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[Simple is the best]トゥヘル・チェルシーが示した"3-4-3運用マニュアル"~攻撃戦術の分析~

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はじめに

 今回はチェルシー分析の攻撃編(守備編を出せるかは分かりません)です。昨季中盤の監督交代を機に、怒涛の勢いでCL制覇を達成したチェルシー。ランパードから職を引き継いだトゥヘルは、約半年という非常に短い期間で攻守に渡りソリッドなチームを作り上げました。
 なぜ、彼らは瞬く間に復活し、欧州の頂点まで上り詰めることができたのか。戦略/戦術面から考えたとき、その最大の要因は「シンプルながら洗練された設計」にあると言えます。極めてシンプルで整理された設計でなければ、リーグ9位に沈んでいたチームが短期間で欧州王者に輝くことは不可能だったでしょう。
 この記事ではチェルシーの攻撃に焦点を当て、彼らの体現したものが如何にシンプルであったと同時に破壊力があったか。その訳を探っていきます。

[この記事で使う分析の枠組み]
●攻撃の3局面
①ビルドアップ:
自陣~ゾーン2での振る舞い
②崩し:
ゾーン3での振る舞い
③攻→守:
ボールを奪われた後の振る舞い
●守備の3局面
①プレッシング:
敵陣~ゾーン2での振る舞い
②ブロック守備:
ゾーン1での振る舞い
③守→攻:
ボールを奪った後の振る舞い
※以上は"基本的"な定義であり、目安です。

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第1章 チェルシーの概要(戦略面からのアプローチ)

 まず初めにチェルシーの基本スカッドと攻撃時の配置、ボール保持時の局面①ビルドアップ②崩しに共通する原則を確認しておきます。戦術的なディティールに踏み込んでいくためには、事前に戦略的なフレームを捉えることが必須になります。

基本スカッド

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 上図には昨季のCL決勝Mシティ戦のメンバーを並べました。カッコ内は同ポジションをこなせる選手を記載しています。ベースのシステムは3-4-3です。いくつかの試合においては3-3-2-2、3-4-1-2など異なるシステムを採用していました。
 チェルシーのスカッドの特徴は、プリシッチ、ハドソン=オドイ、ハヴァーツ、ヴェルナー、シエシュ、マウント、エイブラハムといった若く勢いのあるアタッカーが揃っていることです。彼らは現代サッカーで求められる強度・スピード・技術を揃えており、波に乗った時には止められない破壊力を有しています。
 この前提を踏まえると、トゥヘルが3-4-3を採用した理由が分かりやすくなります。

なぜ3-4-3なのか

 前項ではチェルシーのスカッドの特徴を確認しましたが、この項では彼らが用いていた3-4-3のシステム上の特徴について見ていきます。

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 攻撃側にとって、3-4-3は5レーンにバランスよく人が立っている(ポジションバランスが良い)システムです。そのため、ボール保持を好むチームやポジショナルプレーを実践するチームに好まれる傾向があります。
 しかし、ポジションバランスの良さはメリットだけでなくデメリットももたらします。選手間の距離が均等だからこそ機能すれば「ちょうどいい距離感」になりますが、少し間違えば手が届きそうで届かない「微妙な距離感」にもなり得るからです。
 また、撤退してブロックを組む相手と対峙するゾーン3においては「ゴリ押しが効かない」側面がネックになります。レーン×1人なので、相手に撤退され人数を合わされる(例:5バックで5レーンを潰す)と変化がつけられず、手詰まりになってしまうのです。
 例えば中央にレーン被り(CFとトップ下)が発生する4-2-3-1であれば、中央で段差が作れるため相手の撤退守備でCFが消されてもトップ下がフリーになれます。トップ下も消された場合はもう一列後ろのCHにスペースが与えられます。レーン被りがない3-4-3だと段差が生まれず、撤退された後の打開が難しい。つまり無理が利かず、ゴリ押しで決め手を打つことが出来ないのです。

