グッドパッチ社員同士で往復書簡してみた<後編>
こんにちは。グッドパッチでサービスデザイナーをしている髙階(通称、しな)です。グッドパッチ毎年恒例のアドベントカレンダーに参加することになり、今回はその1つとしてお送りします。
ということで、ごゆるりとお楽しみください。
いきなり申し込まれた「社内で往復書簡をしませんか?」
アドカレの記事、本当にどうしよう。
12月が始まろうとしているのに、僕は記事のテーマを決められないでいました。
こないだの健康診断で再検査にでもなったことだし『僕と脂肪肝』なんてタイトルのゆるふわエッセイでも上梓しようか──。そんな迷走を始めようとするくらいには割と困り果てていた、そんな矢先の出来事でした。
「往復書簡、しませんかね…?」
「互いに質問をしあって、それを互いに記事にしませんか…?」
この主はグッドパッチのコピーライターである豊田さん(通称、よたちゃん)。実はほとんど面識もなく、びっくりしました。
でも、なんだか「面白そう…!」と思ってしまったんですよね。
アドカレを謎の往復書簡で乗り切ろうとする心意気も気に入りましたし、なんなら僕はよたちゃんの書くコピーのファンだったりもしたので、聞いてみたいことなんて山ほどあったのです。
願ったり叶ったり。
ということで、よたちゃんのアカウントから公開されている前編では、思う存分に僕からあれこれと聞かせてもらいました。主に「ことば」について──。その軽やかでありながらも、ことばに対する真摯な姿勢を感じられて、とっても面白かったです。
ということで、後編となるこの記事では、よたちゃんから受け取った質問に対して、ゆるく、真面目に答えていきたいと思います!
よたちゃんからの質問に答えてみる
しなさん、こんにちは!今年は部署を異動されていましたよね。視点が変わったことで、仕事や価値観に何か変化はありましたか?
これは僕の中ではっきりとしたアンサーがあって、「もはや肩書きはなんでもいいな」という感覚を持つようになったんですよね。
今年、これまで所属していたUXデザインのチームから、デザインストラテジーのチームに異動しました。
ストラテジーって言ってしまえば「全体を考える」ってことじゃないですか。だから否応なく全部が目に入ってしまうんです。だからサービスの名前も考えるし、ブランディングもやるし、それこそコピーらしき言葉も書く。もちろんUIの細かいところを詰める日だってあります。
一体自分は何屋さんなんだろう…と思います(笑)。大変ですけど、何だかんだ楽しめている自分がいるんですよね。何でもやるからこそ、いろんなレイヤーのいろんな作業同士がどんどん紐づいていく感覚があって。それこそ戦略次第でUIだって変わりますしね。
よたちゃんの言葉を借りるならば「あたらしいことは、面白い」ですね。前編にあるそのフレーズをいたく気に入っている自分がいます。
サービスデザイナーという肩書を使われていますよね。これはどんな意図なのでしょうか?
そうなんですよ。そんな肩書、オフィシャルにはGpにないんですけどね(笑)。
意図としては、「全体最適でサービスを設計することに長けたデザイナーだよ」ということを明確に示したい、そういうポジションを取りたい、ってところでしょうか。
ユーザーとユーザー。ユーザーと組織。ユーザーとビジネス。サービスに関わるいろんな人や概念があるなかで、それぞれを突き詰めるのもいいけど、結局はそれらが上手いこと破綻なくまわり続ける仕組みがないとサービスって維持できないじゃないですか。
それってめっちゃ難しいことですけど、だからこそ面白みを感じるし、そこで価値を出せるデザイナーでありたいなーと思うんです。
ちなみにこんな記事も書いてます!
今年、自社・他社問わず熱かったサービスを教えてください。熱いと感じるポイントもよかったら!
サービスというかお店なんですけど…きっとよたちゃんも知ってると思いますが「フヅクエ」ですね。今年はじめて行ってみたんですけど、本当に心地よくて。
あそこはブックカフェと形容すればいいんですかね?でも本を売ってるわけではなく「各自持ってきた本を思う存分読んでください」みたいな場所といいますか。
なんで熱いか?でいうと、やっぱりサービスデザインとしてめちゃくちゃ素敵だなと思ったんです。あそこ、オーダーをしてもしなくても、何時間居座ろうとすぐに出ようと、お店側に支払う代金が割と一定になるような仕組みにしてるじゃないですか。だからこそ僕も安心して居座れたというか。
ダラダラ本を読むという体験を大事なものとして、そのための料金システムがある。ユーザーもお店も、みんなハッピーで全体最適ってこういうことか〜という気がします。
あの店を出たあとって、なんかスーパー銭湯にでも行ってきたかのような気持ちよさがあるんです。あー書いてたらまた行きたくなってきました。
しなさんが今年、仕事で「やってよかった」と実感した瞬間を教えてください。もし事例がいけそうでしたら!
