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詩の場所

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小山伸二の詩の置き場所です。
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2015年3月の記事一覧

くにたち三月

くにたち三月

国立駅南口
賢しらなことを話すひとがマイクロフォンを片手に
三月の話をしている
藤原業平というのか
ぼくは
いろんなふりが、いよいよできなくなって煮詰まる
リダクションっていうのかな
赤ワインを静かに煮詰めていくと
やがてキラキラひかる
鏡のようになって
世界の醜さ
狡さを映し出していく
そんな物言いさえも立派すぎるのだと
現在を生きる詩人になじられて

国立駅南口の
三月も終わろうとする
この列

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三月に。

三月に。

眠れる姉に雨が降る
しずかな森のように
濡れていく雫のひかりを
そっとこの手のひらにうけとめて
眠れる姉の鼓動の丘に
この胸をうずめる

古代の恩寵を抱きしめたい
わたくしの三月の暦
恋人に詩を送る夜のしじまに
獣たちが息をひそめている

逃げる二月

逃げる二月



昼酒
一合だけでゆるいほろ酔いに
ここで打ち止め
それが肝要
それが寛容への道筋
理屈ではどうにもならないこともあるのよ
小学生の頃にそんなことを教えてくれた
近所の綺麗なお姉さんを思い出す
きっといまごろ
綺麗なおばあさんになっているお姉さん
この二十一世紀の二月を
どんな気持ちで
過ごしているのかな

風呂上がりにね
濡れたタオルをパンパンと音を立てて
鳴らす

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