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 この構造上の弱点をカバーするにはどうすれば良いのか。それは「ひっくり返す」、俗にいう擬似カウンターを発動させるに限ります。相手にハイプレスをかけさせ自陣深くに誘き出した上でプレスを突破し、相手の守備組織を破壊する。そして相手がブロックを再構築するまでに広大なスペースを使い、スピーディーな攻撃で仕留め切る。
 プレス突破後のカウンター気味のシチュエーションにおいては、3-4-3の持つレーン×1人という性質が大きな効果を発揮します。相手は受動的な対応を強いられるため、レーンに立つことで相手に「ボールに行くor下がる」の二択を突きつけ、保持者かレーンを走る味方のどちらかが必ず空く状況を生み出せます。
 後方に3CB+2CH+GKの6人を割いているため被ハイプレスにおける安定感も保証しやすい。ひっくり返せるか否か、が3-4-3運用には重要になってくるのです。

 以上から、トゥヘルが「3-4-3とスカッドとの相性が抜群に良い」と判断したと推測できます。一発逆転、ひっくり返すには持って来いの3-4-3を採用すれば、アタッカー陣のスピードや技術、ハマった時の爆発力を最大限に活用できると考えたのでしょう。システムの特徴とスカッドの特徴が合致していたと言えます。

①ビルドアップ②崩しに共通する原則

 この章の最後に、チェルシーに見られたボール保持時の2局面①ビルドアップ②崩しに共通する原則について説明します。

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 2局面に共通していたのは「ダイヤモンド構築+再構築の連続」という原則に基づいてプレーしていたことです。どこにボールがあろうが、この原則は不変です。
 ダイヤモンドとは、手前・左右・奥行きを一塊としたユニットのこと。ボール保持時は常にダイヤモンドを構築し、ボール保持者の位置に応じて不足する3点を補い必要なオプションを確保します。
 トライアングルとの違いは、奥行きが作れることです。奥行きまでを一つのユニットとして捉えることで、プレーが近く→近くになる現象を回避しピッチの縦幅を活用しやすく、ゴール方向へプレーするビジョンを持ちやすくなります。誤解して頂きたくないのは、ダイヤモンドの方が良い悪いではなく、チェルシーの振る舞いはダイヤモンドで捉えた方が理解しやすいというだけです。

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 しかし、ダイヤモンド1つを構築するだけで物事を解決することは非常に困難です。相手のプレスによりダイヤモンドの4人の内1人もしくは複数人を潰されるのは当たり前なわけで、潰された後のオプションを作るまでがワンセットである必要があります。
 従ってダイヤモンド構築だけでなく潰された場所を何度でも再構築する、言い換えれば「逆ナナメ・平行を付け加える」。それが「ダイヤモンド構築+再構築の連続」です。
 チーム全体、とりわけ3CB+2CH+GKは近い距離感を保ち、ボール保持者が当該ダイヤモンドだけでなく逆ナナメ・平行に逃げれる状態を作る。例えば右サイドが行き詰まった時(上図)、右CHカンテ(7)のすぐ近くに左CHジョルジーニョ(5)が立っていれば(逆平行)、アスピリクエタ(28)→カンテ→ジョルジーニョでカンテに食いつく相手OHを剥がして逆サイドへ持っていけます。ジョルジーニョに対しても「逆ナナメ・平行を付け加える」原則は同じで、リュディガー(2,逆平行)やマウント(19,逆ナナメ)がオプションを作ってプレス突破ルートを提供します。
 ダイヤモンド構築→ダメだったら逆ナナメ・平行→ダイヤモンド構築のサイクルを繰り返してボールを前進させていくのがチェルシーの基本線です。

 以上が、トゥヘル・チェルシーを形作る大枠です。戦略レベルから見ると「スカッドの特徴から逆算した、ひっくり返すためのチームづくり」が行われていたと言えます。第2章から、戦略を達成するための戦術、落とし込まれているディティールを見ていきます。

第2章 ①ビルドアップ

 この章では、ボール保持時の局面①ビルドアップ②崩しの内、①ビルドアップについて詳しく見ていきます。第1章で「ひっくり返すためのチームづくり」という枠組みを紹介しましたが、それに紐付いたディティールを掘り下げていきます。

