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第21節チェルシーvsリヴァプール 激しく、速く、巧く、冷静に。

最初に

2位と3位の直接対決となった第21節チェルシー対リヴァプール。
チェルシーのスタメンは、GKメンディ、CBは左からリュディガーとシウヴァとチャロバー、左WBマルコス・アロンソ、右WBにアスピリクエタ、CHにカンテとコヴァチッチ、シャドーにプリシッチとマウント、CFにハヴァーツの[3-4-2-1]のシステム。因みにルカクは発言(トゥヘル監督の戦術に不満があるとか…)が物議を醸し、招集されませんでした。
対するリヴァプールのスタメンはGKケレハー、左SBにツィミカス、CBは左からファン・ダイクとコナテ、右SBにT.A.アーノルド、ボランチにファビーニョ、IHにヘンダーソンとミルナー、前線に左からマネとジョタとサラーの[4-3-3]のシステム。アリソンとフィルミーノとマティップそしてクロップ監督が陽性反応が出て欠場。
試合開始の時点で順位が1位マンチェスター・シティ(21試合|勝ち点53)、2位チェルシー(20試合|勝ち点42)、3位リヴァプール(19試合|勝ち点41)という順位。
プレミアリーグの首位に立つためには、お互いに引き分けではなく勝利を得たい。ハイレベルな試合になることは必至ですが最後に笑うのはどちらか。


前半

キックオフ直後に空中戦の攻防でマネの肘がアスピリクエタの顔面に入ってしまい、いきなりマネにイエローカード。マネらしくないファウルで試合が始まりました。
チェルシーは自陣のサイドから攻撃を組み立てようとし、リヴァプールは積極的なプレスでそこを潰そうとする。
最初に決定機を迎えたのはリヴァプール。前半5分頃にアタッキングサードの右サイドでボールを持ったハヴァーツ、これをコナテがすかさず奪い、ケレハーに戻しそれを縦にロングパスを放る。左サイドでそのボールを収めたマネが運び低いクロスにサラーがダイレクトでシュートするもメンディがセーブ。
6分、今度はチェルシーに決定機。しかし、リヴァプールGKケレハーがコヴァチッチからの至近距離からのシュートをセーブ。お互いにハイライン・ハイプレス・ハイインテンシティで開始早々から試合の展開が目まぐるしく変わっていきます。

リヴァプール先制 スキを見逃さなかったジョタ

8分、リヴァプールから見て右のタッチラインからのスローイングの場面。両軍の選手は全体的に片側にスライドしていました。
この場面では、片側に両軍の選手が寄ったので左WBのアロンソがCHと同じ高さに上がり、3CBと右WBは空いたスペースを埋める為に左にズレて4バックの形を取る。右CHカンテの右横もスペースが空くので右シャドーのマウントが下がってそこを埋める。つまり[4-4-2]の守備ラインです。
中央の2人の中間をジョタがパスを通したのですが、最終ラインが4人となって選手同士の距離が広がった所をジョタが見逃していませんでした。チェルシーがこういったケースで普段から[4-4-2]で守っていたかは分かりませんが、もしそうだとしたらクロップ監督が事前に研究していたのだろうと思われます。
流れとしては、
「コナテ→ヘンダーソンが下がって左CHコヴァチッチと左WBのアロンソを前に釣り出しながらボールを受けてコナテに返す→コナテがフリーになった(4-4-2の4と4のラインの間で)ジョタにパス→ジョタが中央2人のCBの間を通るようにパス→右CB裏に抜け出していたマネがメンディを冷静に切り返してかわす→マネのゴール」でした。

ヘンダーソンが下りてコナテとパス交換。コヴァチッチは釣り出されアロンソはアーノルドをマーク。
コナテからジョタへのパスコースができる。

チェルシーは守備時に基本は5レーンそれぞれに1人ずつ最終ラインの選手を置き、サイドにボールを誘導し大外で奪うのが基本的な守備のルール。
その方が守→攻に切り替えの際に、素早く組み立てられるという戦術をトゥヘル監督は採用している。
ちなみにトゥヘル監督の戦術面については、「15歳のサッカー戦術分析~日本サッカーの発展を目指して~」さんの記事に詳しく書かれています。
記事のリンクはこちら↓


