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詩の場所

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小山伸二の詩の置き場所です。
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2016年2月の記事一覧

二月二十九日に。

二月二十九日に。

いくら緻密なことでも
どこかしら瑕疵があるという
絶対ということは絶対ないんだ
と、言い張れないものの
四年に一度だけ
百年に一度だけ
そして、千年に一度だけと
不吉な影がせまる

統計や確率では計りしれない
そこしれない一回性のなかに浮かぶ
揺れる列島で
ぼくたちの夢のような時間が
尽きようとしているのか
刻まれてきた時間
とほうもない時間
この町にも数十億年が流れてきた

あっという間の数十億

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仕覆

仕覆

きみの手が布を縫いあげ
紐を組み合わせて袋を仕立てる
ちいさな器をしまうための袋
器をつつみ
仕舞い込み
使うたびに
紐をほどき
はだかの器はいつでも
きみの手のひらのなかにある

たとえば、ブルーのガラスの猪口
酒をつぐ
稲穗の夢のような
雷鳴をひめた清酒が注がれた猪口は
しばしの湿りのなかで息を吹き返し
きみの唇に触れる
飲み干されるたびに
生と死を繰り返しながら
猪口はふたたび
きみの袋のな

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ひかりが、二月に

ひかりが、二月に

空を切り裂くひかりが
はるか海上の沖に消えて行った二月に
ぼくはまどろみながら夢をみる
湯船につかりながら
しゃがみこむひとの影を見る
なにかを描いている
地面が見えない
ことばなのか
それとも、何かの図形
心と体
論理と蒟蒻
風呂から出て
ぼくは食事を作っているらしい
夢は続いている
ジャズのうるさいドラムの音がつづく
空を切り裂いたひかりを追え
日本中が浮き足立っている
はるか海上の沖に消えて

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