現代サッカーにおける主要ルート3つ

 現代サッカーにおいて各チームの戦術浸透度はますます高まってきており、それと同時にスタイルや特徴が似通ってきています。よってボールを前進させるルートはどのチームもほぼ同じであり、それぞれのルートを使用する割合が変わるだけになっています。
 この項ではビルドアップの主要ルート3つについて確認し、次項で行うチェルシーのビルドアップの分析に繋げます。主要ルート3つは以下の通り。

ルートA:ハーフスペースから前進
ルートB:同サイド裏から前進
ルートC:逆サイドから前進

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 ルートA:
 どのチームもまずはクリーンな前進を目指すので、基本的にハーフスペースを最初に狙います。縦に速く背後スペースを取りに行くチームもありますが、背後だけ構築しても相手は下がってしまえばOK。ハーフスペースに出口を作り相手を引っ張り出すことから考えるのが基本線です。
 ルートB:
 ハーフスペースが潰された場合は同サイドの裏を狙います。相手がハーフスペースを消している状態というのは、相手DFラインがガンガン前に出ている証拠なので一発でスペースを突いてひっくり返すことを試みます。
 ルートC:
 ボールサイドから前進する選択肢(ルートA,B)が両方潰されている場合は逆サイドにスペースがあるので、組み立て直して逆サイドの押し上げによる前進を目指します。

ルート構築のディティール

 この項で取り上げるのは、チェルシーが前項で紹介した主要ルート3つをどのように構築するのかです。

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 最初のルートAは、最もシンプルです。上図のシチュエーションでは、ボール保持者のアスピリクエタ(28)に対してカンテ(7,左)、ジェームス(24,右)、ハヴァーツ(29,奥行き)がダイヤモンドを構築します。深さをとって相手の勢いを吸収し、縦パス或いはサーバー(左右)を経由してハヴァーツへボールを送り届けます。

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 ハヴァーツ(29)にボールが渡った後は原則通り再度ダイヤモンドを構築しなおし、ハヴァーツへ迅速にサポートを提供します。
 ただ、選手達の感覚としては「ダイヤモンド構築しないと。あいつが手前だから俺は左か...」と考えるのではなく、「あっちから前進してきたら俺は平行サポートだな」ぐらいだと思います。トレーニングを経たことで、大体の起こり得るシチュエーションとその時の自分のタスクが頭に入っていて、無意識レベルで実践できるほど浸透しているのだと思います。
 プレスを掻い潜ることができれば、一気に加速してカウンターアタックを発動。CFヴェルナー(11)が裏を狙い、逆シャドーのマウント(19)がライン間でサポート。逆WBチルウェル(21)もボールサイドがプレスを剥がした時点でスタートを切り、相手DFラインの「ライン上」まで上がります。

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 前述の通りハーフスペースが潰された場合はその裏が空いているので、シンプルにロングボール(ルートB)を蹴り込みます。裏抜け役はシャドーもしくは奥行きの再構築(次項で詳説)によって生み出します。スペースへボールを送り込んだらゲーゲンプレスを発動させ、2ndボールの回収による前進を目指します。

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 最後にルートCです。相手にガッツリ嵌められてしまいボールサイドからの前進が不可能な場合は「逆ナナメ・平行」を使い逆サイドへボールを運びます。基本的にボール側CH(7)が退いて逆CH(5)を解放する中盤ルートか、バックパスで迂回するGK(16)ルートで逆CB(2)へ展開します。

 チェルシーは、以上の主要ルート3つの中で特にルートCに強みがあります。後方に3CB+2CH+GKの6人を割いているため、常に近い距離感と数的優位を確保できるからです。従って「逆ナナメ・平行」を迅速に付け加えることが可能で、逆サイドへスムーズに展開できます。
 ひっくり返すまでは我慢強くルートBで組み立て直しを続け、相手プレスの基準点を乱すことでズレを生み出し、満を辞してひっくり返してカウンターアタックを繰り出します。
 自動的とも言えるほどの素早い逆サイドへの展開、ジョルジーニョとカンテのユニットとしての巧みな位置取り(ボール側が退く&反対側が出てくるetc)。戦略「ひっくり返すためのチームづくり」に基づいたルートBの強化が行われていました。