チェルシーがWBの位置からビルドアップして来ることはリヴァプールも分かっているので、リヴァプールはそうはさせまいとSBやIHをWBにぶつけていく。
チェルシーはWBがボールを持ってもショートパスで細かくビルドアップするのは難しくなってくる。中央からはどうかというと両WGが中に絞って3CBに対して前線3人がしっかり見ているので両サイドのCBが起点となるビルドアップがやれない。ピッチ中央を6人で守っているので、カンテやコヴァチッチを経由してビルドアップというのも難しい。
試合はチェルシーが中々決定機を作れない状況が続く。

リヴァプール2点目 神憑りなモハメド・サラー

25分、試合が動く
センターサークル右のそばにいたアーノルドから右サイドの大外で待っていたサラーへパス。サラーにボールが渡ると分かった途端左CBのリュディガーがサラーへ鬼のようにチャージ。サラーは一旦ファビーニョにボールを預ける。ファビーニョはすぐ右横にいたアーノルドにパスを出して、アーノルドはリュディガーが戻れていないのを見逃さず、左CBの位置の裏(右のポケット)へ縦のパスを放り込む。アーノルドが蹴る前にはもうポケットへ走り出していたサラーが右ゴールポストのすぐそば角度の無い場所から冷静にゴールを決めてこれでリヴァプールが2点目。

サラーはリュディガーにプレスをかけられていたので一旦ファビーニョへ。ファビーニョはロングボールの精度が高いアーノルドへ。
ハーフライン上にいるアーノルドがDFの裏へ、というのはリヴァプールのよく使う手。
アーノルドは最終ラインの裏(ポケット)めがけて放り込みサラーへ。


チェルシー怒涛の巻き返し

このまま前半はCHE0 - 2LIVのスコアで終わるかな?と思えました。
40分にハヴァーツがPA右横でミルナーに倒されファウル。これがFKとなります。キッカーのアロンソは直接ゴールを狙うもGKケレハーが弾く。ペナルティーアークまで飛んで落ちていくセカンドボールを待ち構えていたコヴァチッチがダイレクトでシュート。これが見事に決まり前半41分にゴラッソでチェルシーが1点返します。
更に前半45分にセンターサークル付近でアーノルドが頭でクリアしますがこれが甘くなりリュディガーにセカンドボールを拾われ、左ハーフスペースの高い位置まで上がっていたカンテがパスを受けると、メスト・エジルを彷彿とさせるアウトサイドで右方向に曲がるパスを、中央で抜け出していたプリシッチに出し、そのままケレハーとの1対1を制しゴール。チェルシーが2 - 2と前半で同点まで追いつきます。

アーノルドのクリアを予測してリュディガーが突進。
グレーの楕円で囲まれている選手は正確な位置が分かりませんでした。
リュディガーがサラーに寄せられながらもなんとか脚を伸ばして前方に蹴ったボールはカンテへ。
カンテが浮き球でコナテとダイクの間から抜け出したプリシッチへアシスト。


後半

ハイインテンシティで濃い内容になった前半が終わり、両軍共に選手の入れ替えは無く後半キックオフ。

守備だけではなくチャンスメイクもできるカンテ

後半50分、右サイドレーンの低い位置にいたアスピリクエタからボールを受けた右CHカンテ。ドリブルで運びつつ、リヴァプールのボランチのファビーニョと右CBのコナテを前に釣りだして空いたスペースに素晴らしいスルーパスを出す。左サイドでフリーだった左WBのアロンソがバイタルエリアの左でボールを受けてそのままの流れでシュートも枠に入らず。
見事だったのはカンテのファビーニョを引き付けて抜いたドリブルに、針の穴を通すようなドンピシャのスルーパス。カンテというと守備のイメージが強いですが、これはもう「守備だけ」とは言わせないプレーでした。
前半も右足のアウトサイドでの浮き球で同点となるゴールのアシストをしていました。

