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【ミカタをつくる広報の力学】 #03 開発部門にミカタをつくる

広報担当者が社内で理解や協力を得るために、どうやって周りにミカタをつくっていくか。私の実体験をもとに、ミカタのつくり方を綴るコラムの3回目です。

開発部門といえば、社内でも一部の人しか知らないローンチ前のレア情報や、これから世に出ていく商品のパイロット版など、広報担当者にとって価値のあるネタの宝庫です。
今回は、開発部門の人をミカタにしたときの話をします。


※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。


開発部門は消極的?

そのとき私は、有明で開催される展示会に出展する自社ブースの企画を立てていました。

私のいた会社は基本的にはB2B企業ですが、コンシューマー向けのモバイルコンテンツをローンチするとのことだったので、開発部と協力して、そのコンテンツを大々的に発表することになりました。

そして打合せ。

開発部の要望を聞いて盛り込んでいこうとしたのですが、なかなか意見が出て来ない。そもそも要望が無いというか、あまり出展したくなさそうな雰囲気です。

「別に特別な機能も無いし、そんなに良い製品でもないですよ」と、とても消極的。

打合せの相手は開発部の主任でコンテンツサービスの責任者。
もともと大学院で研究をしていた真面目でひたむきな人なので、「オレがオレが」というタイプではないものの、自分で開発した商品をそんな風に言うのは、あまりにも消極的すぎるのではないか。

こういうときはまず相手のインサイトを知ろうと、開発部と製品に関するヒアリングと考察を始めました。


開発の立場からは市場が見えにくい

調べてみると確かに機能的には珍しいものではなく、世にあるシステムと類似のサービスでしたが、コンテンツとしては面白く、マニア向けで、今までにない市場価値をつくると思われました。

ところが、当の主任にその話をしてみても、彼には市場価値がいまいち見えていないらしいのです。

私がいた会社では、開発部の業務は大きく分けて3種類。
①マーケティング部門などからの新規開発要請
②既存製品の品質向上のための継続開発
③自発的な新技術の研究・開発

①と②は目標や仕様が決まっていて、それに対して短工期・低コストで到達することが評価されます。
③に関しては世に出るものは非常に少なく、ローンチされて評価を得たとしても、デザインや価格などの価値が付随しているため、開発部門の評価に繋がらない場合も多々あります。

そして通常業務は修正と改善の繰り返しなので、良いところを褒められるという機会が少なく、「自分の商品がウケてる!」という実感を得にくいのだそうです。

なるほど。
では、評価を感じていただこう。


「本当の評価」で説得する

私はまず、市場で差別化できる商品価値があることや、マニアックなコンテンツが市場に与えるインパクトの大きさなどを説明。
何より、B2B企業の自社にとってB2Cのコンテンツをローンチすることが、今後のパーセプションチェンジに大きく資することを話しました。

そして展示会に出展することは、少数のグループインタビューや顔の見えないアンケートではなく、多くのコンシューマーの反応を直接見られる数少ない機会であると。

「このコンテンツの、本当の評価を見てみたくないですか?」

市場におけるサービスの価値を測るのはマーケティング部門でも簡単ではありません。
ましてやテストマーケ(最近は概念実証とかPoCとか言いますか)以前のプロトタイプに自信のある人など滅多におらず、開発部門であればなおさらだと思います。

この提案によって開発部は、出展の意義に理解を示し、全面的に協力してくれることになりました。
結果は、なかなかの盛況だったと記憶しています。


おわりに

今回のような、自身の価値を過小評価している人には、データやグラフで市場価値をプレゼンするなど、わかりやすく評価を実感できるコミュニケーションが大切かと考えます。

たまたま私のいた会社の開発部門は、客観的な評価が見えにくい部署だったので、パブリックに披露できる場の提供が奏功しましたが、販売会社の開発部門やマーケティング部門の中にある場合などは、また別の切り口が必要になるケースもあるでしょう。

またスムーズなコミュニケーションのためには、専門用語も少しインプットしておいた方が良いかもしれません。
ちなみに私は、技術系のビジネス誌と展示会での開発者との会話からパワーワードを仕入れています。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ではまた次回お会いしましょう。


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