左右・人選による変化

 前項ではルート3つの構築方法について見ましたが、起用される選手個人やユニットの特徴によっても更にディティールが変化します。具体的には、ルートBの構築方法(ひっくり返し方)が変わります。

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 右サイドでは、ハヴァーツ(29)が潰された時の奥行きの再構築はカンテ(7)が担い、相手DFの背後スペースへ走り込んでスルーパスを引き出します。

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 反対に左サイドでは、マウント(19)が潰された時はヴェルナー(11)がサイドへ流れて奥行きを再構築し、新たなオプションを提供します。ヴェルナーは右裏へ走り込む場面も見られますが、基本的には左裏を狙うプレーが主体。右利きでカットインしたいタイプだからです。
 ハヴァーツがダメならカンテ、マウントが消されたらヴェルナー。選手の特徴により、左右でルートBの構築方法が微妙に異なっています。
 常にゲームに出場する二人によってもたらされる変化だけでなく、シャドー2人の人選によっても変化が生じます。CL決勝で先発したマウント、ハヴァーツだけでなくプリシッチ、シエシュ、ハドソン=オドイなどチェルシーのアタッカーの特徴は多岐に渡ります。
 例えばFAカップ決勝レスター戦では、シエシュ(左利き)とマウント(右利き)を利き足サイドに配置しました。レスターの5バックを崩すには順を追って外から侵入していく必要があるため、シャドーを利き足側に置くことで同サイド裏を攻略しやすくする狙いがあったと見られます(30'-60'辺りの時間帯は入れ替えていた)。

ex)vsレアルマドリー 1stLeg

 ここまで見てきたチェルシーのビルドアップの実例を紹介しておきます。CL準決勝レアルマドリー戦の1stLegです。

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 上図は21'00~の場面です。この試合もチェルシーは3-4-3。対するレアルも3-4-3でミラーゲームにし、マンツーでハイプレスをかけてくるという構図です。この場面ではチェルシーがゾーン1でビルドアップしており、ダイヤモンドを構築してプレス突破を試みます。

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 クリステンセン(4)→アスピリクエタ(28)→カンテ(7)→プリシッチ(10)で頂点へボールを届け、プリシッチはアスピリクエタへ落とす。そしてカンテがプリシッチを追い越して(奥行きの再構築)スルーパスを引き出し、ライン間を取ったプリシッチへ。完全に相手5バックを解体しているので中央には大きなスペースがあり、プリシッチはドリブル突破。フィニッシュへ到達する事は出来ませんでしたが、「ダイヤモンド構築→再構築の連続」という原則がよく現れた場面でした。

第3章 ②崩し

 この章ではボール保持時の局面②崩しのディティールを見ていきます。第1章で記述した通り基本原則は①ビルドアップと変わりませんが、「ボールを運ぶ」作業から「ゴールへ向かう」作業へと移るので異なるディティールが加わってきます。②崩しには、大きく二つのシチュエーションがあります。一つずつ説明します。

シチュエーションA:ビルドアップ成功後、カウンター気味の攻め
シチュエーションB:vs撤退守備

シチュエーションA

 まずはシチュエーションA、相手のハイプレスを剥がした後カウンター気味に攻めている「擬似カウンター」と呼ばれる状態です。

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 相手をひっくり返したら、前線のアタッカーはレーンを走ります。逆WBもプレスを剥がしたタイミングでスタートを切り、一本のパスで相手SBを剥がせる「ライン上」の高さまで進出します。ボール保持者は相手の反応を見て適切なレーンを選択します。相手は中央を閉めるので、基本的にはどちらかのWBを使います。

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 レーンを使ってゾーン3へボールを到達させた後、狙いどころは3つです。①同サイドのポケット②バイタル③逆サイドのポケット。加えて組み立て直すために手前も構築します。
 主に同サイドのシャドー(19)が①を走り、ヴェルナー(11)はDFラインと駆け引きするため②を埋めるのは逆シャドー(29)。①②が消された場合は必ず手前のCH(5)が空くので、そこを経由して③を担う逆WB(ライン上)へ持っていきます。

