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感情重視型対話

「今の話をわかってもらえただろうか?」「言いたいことがちゃんと伝わっただろうか?」

他者と話をする上で、相手が自分の思うような受け取り方をしてくれたか気になることがあります。

自分が伝えたいことがどれだけ正しいことであっても、相手がそれを受け取ってくれなければ、何の意味もありません。

コミュニケーションとは、言葉のキャッチボールだけでなく、想いのキャッチボールができて初めて成立するものです。

話の内容を言葉の音として受け取ってもらえたとしても、真意が届かなければ対話の目的を果たすことはできません。

想いを交わすコミュニケーションにおいて大切なのは、話の内容を「正しく伝える」ということではなく、「相手の心理状態に合わせて伝え、話の内容を受け取ってもらう」ということです。

ここでは、相手の立場、相手の視点に立ち、相手の心の状態に着目する感情重視型対話法について考察します。

正論より感情①

人が話に納得して行動に移すときは、心で話を理解できたときです。

話をした結果、相手が望む行動を取ってくれる例に、セールスの対話があります。

例えば、車を試乗しに来た家族がいたとします。

ディーラー販売員が、車の規格や仕様、エンジンスペックやボディの素材、などの車の性能を説明しても、よほど車好きの人でもない限り、なんとなくしか伝わりません。

その家族がミニバンというファミリーカーを購入することで、「どのような楽しい体験ができるか」「家族の思い出をつくることができるか」というストーリーを語った方が、はるかに家族の心に響きます。

全シートが水平になるまで傾けられてリビングのように寝転んでくつろげるから、子供にとって夜間の移動や長距離移動が快適になる。

荷台を広く取れば、荷物を沢山積んで旅行に行くことができるし、帰って来てすぐに荷物を下ろさなくても大丈夫。

沢山の荷物で両手が塞がってしまいがちなお父さんのために、足元センサーで扉がスライド開閉できる。

このようなストーリーを並べることで、車で遠方に家族旅行に行って思い出をつくる情景を描くことができ、心が動いて車を手に入れたくなります。

たとえ頭で商品の良さを理解しても、その商品を買う決め手にはなりません。

人は感情が動いたときに、その商品を買おうと決めてくれるものです。

セールスは、相手を動かす最も難易度の高い関門でありますが、職場で相手に伝えたいことがある場合も、話の大筋は同じです。

相手の心が動くには、感情の変化に注目して話をすることが大切です。

正論より感情②

接客サービスをする職場の上司から、お客様に愛想よく笑顔をお届けするよう注意されたとします。

その上司のことを日頃から「嫌な奴だ」と思っていたとしたら、素直に聞く耳を持つでしょうか?

おそらく上司の注意を受けて、心の中では「うるせーな」と思う人が多いはずです。

そういう場合、上司がいるところでは笑顔をするが、いないところでは笑顔をしないということが、往々にしてあります。

マクドナルドにスマイル0円というメニューがありましたが、接客業において、笑顔を届けられるかどうかは、お客様に気持ちよくサービスを受けてもらうためのとても重要な要素であることは、誰もが疑わないことです。

「笑顔で接客する」ことは正論です。

注意された本人も、そんなことは百も承知です。

「お客様が第一だ。」

だから「お客様が気分良くなるよう接することが大切だ。」

だから「笑顔を発信する必要がある。」

AだからB、BだからC、と正しいことを論理的に説明されても、心が開いていなければ聞き手の行動は変わりません。

聞き手の行動変容が起こるのは、心が動いたときです。

相手の心の動きに気付くには、相手の心の状態を受容することから始まります。

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