フィルミーノの代役では収まらないジョタ

後半51分、ファビーニョがチェルシーの最終ラインの裏を狙うフライスルーパスをジョタがゴールの至近距離から左足を振り抜いてシュート。が、しかしメンディのファインセーブ。結局はオフサイドでしたが、ジョタのオフザボールのポジショニングも巧みでした。チェルシーの右WBと右CBの中間で待っていたジョタを、どちらがマークするべきか少し迷ったその間を見逃さずに背後に抜け出す動き。
コンマ数秒判断が遅れてしまえば失点してしまう、というのがよく分かるシーンでした。

両軍の最後の砦GKメンディとケレハー

前半もそうでしたが、後半に入ってもオフサイドディレイだったものを含めてメンディ・ケレハー共にファインセーブを連発しています。
メンディーは昨シーズンからチェルシーの正GKとしてチームを支えてきましたが、リヴァプールの正GKアリソンの代役として起用されたケレハーもこの試合で度々リヴァプールの危機を救ってきました。
例えば後半57分には、「マネ→サラー→マネ」の素早いワン・ツーで最後マネがシュート。決まったかと思われましたがメンディが恐ろしい反射神経でもって弾きました。
ケレハーは後半61分にプリシッチの左足でのハーフボレーをセーブしています。勿論、ケレハーのした仕事はこれだけではありませんが、至近距離からのハーフボレーシュートをよく止めました。

選手交代 チェルシーのシステム変更

後半68分、両軍共に選手交代。
リヴァプールはミルナーとジョタに替えてケイタとオクスレイド=チェンバレン。
チェルシーはチャロバーに替えてジョルジーニョを投入。
リヴァプールは疲れが見え始めたミルナーをケイタと交代してそのままIHのポジションへ、縦へ突破できるチェンバレンを9番のポジションにおいて点を取ろうと言う狙い。
チェルシーは右CBのチャロバーを下げてそのポジションにアスピリクエタを、右WBをプリシッチにしてCHが左からカンテ・ジョルジーニョ・コヴァチッチという並びになりフォーメーションとしては[3-5-2]という形になります。
後半に入ってからカンテを経由してCHから決定機を作ってきていたので、ボールを捌けるジョルジーニョを真ん中に置いて中盤で数的同数の状況を作り、より中央からの組み立てをという狙いであったと思います。
後半80分にチェルシーは選手交代が功を奏した場面がありました。
ジョルジーニョを中盤底に置いたことでコヴァチッチがより左側で攻撃に重点を置いたぷれーが出来ていました。
チェルシーのスローイングの場面なのですが、スローイングを受けたコヴァチッチはカットインしてバイタルエリアまで侵入し、相手のファウルを誘います。
バイタルエリア左の直接狙える位置からのFK。蹴るのは利き足が右のマウントでしたが、これは壁に当たり、弾かれて戻ってきたボールをそのままマウントがシュート。枠を捉えていましたがケレハーがキャッチしまたもファインセーブ。結局ゴールとはなりませんでした。
チェルシーは守備面でも選手交代以降変化がありました。中盤が数的同数となり、最前線の選手が1人→2人に変わったことで2トップがそのままマンツーマンでリヴァプールのCB2人を見ることができるようになりました。
ボールを高い位置で奪って得点という意図があったように思えます。
ジョルジーニョが入ってからのチェルシーは試合を支配していましたように見えました。
システムを試合の展開に合わせて柔軟にかえる=選択肢を多く持っている強みが出たのかな?と思います。
リヴァプールもいくつかチャンスは作っていましたが、戦術自体に変更は無かったように思えました。

最後に

結局試合は2 - 2の引き分けの両者痛み分けという結果で終わりましたが、年始早々からハイレベルな試合を両者共に展開していたという点ではポジティブな結果と捉えることもできるかと思います。
チーム全体としてのクオリティも勿論ですが、サラーやマネ、ファビーニョにコヴァチッチにプリシッチにカンテにコナテやヘンダーソンにアーノルド等、GKのメンディにケレハー。選手個人のクオリティも高い両軍が激しく、速く、巧く、最後は冷静にプレーしていた試合で、僕は観戦するのが楽しすぎて3回見直しました笑。

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