伊豆天城山でハイキング-38
お店の入り口に置かれた長椅子に座り、開店を待ちながら壁に貼られているメニューを見てみる。
へぇ~、海鮮丼のほかにいくら丼もあるのか。
たぁはいくらが大好きだ。
「暖簾をかけさせてください」
お店から出てきた女性が私たちの傍に立っているららに言う。
「はい」
そう返事したけどスタッフのおばさんはもう一度彼女に尋ねた。
「暖簾をかけてもいいですか」
ららは不思議顔をしてから、彼女が立っている場所の上に金具があることに気が付いた。
「あぁ、すみません」
笑って答えて移動すると冗談交じりにおばさんは続けた。
「お店を開けさせてください」
すぐに中へと通され、予約名を告げると座敷の一角へと案内された。そこはちょっと大き目な四人席。五名の私たちが二人、三人と別れて座るにはきついので私は端からちょっと外れて座ることにした。
開店を待っていたのは私たちだけではなかっただけに、席はどんどん埋まっていく。確かに人気の場所なんだな。
「相模の人は『頑張って来る』って言っていたけど、『やっぱりダメだった』と連絡が入った」
先ほどのおばちゃんスタッフはあたかも皆に聞かせるような大声量でそう言った。彼女はたぁに簡単な英語で話したり、冗談を軽く言ったり場を和ませてくれる。
写真付きのメニューを見てみるとなんともおいしそうな海鮮丼の数々。
ささにこのお店を紹介された後、ウエブサイトで調べてみたらアジのたたき丼が名物とあった。だけど・・・・・・
「天ぷらも気になるんだよね」
「それならセットがあるよ」
そう、ららが教えてくれた。
「ありがとう。なら、それにする」
ささも同じものを選び、たぁはやっぱりいくら丼を選んだ。
アジのたたき丼と天ぷら丼のセットは1850円、いくら丼は3300円。
いくら丼、たかーいね。
文句を言いたい気持ちを抑えて、貴重な家族旅行とばかりにお口はチャックしておこう。
さらにみんなでシェアしようと烏賊のコロッケと明日葉の天ぷらが頼まれた。
取り皿用の小皿、フグの模様でかわいい。
最初にやってきたのはたぁのいくら丼だ。
おー、どんぶりにたっぷりのいくら。豪華だわ。
彼はなかなかそれに手を付けようとしない。
「(みんなのが揃うまで)待つ」
「いいよ。おいしいうちに食べな」
「出来立てがおいしい」ことを食を大切にする日本人は知っている。だから「遠慮せずにいちゃって」と彼を促していると烏賊のコロッケがやってきた。
私たちにも何か食べるものがあればたぁも食べやすくなるね。
「いただきまーす」
コロッケを割ってみるとほんのり赤みがかっていたので、お肉に交じって烏賊が入っているのだと思った。割った一つを自分の小皿に乗せて、熱々をいただく。
あっ。
お肉だと思った赤い部分も烏賊の身で、ぎっしり詰まった身からほんのり甘さが伝わってきた。
「おいしい」
そして明日葉も到着した。
山菜好きの私にはうれしい一品。
油がいいせいか、臭みなどなく、明日葉本来の優しい味を楽しむことができた。
れんの天ぷら丼がきた。
おぉー、たかーくたかーく積まれて、こちらも豪華。
そしてお待ちかねのアジのたたき丼と天ぷら丼がやってきた。
わぉ、こちらも負けずと天ぷらさんが意識高めのアピールしているぅ。
見るからにおいしそうだけど、朝食にまさかのおいしいビーフンに恵まれてたっぷりな量をいただいてしまったから、ちょっと引いてる自分がいる。
まずはアジのたたきからいただきましょう。噛み応えのあるぷりぷりの身、そして口に広がる青魚のさわやかなたんぱくなお味。
おいしゅうございます。
そして明日葉たっぷりの天ぷら丼も期待を裏切らない味。
だけどたたきやてんぷらには手が伸びるのに、なかなかお米を食べ勧められない。
だって、お腹がイエロー信号を出して拒否しているんですもの。
「お米が食べられない人、食べますよ」
救世主れんが救いの声を上げる。
彼は天ぷら丼を食べているから、たたきが触ったお米を渡すのは悪いので、ミニ天ぷら丼のほとんどのお米を彼のどんぶりへと移動させてもらった。
それにしてもれんは細身なのに、本当によく食べる。
「脱いだらすごいのよ」
ささは言うけど、幸い私は服を着た彼しか見る機会はない。
彼の援助もあり、どうにかすべて間食できた。
ふぅ、ごちそうさまでした。
主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう
これまでのお話
無空真実の電子書籍です。よろしくお願いします。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?