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200文字小説。

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三題噺ベースで200文字の小説。
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記事一覧

イイね!

イイね!

家の近くの停留所はハニーポットの形をしている。
○ーさんが出てきそうな。

なんでこんなメルヘン仕様なのかと調べてみたら、なんと平成元年からあるらしい。
当時作った人が遊園地に行けなくて寂しい思いをしていて、きっと同じ思いの人がいるはずだ、普段使う所に作ってみんなを楽しませよう!という考えだったと書いてある。
それにバス会社の人も賛同してくれて今もあるのだ、と。

記事を読んでほっこりした。

ちわきにくおどる。

ちわきにくおどる。

「えーと、この単語はこういう意味だから…」
今絶賛第一志望の大学に向けて勉強中。

ただ、1日経ったら忘れちゃうんだよなぁ。

テーマパークで働いてた時の方がまだ良かった。
虚ろな目をして、マイケルジャクソンのスリラーに出てくるゾンビみたいに動けば良かったのだから。
とはいえ、私自身リアルゾンビだからあんな風に動かなくてもじゅーぶん怖がってくれるけどね笑

はー、勉強しても頭に入らないし、また人で

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誘拐事件?

誘拐事件?

「身代金を払うか、肩たたき券を使うか選べ。」

意味が分からない。
分からないけど、今現実に起きているのは確かだ。

肩たたき券なんてどこにあったっけな…。
探していると電話口からオカリナの音が聞こえた。
のんきなもんだ。
そもそも誘拐されるような人がいないのだけども。
俺1人だし。

この不可解な出来事に首をかしげながら更に肩たたき券を探す。
「あった…」
と言うと同時に電話が切れた。

特殊能力。

特殊能力。

「いたっ」

急な痛覚が僕を襲う。
まるで身体を切り刻まれているようだ。

あー、豚さんを食べたからか…?
僕は時々食べたものの最期の瞬間を感じることがある。
この豚さんは生きたままバラバラにされたのか。
いつもなら安楽死してから加工されるので痛くないんだけど。

「ツラかったな…」
僕はつぶやいて痛みが引くのを待つ。
世界一の絶景の動画見てたんだけど、全く入ってこなくなった。
そしてあまりの痛み

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㉘I Love….

㉘I Love….



「んー、このパンナコッタイマイチ…?」
友達が言った。
「良かったー、こういうのってあんたみたいに気心知れた友達じゃないと、正直に言ってくれないから。みんな何か知らないけど気ぃ使っちゃってさ、不味い物も美味しいって言うの。私の味覚は間違えてなかった!」
少々興奮してしまった、笑。

「そりゃあ、キミが一流シェフだからよ。不味いものを美味しいと言っておべっか使う人もいるし、やっかむ人もいるからね

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㉗妄想

㉗妄想



「ピー…ザザッ、ザザッ…ピー…」
交信が始まった。

ここは北半球のどこか、とだけ言っておこう。
私には逮捕状が出ている。何の罪も犯していないのに。
だからこうして隠れてその時を待っている。
犯罪者ではない証拠は私が持っている。これをこの電気信号に乗せて広めればっ…!

その時の私は気付いていなかった。
電気信号は録音された偽物だということに。そして隠れ家のすぐ外にアイツらがいることに…。

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㉖こんなに晴れているのに

㉖こんなに晴れているのに



俺は消防士。
ウイルスの舞う湿地帯に連れて行かれ、火消しをさせられた。そこで感染して今隔離中なう。
多分、俺も火消しされるんだろーな。もうその算段もついてるみたいだし。
最後の抵抗してみるか。

俺は外に飛び出して走った。ひたすら走った。
走った先に「海ぶどうの家」という文字が見える。
助けてくれるかもしれない…!
いつまでも着かない。次第に足が遅くなる。

ああ、俺は外に出てなんかなかった。

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㉕本音

㉕本音



パーマ頭のピエロがエビフライをくわえてトランポリンを飛んでいる。
「ピエロさん、すごいねえ。」
子供がキラキラした目で言った。
「そうだねー、すごいねー。もっとすごいこと出来るかもよ?」
ピエロにも聞こえるように言った。

するとピエロさん、
「こちとら飯食う暇もないくらい忙しいんじゃ!今はやっと取れた昼飯の時間なんだから何もできねーよ!」
その瞬間飛んでいたピエロがぱっと消えていなくなってし

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㉔ダンデライオン

㉔ダンデライオン



「この、いもむしが!!」
新緑が気持ち良い5月のある日、河原を散歩していると突然こう投げかけられた。
呆気にとられてその場に立っていると、どうやら声の主は演劇の練習をしてるらしい。
でも明らかにこっち見てたよね!?
あれ?そこらへんの草が大きくなってるような…?え、これは私いもむしになっちゃったのー?
ハッと気付くと練習をしていたはずの青年が顔を覗き込んでいた。
「やったね!レジェンド白熊の催

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㉓心が入ってないって何。

㉓心が入ってないって何。



コンサートホールで歌のオーディションをやっている。
「すごく立派!」
こんな所に来ることなんて滅多にない私はウキウキしていた。まぁ友人Aちゃんの応援に来ただけだから、というのもあるけど。

Aちゃんはものすごく歌が上手い。その辺の歌手なんか目じゃないくらい。

今回も順調に勝ち抜きトップの座に…と思ったら審査員の「心が入ってない」の一言で奇しくも2位。
悔し涙を流していたAちゃんを見て私も泣い

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㉒lonely

㉒lonely



まるで太陽が光をまとったかのように放射線状に雲が広がっている。
「あー、太陽のマークの由来ってここからきてるのかもー。」
そんなことを考えながら家路へと急ぐ。

どこかの家からはピアノを激しく弾く音が聞こえ、またどこかの家からはカレー?ドライカレー?のような匂いがする。

「街は今日も平和だねぇ。」
ボソッと言うと、とんでもなく寂しい気持ちが襲ってきた。
ボクには帰る家がなかったんだ…。
(1

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㉑夢か現か…。

㉑夢か現か…。



「今日は快晴!いい青空が見えるでしょう…さて次は…」
天気予報士の明るい声で目が覚めた。
あー、テレビつけっぱなしで寝たのかーとぼんやりしていると、
「はい!クエスト失敗!あなたは10個歳をとります!」
テレビ?現実?いや現実にこんなこと起こってたまるか。
でもすっかり老いぼれになってるこの身体は10日前までハリのある筋肉質の身体だったのに。
これが夢であって欲しいと思いながら意識が遠のいてい

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