今、街づくり関連の案件に携わっていて、その街で使われるサービスに名前をつけたんです。それをクライアントのPO(プロダクトオーナー)に見せたらすごい喜んでくれて。何なら正式決定なんてしてないのに、POのつくる資料には当たり前のようにその名前がロゴ付きで載るようになったんです。
あーやってよかったなーと。なんか感激してしまって。
あとは、ある音楽関連の案件に携わったとき、クライアントが「こんなに音楽を好きな人と一緒に仕事ができて嬉しい」と言ってくれたんです。だからなんだっていうんだ、という話ではあるのですが、なんとなくすごくうれしかったんですよね。
想いをもって、愛をぶちまけながら案件には取り組んでいたので、そうやって、そういうところで共感してくれるのは「やってよかった」と思いました。
定期的にITmediaで寄稿をされていますが、いつも面白い切り口で、閲覧ランキングも上位になっていてすごいです。普段、どのようにネタ探しをしていますか?
あれはですね、毎回「今月こそ、もうダメかもしれない…」と半べそをかきながら仕上げています。なんで締め切りに追われる生活を送っているんだろう…と毎回思います(笑)。
まず頼るのは、自分が愛用しているサービスたちですね。レコード、本屋、HafH、パンスク、Duolingoなどの記事は、シンプルに「自分の好きなもの」を選んで、それにまつわる面白そうな切り口が見つかれば「じゃあ書くか!」となる。
ただ、1年も連載していると、もうそんなに差し出せる愛用品がなくなってくるんですよ(笑)。そこで商業施設をウロウロして「旬」を嗅ぎ取ったり、藁にもすがる思いで日経クロストレンドを読み漁ったり…しています…。
例えば、以前「無印良品のリユース商品」について書いたのですが、あれは「今後伸びるビジネスランキング」みたいな記事があって、そこにあった「リユース消費」にビビッときたことが発端なんです。
それで「無印ってリユースにこだわってたよな?」と思い出して、そこから実際に店舗をまわって感じたことをベースに書き上げました。やっぱり実際に「いいな」と実感できないと書けない…というか書いちゃダメだ…というスタンスは大事にしているかもしれません。
しなさんがサービスデザインをする際「構造化」や「可視化」などのプロセスがあるなか、「言語化」もしくは「言葉にすること」は、どのような役割があると感じますか?
僕、けっこう言葉を書くんですよ。やっぱり「言葉があると、その真意や想いが伝わりやすい」と考えています。
物事を前に進めるために、何かを明らかにするために、もちろん日々何かと構造化をしています。なんですけど、なんていうかエモいところとか、気持ち的なところも込めたいじゃないですか。だから僕は割と言葉にして説明しちゃうタイプです。
それこそ、ちょうどいま案件で取り組んでいるのは、チームメンバー向けのインナーブランディングです。いろんな会社のいろんな役割のメンバーが在籍しているプロジェクトなので、やっぱり1つになれるような旗が欲しいなと思って。だからコンセプトと、そこに至った経緯や狙い、そしてやっぱり情緒的なところをしたためたスライドを作っています。
サービスデザインって、ユーザーの体験価値やビジネス成長に向き合うこともそうですが、自分たちプロジェクトチームとしての一体感を作ることも等しく大切な責務なんです。いいチームにならないと、いいものなんて作れないので…。
あ、ついでですが、面倒臭いこんな記事を書いたことがあるので、よければ読んでみてください!
しなさんの目指す、究極のサービスデザインってどんなものでしょうか?
なんか難しい質問を放り込んできましたね…いや、大事なんですよ。ちゃんと考えますね。ちゃんと考えたいから、ちょっと冷蔵庫からワインをとってきますね(一瞬離席)。
…改めてこの問いに向き合うとですね、めっちゃシンプルかもしれません。究極のサービスデザインとは「ちゃんと持続可能にする」ということでしょうか。
ビジネス的に持続可能。それを運用する組織として持続可能。ユーザー的にも「無理なく価値を受け続けられる」という意味で持続可能。それらが関連しあって、互いが互いのハッピーにつながりあっているという意味で、包括的かつ共創的に持続可能…ってのが究極であり必要不可欠…なのかなあ?
