鋸山に行って来たよ-06
お腹もいい具合に満たされたので荷物を預けるため宿へ向かおう。
一本道を進んで行くとお肉屋さんがあった。
店先には袋詰めされたコロッケや唐揚げがずらりと並んでいい感じ。私がキャベツをスライスしている間にたぁが買いに行く。昼ならご飯と味噌汁、夜ならビールと頂く。
平和な日常が勝手に想像できちゃうわ。
宿まではしばらく歩くと思ったけど思ったよりもすぐ出てきた。
今回お世話になるのはかぢや旅館。
「古い建物」と予約サイトの口コミで目立ったけど、外観は「古いながらも手入れはしていますよ」感が伝わってきて、思っていたほどではなかった。もしかしたら心構えがあったからこそそう思えたのかもしれない。
表看板の「か」の部分に白いボコボコしたものが陳列していてなんだか背骨のよう。
魚の骨の演出?
だけどよーく見てみたらそれは洗濯バサミだった。
中に入ると大きな水槽とともに手を広げたカニのはく製が目に入る。ここはタカアシガニが食べられることが売りの宿。玄関先はいかにも“昭和の旅館”というイメージ。
受付には誰もおらず、「すみませーん」と呼び掛けても誰も出てこない。受付に置いてあるベルを鳴らしてみたら一人のおばちゃんが出てきた。
「今日から二泊の予定で利用させてもらうんですけど、これから鋸山に行きたいので荷物だけ先に預かってもらえますか」
「あー、はいはい。ならお部屋出来ているんで、荷物入れてください」
「えっ?チェックインですか?」
確かチェックインは15時からのはず。
「いえ、チェックインは後でいいです。荷物は・・・・・・」
「このリュック2つです」
「なら直接持っていってもらったほうがいいわ。部屋は206号室です。靴のまま上がってください」
恐縮しながら靴のまま赤いカーペットを歩いて、二階へと続く急な階段を上っていく。部屋の前には私たちの名前が書かれたお出迎えの紙が貼ってあった。他の部屋にも同じ用紙が貼ってある。
「思っていたより混んでるんだ」
コロナ渦の日曜日、明日は平日だしもっと空いているかと思った。
玄関先に二畳ほどのスペース、その奥に十畳ほどの部屋がある。
既に布団が引いてあり、テレビの前には大きな座卓。そして縁側には小さなテーブルと椅子が設置され、奥にトイレがあった。トイレ・バスなしだと思っていただけに、夜、必ずトイレに行く私からしてみれば有難い。廊下のカーペットや部屋のちょっとした場所にシミがあるけど、これも口コミで確認済みだったからそんなに気にならない。
部屋をキョロ突きながらも、チェックイン前だということを思い出し、リュックを置いて必要なものだけをミニリュックに入れて、内側のボタンを押して鍵を閉めてから部屋を後にする。
下に行くとさきほどのおばちゃんが声をかけてきた。
「夕食なしの素泊まりでいいですよね。」
「はい、お宿にはレストランがありますか」
何かそれらしきものをウエブサイトで見た気がする。
「レストランはなくてただ予約でやらしてもらっています。今日はこのヒラメです」
水槽のなかにいる大きなヒラメを見せてくれた。
「これを今日は煮付けにする予定です。早めに言ってもらえれば用意できるけど刺身とか嫌いよね?」とたぁに尋ねて来た。
「刺身はいいんですが、焼き魚と煮物が食べられません」
咄嗟のことで答えられずにいる彼の代わりに私が答える。
ここの朝食はアジの塩焼きと知っていたからこそあえて素泊まりにしたんだ。
「それじゃぁ、無理ね。向こうに行けばお店がいろいろあるからそっちのほうがいいわ。15時、いや、14時からチェックイン出来ますから」
予定の時間よりも早く言ってくれていることがまた嬉しい。
「ハイキングしてくるので15-16時くらいに戻ってきます。」
「わかりました。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
口コミでも従業員さんのサービスが良いと書いてあったけど、その通り。
ありがとう、おばちゃん。
第一印象◎です。
無空真実の電子書籍です。よろしくお願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?