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若木信吾の「つかずはなれず」写真講座

写真家の若木信吾です。 写真に関するあれこれです。写真家たちのインタビューや、ちょっとした技術的なこと、僕の周辺で起こっていること、それらについて考えていることなど、ざっくばらん…
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#つかずはなれず写真講座

かたずけをさえぎるもの

かたずけをさえぎるもの

 僕の現在の事務所は最近でいう、シェアオフィスという感じで、建築家の谷尻誠さんの会社にデスクを借りている。それまでは、マンションの一室を事務所にしていた。現在の場所に引っ越しするために多くの荷物をトランクルームや、実家の方に分散して置いているが、その中の主なものに写真のネガやプリントがある。大学の頃からの分を考えると、32年分、ここ10年くらいはカメラのデジタル化でフィルムの量はだいぶ減ったが、こ

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写真集とストーリーテリング

写真集とストーリーテリング

 Youngtree Diary #2がまもなく完成します 。前回に引き続き、15人の執筆者による日記を時系列にならべたものです。今回はさらに文字分量が増え、ほとんど読み物の作りになってしまいましたが、日記自体もとてもいいものになってます。

 写真家なのに、これほど文字ばかりの本を作っているのも不思議なのだが、言葉という伝達方法に憧れを持っているからかもしれない。自分が写真を主に使ったビジュアルコ

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いい写真とおしゃれな会話

いい写真とおしゃれな会話

 最近代官山の蔦屋に行くことが増えたのは、パーキングエリアの中に車の充電スポットができたからだ。以前は事務所が近くにあったから、ふらっと立ち寄ることはあったが、事務所を今の場所に引っ越してからは用事がなければほとんど行かなくなってしまった。それが車の充電を理由に週1、2回も行くようになった。しかし、その充電器は超高速大容量なので、だいたい30分もあれば満タンになってしまう。書店での30分はあっとい

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旧盆

旧盆

 七月は旧盆で、実家がある浜松は旧暦でお盆を迎える。13日の父のインスタグラムに迎え火の様子が写っているのをみて、お盆だったと気がついた。東京にいるとすっかり忘れてしまう。お盆とは夏休みのことだとばかり思ってしまう。迎え火のヴィジュアルは独特で、一瞬に子供の頃の記憶が蘇る。キャンプファイヤーの炎よりはずっと小さいが、マッチが燃えてるよりはずっと炎らしさがある。花火よりも直接木を燃やす方が刺激的だ。

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日記を集めたドキュメントという形で復刊させた「Youngtree Diary」

日記を集めたドキュメントという形で復刊させた「Youngtree Diary」

 前回に続き、13年ぶりに復刊させようとしているYoungtree Pressの話だ。ちょうど数日前に第一刷りが仕上がったばかり。印刷と違ってオンデマンドプリンターは、もともと製版がないから初版とか言わないのかもしれない。初刷といった方がいいのかもしれない。これからの販売方式を模索するため、そして、今回の参加者たちにサンプルとして一冊ずつお渡しするために合計20部刷った。

 この20部を初刷とし

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youngtree press復刊を目指して

youngtree press復刊を目指して

 本屋の経営や、第一作目の映画を作る前に作っていたものがyoungtree pressという出版物だった。西洋の写真家に憧れて留学したのは、田舎で手に入る洋雑誌からの少ない情報と残りを想像力で補うことで夢を膨らませることができたからかもしれない。アメリカ留学中、そして卒業後とアメリカ滞在中はアメリカの出版物を読むことが多かった。まだインターネットがそれほど広まっていなかった90年代の頃だ。アメリカ

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ショッピングモールで写真展

ショッピングモールで写真展

 前回イオンモールでの撮影会について書きましたが、今回はその続きです。

 東京は25日から3回目の緊急事態宣言に入ってしまったが、その直前の金曜日から浜松のイオンモール市野店でその撮影会で撮った写真を展示することになった。前回でも話したように、30人限定で撮る予定だったお客さんのポートレート写真が、当日の盛り上がりによって300組近くを撮らせてもらうことになった。それだけの枚数のポートレートを撮

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原風景とポートレート

原風景とポートレート

 最近はどんな仕事をしているの? とよく聞かれる。自分でも振り返ってみるとさまざまなジャンルの仕事をしていることに気がつく。ありがたいことに仕事を始めておよそ25年間、毎年かならずひとつやふたつは新しい仕事、これまでやったことのない仕事を依頼される。やったことがないことは一度はやってみるべきだと考える方なので、進んで受けている。今年初めての撮影は静岡美少女図鑑という企画で、雑誌スイッチとのタイアッ

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写真家A to Z Christopher wool

写真家A to Z Christopher wool

 この写真家A to Zでは映画監督や画家が撮った写真集を紹介することがあるが、今回も画家、Christopher Woolの「Road」という写真集を紹介したい。Christopher Woolのことを知ったのは1998年のLAでの大規模な展示のカタログを当時買った時からだ。2000年前後の当時は、スケーターや、グラフィティ・ライター界隈では、これからはステンシルをつかうのがかっこいいと言ってい

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写真家A to Z  Burk Uzzle

写真家A to Z Burk Uzzle

 1月20日は第46代アメリカ大統領になったジョー・バイデンさんの就任式だった。4年にわたるトランプ政権からの脱却を喜ぶ声と、そのトランプ政権が覆してきた各国との協定や、今後のコロナウィルス対策の提示など、山積みになっている問題をこなせるのかどうかという不安の声とが一体となってさまざまなメディアからながれこんでくる。最近よく聞いているアメリカのポッドキャストの番組On Pointでは、バイデンさん

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年の瀬最後の打ち合わせ

年の瀬最後の打ち合わせ

 今年最後の打ち合わせはTroutでアートディレクターの原耕一さん、デザイナー原七郎さん親子とだった。今年はコロナ禍で春から延期されていた写真集「Things and seen」を秋に出すことができて、とてもほっとしている。この写真集もTroutでデザインしていただいたものだ。今年は仕事の撮影が少なくなっていた分、個人のプロジェクトが増えていった。個人のプロジェクトといっても、完成目標は来年でその

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新写真集「things and seen」いよいよ今月末リリースです! エピソードNo.1

新写真集「things and seen」いよいよ今月末リリースです! エピソードNo.1

 今回の写真集には文章がついていません。リストをご覧になっても分かる通り、場所も年代もランダムです。これってなんなんだろう、と思うかもしれません。それでも成り立ってしまうのですから写真集って不思議ですよね。

 イメージは詩のように作った人の経験を超えて、それを見た人それぞれの記憶に関わる鍵のようなものになっていることが多々あります。映画の断片が、ストーリーとは関係ない自分の記憶を急に引き出してし

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チェキで写真を撮り始めた。最近。

チェキで写真を撮り始めた。最近。

 この秋にSUPER LABOから出る写真集の先行予約特典にするため、最近チェキを撮り始めた。ポラロイドは一点もの、それを全部で100点ほど作りたいと思っている。1週間で20枚くらいを目指しているのだが、プレゼントできるクオリティの写真を短期間で作るのは至難の技だ。どんなカメラでもいい写真は撮れるはずだが、チェキとなるとなかなか手強そう。早速フィルムを60パック仕入れた。1パック10枚入りで、計6

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