何だか早口言葉みたいですね(笑)。
都内近郊で、忘れられない一皿を教えてください。根拠は一切ないのですが、なんだかご飯がお好きなイメージがあります。
質問の落差?ピボット?が凄すぎて笑ってしまいます(笑)。ありがとうございます、たぶんご飯、かなり好きだと思います。ありがとうエンゲル係数。ようこそ脂肪肝…。
さて、僕からは、JR新橋駅構内にある「かのや」のうどんを紹介させてください。
前職のオフィスが竹芝にあったんです。だから当時はゆりかもめで通勤して、新橋駅での乗り換え時にふらっと足を運んでいました。東京のうどん屋さんには珍しく、出汁が関西風でやさしいんです。しかも麺は太めでコシがあり、讃岐うどんみたいなタイプ。
決して特別な味ではないのかもしれませんが、ちゃんと本当に美味しいんです。
ムシャクシャした日なんかは、かなりの確率で立ち寄っていました。とりあえずうどんでも食わんとやってられん、的な(笑)。今でも新橋で飲んだりするとふらっと寄ってしまいます。いいんです、特に好きなのはゲソ天うどん。
今年よかった音楽を、アーティストかアルバム単位で3つ教えてください。これは服だったり色々から確信しているのですが、音楽お好きですよね! すごく気になります。
ビョークのTシャツを着て、会社のイベントに参加したりしますからね…。でもあれですよ、会社のYoutube動画のなかでレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンに言及するよたちゃんも愉快だなーと思いますけどね(笑)。ぜひ音楽の話も今度じっくりさせてください!
①Arooj Aftab「Night Reign」
パキスタン出身で、現在はニューヨークで音楽活動をしているアルージ・アフタブ。
とにかく渋い!その低めの声もサウンドもとにかく渋い。ジャズというのかR&Bというのか、静かな音楽ではあるのですが、どこか穏やかではない感じもして。なんていうんでしょうね。めっちゃくちゃかっこいいです!
②serpentwithfeet「GRIP」
ビョークの作品に参加したりもしてるserpentwithfeetの新作です。抑え目ながら強いビートに、こだわり抜かれた1つ1つの音色。あとはメロディなのか、声色なのか、どこか厳かな美しさを感じる瞬間もあってハッとします。
③Ålborg「The Way I See You」
オールボーと呼びます。インディーファン(という言葉って今でも生きてるのだろうか)である髙階も大歓喜…なアルバムです。あーこういうのこういうの。メロディと演奏の優しさ、しかも粒揃い。やっぱり僕はこういうのが好きなんですよね。いつまでもくるりを聴いていられたら幸せ…という僕みたいな人にすすめたいです。
あ、そういえばよたちゃんがセレクトしてくれたHYUKOH・落日飛車のアルバム、僕も大好きです!
来年は、どんな一年にしたいですか?
僕、ここ近年は「はしゃぎ倒す30代の恐ろしさを見せつける」という謎のテーマを掲げているんですが、来年もその路線を維持したいな、なんなら発展させたいな、なんて思っています。怖いでしょう?
おわりにーー往復書簡をやってみた感想
そういえば僕は、とりとめのない日記を書く習慣があって、かれこれ10年くらい続けています。とりとめなんてないくせに、書くことで自分なりの答えが見つかる瞬間があって、だから好きなんです。
ふと、そんなことを思い出しました。
往復書簡というプライベートなものを世に出す…なんてよくわからない捻れを感じなくもない今日この頃ですが、でもひょっとしたら、そんな文章だからこそ出てくる本音や本質ってのもあるんじゃないかなあ。サービスデザイナーの、高階の、そんな一面を誰かが感じてくれたのなら、ちょっとだけうれしく思います。
よたちゃんへ
お返事を書きながら、自分なりにいろんなことを考えていました。言葉ってのは膨大な思考の先にある一雫…というのは僕の考えたフレーズなんですけど、でもそうですよね。往復書簡があったからこそ、言葉にできた思考があります。ありがとうございます!
ぜひ今度は面と向かっておしゃべりさせてください。ぜひお酒とともに。