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 ②を攻略した場合はコンビネーションによる中央突破もしくはミドルシュート。ポケット(①③)から崩した場合、エリア内は平行(DF-GK間)・マイナス・ファーの3つを埋めてクロスへ備えます。ボール保持者は空いた場所を見極めて速いボールを打ち込みます。
 ビルドアップと同じ「ダイヤモンド構築+再構築の連続」という原則を用いており、同じようにやれば狙いどころ3つ+手前が埋まります。第2章でも言及したように同じ原則が適用され続けるので、選手達はある種自動的に立ち位置を取り、設定された狙いどころを確認し、プレー選択を行います。そのためゾーン3で必須となる「ゴールへ向かっていく速さ」が生まれやすくなります。

シチュエーションB

 シチュエーションBも、基本的にはシチュエーションAと同じです。ただ、相手は自陣に撤退してブロックを組んでいるため再度相手を解体する必要があります。従って、「再ビルドアップ」という工程が加わります。3-4-3はゴリ押しが効かないので、もう一度ビルドアップを行って相手をひっくり返し、擬似カウンターの状況を作り出さないといけないからです。ビルドアップのディティールは第2章で述べた通りです。
 シチュエーションBにおいて新たに加わるディティールは一つ。「シンプルなオーバーラップ」です。前述の通り相手が撤退しているため、単にレーンを走るだけでは攻略するのが非常に難しい。だから「オーバーラップ」を使って大外で2vs1を作り、質より量で崩すオプションを準備しているのです。「ゴリ押しが効かない」という3-4-3の構造上の弱点を補うためのオプションだと言えます。

ex)vsマンチェスターシティ(プレミア35節)

 ②崩しの一例として、プレミアリーグのマンチェスターシティ戦のワンシーンを紹介します。

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 31'00~の場面です。チェルシーは変わらず3-4-3、この試合のシティは5-3-2で守っていました。ゾーン2で左CHギルモア(23)がボールを保持しており、前に出てきた右WBカンセロ(27)の背後へ立つ左シャドーのシエシュ(22)へパス。

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 そのままカンセロ(27)裏から前進し、シティを自陣へ押し込みます。①同サイドのポケットへのカンテ(7)のランだけでなく、外からMアロンソ(3)がシエシュを追い越し、Rディアス(3)に対し2vs1を作ります。
 ボールの遠くへ目を向けると、ヴェルナー(11)は相手CB(14)と駆け引きしDFラインをロック。その手前②バイタルに逆シャドーのプリシッチ(10)が入り込み、③逆サイドのポケットに侵入できる位置に逆WBジェームス(24)がいます。

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 シエシュ(22)はオーバーラップしたMアロンソ(3)を使い、大外から①へ侵入。この時、ヴェルナー(11)が平行、プリシッチ(10)がマイナスへ位置取っており、ジェームス(24)がファーにいます。
 Mアロンソは浮き玉へジェームスへクロスを上げ、ジェームスは右足でシュート。ゴールにはなっていませんが、見事な崩しでチャンスを生み出しました。

第4章 ③攻→守

 最後に、③攻→守について。ただ、攻撃の原則より守備の原則と被る部分が多いため、ディティールはパート2の守備編を参照してください。この記事では、③攻→守に限定されるディティールについてのみ紹介しておきます。

・ゲーゲンプレス
・攻撃時の安定したポジションバランスによるスムーズな移行
・守備の原則に基づき、選択肢を限定する
・相手が後方からの構築を図るならそのままハイプレス
・プレスを剥がされたら撤退、5-4-1ブロックへ戻す

おわりに

 ここまで、チェルシーの攻撃について詳しく分析してきました。戦略レベルから整理していくと、チェルシーの設計がとてもシンプルであることが分かります。最初から戦術レベルで見ようとするとつい現象ばかりに目が行き、「この時はこうでこの時はこう、また違う時は...」と必要以上に複雑に捉えてしまいます。
 反対に戦略レベルで大枠を捉えてから現象に目を向けると、全てが一つの線で繋がっていて、同じ原則が根底にあると捉えられると思います。
 もちろん「現象論」にも意味はありますが、その背景に「原則論」があるかどうか。それによりどこに問題があるのか、どこまでは設計されているのか。少し本質的な部分に近づけるのではないでしょうか。

 最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!

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