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詩の場所

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小山伸二の詩の置き場所です。
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2015年12月の記事一覧

ひかりの橇で

ひかりの橇で

聖なる夜がやって来た
世界に
聖なる夜がやって来た
この町に

さまざまなお話を読んでしまった
この町の住民たち
それぞれの絵本の中に隠し持つ
冬空に広がる叢雲と星々
商店街のイルミネーション
そして永遠のきらめきと、ときめき

聖なる夜がやって来た
きみに
聖なる夜がやって来た
この町に

旭通りの蕎麦屋で
富士見通りのカフェで
谷保駅前の居酒屋で
みんな一杯やりながら、ご機嫌さんで
報道がうる

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シアワセ

シアワセ

昨晩、町にアクシデントがあったんだ
突然、駅前の一角が原因不明の停電になり
パトカーや消防車が出動する騒ぎに
信号機も消えて
警察官がかわりに車を誘導していた
大学通りのイルミネーションも街灯も消え
野次馬たちがぞろぞろと駅の方に集まって来る
車も渋滞してバスもタクシーもやって来そうにない
ぼくは諦めて
暗い道を歩いて家まで帰ることにした
騒然としている駅前から
だんだんひとけのない闇に向かってと

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この十一月に乾杯を

この十一月に乾杯を

この町にも
十一月十二日と十三日はやって来た
誰が息をのんだのか、その日に
原油まみれの黒い海鳥のことを憶えてるだろう
言葉にまとまらないものを
なけなしの箱に納めた
みんながしくじったことを
古道具屋も古本屋も店仕舞いする
がしゃがしゃと音をたてて
花屋も煙草屋も珈琲屋もパン屋も
あるがままの世界の中で
呼吸しようとしてもうまくいかない
古い町の川 
左岸と右岸を歩いたことを思い出す
富士見通り

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