそ大事です。

以上です。
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