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サービスブループリントが担う3つの役割

こんにちは。UXデザイナーのはまちです。

昨今は、言うまでもなく様々なサービスにおいて、提供側とユーザーの接点が多様化しているかと思います。

そして、そういった接点の多様化は、サービスで何か問題が起きている時、その問題が必ずしも一つの接点で完結する話ではなく、様々な箇所で、様々な要因が関係し合いながら発生している可能性があることを意味しています。

逆に言えば、ユーザーが「心地よい」と思えるサービスを実現するためには、様々な接点の裏側にあるサービス提供側の仕組みも含め、包括的かつ統合的に考えていくことがとても重要になります。

さて、デザインには様々な手法やツールが存在しますが、このような状況下で力を発揮するものの1つが、サービスブループリントです。

今回は、実際に昨年私がご支援させて頂いていたプロジェクトでの経験を踏まえ、全3回に渡ってサービスブループリントの活用方法について考えていきたいと思います。

今回は、その第一弾として、まずはこのツールがどのような点で優れているのかについて、3つの観点から書いていきたいと思います。


サービスブループリントとは何か

サービスブループリントとは、あるサービスにおける一連の顧客体験を時系列に沿って書き出し、そこに存在する顧客とサービスの様々な接点を起点に、サービスに関わる人 / モノ / コト それぞれのやりとりを可視化した図のことを言います。

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図を見て分かる通り、上段に顧客体験の流れなどが可視化され、それに続く形で、顧客が「サービス」として実際に見ることのできる「フロントステージ」、顧客からは見えないがそのサービスを支えている「バックステージ」、更にはその両者を支える「サポートプロセス」まで可視化されます。

レストランを例に考えると、こんな感じのイメージです。

フロントステージ
 料理そのものや、それを提供するスタッフ
バックステージ
 厨房で調理をするシェフ
サポートプロセス
 開店前に料理の具材を運送してくれる業者など

それでは早速、このツールが実際のプロジェクトで担う役割について書いていきたいと思います。


1. 関係者の理解を揃え、議論を前進させる地図

そもそもサービスは、その一部分を目で見ることが出来ても、全体像を見ることが出来ません。

ですので、何らかの形でその全体像を可視化しない限り、サービス関係者それぞれが、それぞれの視点や視野でサービスの特徴や課題感を捉えて、議論が中々噛み合わないという状況に陥ってしまいます。

そこで活躍するのがサービスブループリントなのですが、その作成プロセスに関係者を巻き込むことで、サービスの具体的なあり方を議論する上での全員の理解が揃う、つまり、これまで各々の頭の中で描かれていたサービス像が、「一つの具体的な形」として可視化され、全員が議論をする対象物として機能する状態を作ることが出来ます。

関係者の理解を揃え、議論を前進させる地図

私が昨年ご支援させて頂いたプロジェクトでも、関係者と初期にこのプロセスを経ることで、「そもそも関係者間でもまばらだった、サービス運営側のオペレーションに関する理解度を揃えることができた」、また「議論がより具体的になった」といったような効果を、クライアントに感じて頂くことが出来ました。

サービスブループリントは、いわば関係者を一堂に会し、「道に迷わず議論を前進させるための地図」のような役割を担ってくれると言えます。


2. 理想と制約を擦り合わせる土俵

どんなプロジェクトにも、より良いサービスを提供するための「沢山のやりたいこと」がある一方、時間やコストといった制約が必ずつきまとうものです。つまり、常にどこかで「理想と制約のせめぎあい」に対処しなければなりません。

そういった中、サービスブループリントを活用することで、サービスの全体像が可視化された図を関係者で見ながら、以下のような議論を行うことが可能となります。

ユーザーにとっての価値を考えた時、何がサービスの「理想像」なのか?
時間やコスト、現場での運営上の制約を考慮した時、理想像を実現するためにどのような「課題」を解決しなければならないのか?
もう一度ユーザーにとっての価値を考えた時、必要最低限の体験を担保するためには、まずどの課題を「優先」的に解決する必要があるのか?


つまり、関係者と同じ認識のもと、以下を行うことが可能となります。

1) サービスのあるべき姿を描く
2) 取り組むべき施策を洗い出す
3) 施策の優先順位付けを行う

理想と制約を擦り合わせる土俵

私が携わったプロジェクトでも、まず可視化した現状のオペレーションを土台に、関係者間で「理想像」を議論することで、現状とのギャップを「課題」として浮き彫りにすることが出来ました。そして、それらを重要度や緊急度、サービスブループリント上に可視化された運用上の制約などと擦り合わせながら、関係者で施策やその優先順位を決めていくことが出来ました。

サービスブループリントは、混沌とした状況の交通整備の手助けをしてくれる、いわば「理想と制約を擦り合わせる土俵」のような役割を担ってくれると言えます。


3. 継続的にサービスを改善するための議論の土台

サービスの価値は、サービスそのものではなく、サービスを利用する個人個人がそれをどう思うかによって決まります。しかも、その時の天気だったり、接客をした店員だったり、周りの顧客だったり... ありとあらゆる要素がその価値を左右する影響力を持っています。

つまり、サービスにはこれといった「完成形」が存在しません。

それは同時に、サービスブループリントに可視化したサービスは、あくまでその「途中経過」に過ぎない、とも言うことも意味します。実際、いくら綺麗にサービスブループリントを作ったとしても、実際のサービスが想定通りにいかないことが世の常です...

そんな中、実運用の中で「点」として明らかになった問題を、「面」として俯瞰し、根本原因や改善策を考える手助けをしてくれるのも、サービスブループリントが担う重要な役割です。

継続的にサービスを改善するための議論の土台

問題が発生している「点」に対して対症療法に走ることを防ぎ、それが発生する仕組みを理解することで、根本的な解決策の検討を行う手助けしてくれるツールだということが出来ます。

それは、継続的にサービスを改善していく上で、「より本質的な問題解決を行うための議論の土台」の役割を果たしてくれている、とも言うことができるのではないでしょうか?


何に優れているかを理解することが大切

いかがでしたでしょうか?

今回ご紹介したサービスブループリントが、どういった役回りでその威力を発揮するのか、そういったことをイメージして頂くことが出来たなら、すごく嬉しいです。

デザインには様々な手法やツールが存在しますが、大切なのは、沢山の手法やツールを知っていることではなく、それぞれが何に優れているかを理解していることだと思います。

デザインという正解や常套手段が存在しない問題解決へのアプローチでは、こういったツールの特性を理解し、多くの引き出しを持ち、状況に応じてそれらを有効活用していくことが大切だと思います。

さて、次回の記事では、実際にサービスブループリントを活用する際に大切にしたい5つのポイントについて書いていきたいと思います。


▼目次
1. サービスブループリントが担う3つの役割
2.サービスブループリントを活用するために、大切な5つのこと
3.サービスブループリントの活用4ステップ