サービスブループリントの活用4ステップ
こんにちは。UXデザイナーのはまちです。
この記事は、サービスブループリントを有効活用するための方法や考え方について考えるシリーズの、第三弾となります。
第二弾では、サービスブループリントを有効活用するために大切にしたい5つのことについて書きました。
今回は、実際のプロジェクトでこのツールを有効活用するための4ステップについて書いていきたいと思います。
※ 今回ご紹介するステップは「単純な既存のサービス改善ではなく、既存サービスを土台に、新たな別のサービスを設計をする」といった活用シーンを前提に書かれています。プロジェクトによって活用目的が異なると思いますので、一つの考え方として、ご参考にして頂けますと嬉しいです。
1. 前提知識を理解する
まず行うべきことは、そのサービスのあるべき姿について議論をする際に、前提となる知識を関係者全員で理解することです。
ここでいう前提知識とは、以下3つのことを指します。
1) 事業者としての目的
「事業者は何のためにこの取り組みをするのか?」その点について関係者がしっかりと理解し、目線を合わせることは、サービスのあるべき姿を描く際にも、そのための施策の優先順位づけを行う際にも、重要となります。
2) 顧客にとっての価値
「顧客はどんなことに価値を感じるのか?」それは、サービスの中でも特に注力的に検討をすべき箇所を決める際や、時間/コスト/運用といった制約下での最適解を生み出す際の指針となります。
3) 現在のサービスの全体像
「どんな顧客が、どんな手順でサービスを受けていて、そこに対して、どんなスタッフが、どのようなオペレーションでサービスを提供しているのか?」土台となるような既存サービスが存在する場合、その全体像をはじめに捉えておくことで、1), 2) と照らし合わせながら、具体的にサービスのどこに工夫をするべきか、を検討できるようになります。
以上の3つの前提知識について、関係者と議論しながら、サービスブループリントの形に可視化して行くことで、関係者全員で目線を揃えた状態で、次ステップへと進むことができます。
PJ初期にメンバーの理解を合わせるために作成するサービスブループリントの1例。初めはサービスの全体像をしっかりと理解することが重要です。
現在のサービスの全体像を理解することは、正直かなり大変なプロセスですが、それを正しく理解することが、このツールを有効活用し、より具体的な議論をしていく上でとても重要になります
2. 概略レベルで理想像を描く
さて、1のプロセスを経ることで、「そのサービスを取り巻く顧客体験にどのようなフェーズがあるのか?」といったことが抜け漏れなく、明確になってきます。
そこで次に検討することが、「『顧客にとっての価値』を実現するために、具体的に顧客体験のどのフェーズで、どういった工夫をすべきか?」といったことです。
そして、この段階で意識すべき点は、「まだサービス提供側の制約を考えず、顧客(ユーザ)にとっての理想像を描く」といったことです。
制約は後からいくらでもついてきますので、まずは徹底的に「顧客はどんなことに価値を感じるのか?」といったポイントを突き詰め、それを体現するサービスのあるべき姿を概略レベルで可視化することが大切です。
ここで描いた理想像が、制約を踏まえた具体的なサービスの在り方を描く上での指針のようなものとなってきます。
3. 制約を加え、具体的なオペレーションを描く
ここで再びサービスブループリントの登場です。
2で明確にした「概略レベルの理想像」をベースに、1で明確にした「現行サービスの全体像」と照らし合わせながら、サービスを実現する具体的なオペレーションを検討します。
それをサービスブループリントに可視化していくのですが、その過程で自ずと様々な制約が見えてきます。例えば、以下のような制約です。
そこのデータは現状、別々のシステムがそれぞれのスコープでデータを保持しているので、短期的に連携することが厳しい...
サービスのこの部分は現状、委託先会社が担っていて、自社体制に変えるか、何かしらのインセンティブを委託先に設けない限り、理想のサービスを提供できそうにない...
それらの制約を、1で明確にした「事業者としての目的」「顧客にとっての価値」と照らし合わせ優先順位付けし、施策を検討し、初期にまず実現するサービスの具体的な姿を形作っていきます。
☝🏼もちろんプロジェクトの内容にもよりますが、出来るだけPCの画面に収まる且つ読めるサイズ感でサービスブループリントを整理できると、議論がしやすいですし、後から見返す時に「うっ..」とならなくてすみます。
4. 実運用を通して改善を続ける
第一弾 / 第二弾 の記事でも書いてきた通り、サービスブループリントは最終成果物でなく、常に、より良いサービスをつくるための中間成果物であり続けることになります。
ですので、実際にサービスを運用してから、常にこのツールをサービス改善のための議論の土台として活用し、どんどん内容を更新していくことがとても重要です!
万能な型が無いからこそ、共有する意義がある
いかがでしたでしょうか?
今回は、実際にサービスブループリントを有効活用するためのステップについて書いてきましたが、正直なところ、いくら類似条件のプロジェクトであっても、綺麗にこのステップの通りにはいかないと思います。
むしろ、プロジェクトによって状況は千差万別なので「万能な型」的なものは存在しないでしょう...
ですので、考え方の一つとして、この記事が参考になったら嬉しいですし、むしろ「こんな進め方もある」とか「もっと良い進め方があった」なんてことがあったら、是非教えて頂きたいです...!
こういったデザインツールやアプローチには、万能な型が無いからこそ、色々なデザイナーがそれぞれの経験から得た知見を共有していくことに意義があると感じています。
これからも、是非色々な経験を共有していければと思っています!読んで頂きありがとうございました。
▼目次
1. サービスブループリントが担う3つの役割
2.サービスブループリントを活用するために、大切な5つのこと
3.サービスブループリントの活用4ステップ