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ラグビー選手のフィットネスを高める方法 -ランニングプログラム② Half Turn Euro Fitness

◆はじめに
ラグビー界では持久力全般のことを"フィットネス"というローカルなスラングで表現しますが、こちらの記事では"キャパシティ"と定義します。


キャパシティを高める為のプログラムとして、現場では

・効果が期待できるもの
・バジェットを過剰に消費しないもの
・クオリティを担保しながら同時に多くの人数が実施出来るもの

という条件をクリアしなければいけません。

今回のプログラムは、上記を満たしながらシーズン序盤にキャパシティを高める方法として実用的なものです。

グランド全面を使えるのであれば、同時に100人でも実施が可能です。



◆続 本当に追い込まなければいけない?

限られたバジェットをうまく活用するためには、内的負荷だけにとらわれないプログラムを考えなければいけません。
選手をヘトヘトに疲弊させることは目的ではありません。目的に対する手段として、その状態が必要か否かが問われます。


目的はGame DemandsとWorst Case Scenarioに適応し、チームのゲームプランを実行するためのキャパシティを身につけることです。

Training Session Demandsからかけ離れた負荷は、キャパシティを高める最善策だったとしても、ラグビー選手にかける負荷として適切か注意深く考える必要があります。


5m/s以上の速度で走る距離 High Speed Run の絶対値と割合は、キャパシティを高めるためには必要最低限の量にとどめることが理想です。


◆プログラムを考える上でのポイント

まずは現状を把握するためにテストを実施します。ラグビー界ではBronco Test、1km Time Trial、Yo-Yo IR1 Testが主に使われていますが、今回はYo-Yo IR1 Testについて記述していきます。


Yo-Yo IR1 Testは静止した状態から加速と減速を間欠的に繰り返すランニングテストです。
単なるキャパシティ評価にとどまらず、ラグビーのパフォーマンスに関連するキャパシティを測定出来ると個人的には感じています。非常にオススメです。

ラグビー日本代表やリーグワンの強豪チーム、大学選手権で優勝したチームのデータと比較出来るので、体格の小さいチームがチャレンジするために必要なデータが得られます。


Yo-Yo IR1 Test のタイムを基準に、Half Turn Euro Fitnessの設定タイムを決めていきます。
以前のBroken Broncoと同様に、MASから目標の距離を設定します。

MASを算出したら、一覧表から各選手の設定タイムを決めます。今回はMAS105% で各選手の設定タイムを算出していきます。


MAS% と 10sec Half Turn Euro Fitness


この時、MASから算出した設定タイムが上手くフィットしないケースに注意しましょう。

Yo-Yo IR1 TestとHalf Turn Euro Fitnessは Anaerobic Speed Reserve の影響を受けにくいですが、現場における設定では主観的な努力度が概ね揃うように微調整が必要となります。

設定距離を決めるうえでMASは大枠を示すものであり、狙った強度から著しく外れる選手がいないように注意してください。

走速度(設定タイムまたは距離)が決まったら、プログラムで実施する総ボリュームと、ラグビー選手としての走行距離バジェットを照らし合わせて、その日に実施するプログラムを決めます。

最大公約数となるプログラムを考えながらも、個別性も併せて考慮していきます。

また、Half Turn FitnessのMAS設定が120%を超えると意図が変わるので、Repeat Sprint系のプログラムとは明確に区別しましょう。


◆ランニングプログラムの例

どんなプログラムも対象を評価してから処方しているので、プログラム自体を丸々コピー&ペーストしないことが非常に重要です。

マーカーに選手の名前を記入して、事前にスタート位置を周知しておけば全体のセッションでありながら個別対応ができます。


設定順に並べば、ゴールするタイミングも概ね同時になります。必ずビデオを撮ってもらい、設定が狙い通りであったか確認するようにしましょう。

2rep以上遅れて(10秒に間に合わない)ゴールする場合は、50cmから1m程度 距離を縮めましょう。

設定から2秒以上遅れてゴールしている場合、このWork : Restの比も意図とは違います。

また、一度に多くの人数が走ってグランドの横幅が狭くなる場合はスタートとゴールを複数作って対応しましょう。
ポイントは全員が同じタイミングでゴール地点を通過する設定にすることです。
遅れている選手や相対的な強度が明らかに合っていない選手は、距離を縮めて10秒のワークでクリアできるように修正します。

グランドの外に個別の切り返しマーカーを予め置いておけば、チーム練習のドリルが終わって水を飲んでいる間にスタート位置を設定できます。
チーム全体の流れを遮ることなく運用が可能です。


Half Turn Euro Fitnessを実施する際はMAS105%程度から始めて、Lv4でも全てのrepでタイムをクリア出来たらMAS110%の設定にタイムを縮めましょう。

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