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二月二十九日に。

いくら緻密なことでも
どこかしら瑕疵があるという
絶対ということは絶対ないんだ
と、言い張れないものの
四年に一度だけ
百年に一度だけ
そして、千年に一度だけと
不吉な影がせまる

統計や確率では計りしれない
そこしれない一回性のなかに浮かぶ
揺れる列島で
ぼくたちの夢のような時間が
尽きようとしているのか
刻まれてきた時間
とほうもない時間
この町にも数十億年が流れてきた

あっという間の数十億年のあいだ
いろんな砂のお城を作っては壊してきたぼくたちは
一橋大学の構内を
とぼとぼと散歩する午後に
あたらしい武蔵野で
あたらしい縄文を忘れ
あたらしい大学の林をわたる風を感じる

駅に向かうまで
コーヒーを一杯だけ飲もう
まだ時間はあるから
数十億年なんて
あっという間だったんだから
駅前でがんばる機械を見た
これから恋人に会うために
新宿に向かう若者を乗せた中央線が走りだした

きょうは二月のおしまいの月曜日だね
と、だれもが挨拶をかわす
四年に一度の辻褄あわせ
ほんとうはいまが、いつなのか
きょうが、なんの日なのか
ぼくたちは誰なのか
とっくにわからなくなっている
この二月のおしまいの月曜日
のんびりと回転をしている惑星

ぼくはきょうのランチのために
駅前にできた
看板がかわいいパン屋で
一本のバゲットを買って帰る
あした世界が終わるとしても
きょう樹を植える家族のために

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