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短編小説

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飢餓

「きたよ」
 夕方6時ちょっと過ぎ。車の中で本日最後の取り組みを観たあと(直人のうちに上がる前に制限時間いっぱいになり車内で観ていた)ガチャと玄関のドアをあけ音を立てずにそっと中に入る。まずテーブルをみてから布団をみやる。そして台所。
 キョロキョロと2度だけ目をまわすと直人がテーブルの下で鉄砲で撃たれたクマのように横たわっていた。
 電気は『団らんモード』の設定になっており、暖房はさほど寒くもな

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第54回 阿刀田高のTO-BE小説工房 佳作「つき」藤村綾

 とにかく日当たりがよくて大きな窓のある部屋を。不動産屋の営業の水野さんに半年前から伝えてあった。あったけれど、今まで四件ほど水野さん推しの物件を観覧しに出向いたけれど、納得のいくような物件には出会えず未だにまだ日当たりがおそろしく悪く小さな窓しかないワンルームに住んでいる。

「本当にすみません。なにせ都内で駅近でとなるとなかなかなくって。その大きな窓ってのが」

 すっかり仲良くなってしまった

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