iOS_の画像

「1000年に1人の天才マーケター」はいまのところふたりいる

2種類のマーケター

マーケターには2種類ある。死んだマーケターと、いずれ死ぬマーケターだ。ちがう。いや、ちがわないけど、ちがう。

ぢごくのまーけたー、しんいつです。

ひとつは、クライアントの意を受けて、そのマーケティング能力を最大限に発揮することによろこびを感じるタイプのマーケター。代理店とか、あるいは事業会社でもそのサービスや商品自体というよりは自身のマーケティングスキルをみがくことに余念がなく、おもしろそうな話があったらささっと転職しちゃうひとね。

もうひとつは、会社で事業責任者とかサービス担当者として、その商品やサービスをどうやって拡販しようか考えて実践しているうちにマーケティング活動のほうがメインになっていくタイプ。本人はマーケターとは思ってない。スティーブ・ジョブスをイメージするとわかりやすい。

前者と後者、どっちが良いとか悪いとかの話をするつもりはない。前者でやってきたひとが「これは!」というプロダクトに出会って後者の道にすすむこともあるだろうし、後者のひとが「マーケティングのほうがおもしろいやん」って前者に転換することもあるだろう。あくまでも「その時点での軸足のおきかた」ととらえていただいて問題ない。

ぼくが思う「1000年に1人の天才マーケター」をそれぞれひとりずつ紹介したい。

1000年に1人の敏腕代理店マン

このひとである。クライアントである神の命をうけ、天国の広告代理店として大成功をおさめた。いや、いまだに拡大している。

のこされた記録をみるかぎり、マーケティング活動を本格的にはじめてから、やりすぎて権力者に刺される(物理)までの期間はわずか3年ほど。メディアといえば粘土板とクチコミくらいしかない時代に、水をワインにかえる、海のうえをあるく、病人をいやすなどの独創的なマーケティング手法をもちいてコンバージョンを獲得していったさまは、まさに天才マーケターだ。

現時点でのアクティブユーザ数はなんと、20億人。文句なく世界最大のプラットフォームだ。2000年間での累計獲得数はとんでもない数になる。クライアントからうけとった報酬も、ラスベガスで単独ショーをやるにはちょっときびしいくらいの奇跡をおこす能力程度。信者ひとりあたりの獲得単価(CPA)は原子レベルである。

かれのことばをまとめた書籍も世界的な大ベストセラーになっているので、マーケティングにたずさわる人間ならかならず読んでおきたい。「え、この訴求ってこのひとがはじめたの?」「このクリエイティブ、このひとがやってたんだ……」と意外な気づきがたくさん得られる。

ぼくが好きな訴求は「罪の女」ですね。「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、この女に石を投げなさい」ってやつね。いまでもネット上でちょいちょい見かけます。2000年生き残る訴求ってなかなかないよ。すごくない?

1000年に1人の起業家兼マーケター

このひとである。前者とはちがって、かれは自分自身がたちあげたサービスプラットフォームを拡大するためにマーケティング活動をおこなった。ジョブス型のマーケターだ。

もともとめぐまれた家庭に生まれ育ったが、起業のために家庭を捨てて裸一貫でとびだし、現代でも続くフレームワークとプラットフォームの基礎を作りあげた。アクティブユーザ数は前者にはおよばず、諸説あるが4億人程度といわれている。しかし歴史はこちらのほうが古い。これまた諸説あるがだいたい500年くらいは古い。

かれもまたバイラルやイベントを中心としたオフラインマーケティングの達人だった。かれの構築したプラットフォーム自体が高度に理論化・体系化されており、人生という課題に対してデータドリブンでの解決をめざした史上初のサービスでもある。そういう意味では、早すぎた近代マーケティングの始祖ともいえる。

われわれがふだんなにげなくつかっていることばやことわざ、フレーズや文字自体も、かれのプラットフォームが元になっていることがたくさんある。日本語や日本文化に対する影響力でいうと、後者のほうがだんぜんおおきい。

なんかうまいこと言おうとしても、たいていかれが先に言っている。なんか良い話やなーと思ったら、だいたいかれが自分の弟子に先に話している。元祖インフルエンサーである。かれの時代にTwitterやYouTubeがあったらやばいことになっていただろう。

かれのことばをまとめた中村元訳の岩波文庫は、どこを開いてもよいことが書いてある。ぱらぱらめくるだけで示唆にとむフレーズや、ぐっとくる比喩がいくらでも出てくる。もうぜったい勝てない。

ほんとうはもうひとりいる

でもいろいろアレなんでそっとしておいてください。

マーケティングの本質その5

大丈夫、ぜんぶ2000年前にやられてるから

次回予告

流れよわが涙、とマーケターは言った

悪いことは言わない。やめておけ!