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詩の場所

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小山伸二の詩の置き場所です。
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2016年6月の記事一覧

歌だよね。

歌だよね。

ラジオから詩人の歌が聴こえてくる
たかだか三十分か一時間
人生にはすき間ができて
どんなひとでも
そのすき間のなか
夕暮れどきの空からの贈り物を
うけとることができるんだ

やっぱり
歌だよねえ
DJはそこで力をこめて呟いた
ひとが生まれて
たかだか二十万年かそこら
ことばを使えるようになって
たかだか六万年

やっぱり
歌だよねえ
って、ぼくたちは
夕暮れどきにひかりと影に
つぶやいてきたんだね

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アブラカダブラ

アブラカダブラ

六月の雨にうたれて
ぜんぶ消えてしまえばいいんだ
恋人をうしなった夜も朝も
出がらしのコーヒーに
じゃぶじゃぶお湯をぶっかけて
濡れた地面でダンスしよう

海からも遠く
山も川も霞んで見えないよ
どんづまりの箱がたらたらと
西に向かっている
父の日に手紙を書いのは誰だっけ
ドア付近に陣取っている
女の子ふたりがはしゃいでいる

ガマガエルみたい
カレー屋の男がチラシを配ってる
ぐるぐる旋回する駅前

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皐月、サヨナラ。

皐月、サヨナラ。

この町から旅立ったひと
帰ってきたひと
この町にやって来るひと
遊んでいるひと
道のうえの小石を拾う
どこにでもある風景を
スケッチするだけのきょうがつづく

色とりどに濡れている
みどり、しろ、きいろまでが
雨上がりの舗道
口笛といっしょになって自転車がぼくを追い越していく
異国の香りを残して

すこしだけ自由に
すこしだけ快活に
子供も大人も歩いている
ぼくたちはどのくらい自由なんだろう
カフ

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