マガジンのカバー画像

短編小説

160
運営しているクリエイター

2022年2月の記事一覧

青い鳥

青い鳥

「俺の一番好きな生き物ってさ、ほんとうは犬じゃなくて野鳥なんだよね」
 昼ごはんをいっしょに食べよう。と誘われてあわてて支度をし(起きたのが10時半を過ぎていたし、誘いの電話があったのが11時ちょっと過ぎだった)支度といっても軽くお粉をはたき、眉毛の足りない部分を描くだけなのだけれど。
 それでもなにを着ていこうかということだけは迷い迷ったあげく、細身のスキニーのジーンズに茶色の毛玉のないセーター

もっとみる
アイコス

アイコス

『ハッピーバースデー』
 修一さんが誕生日だったのでメールでそれだけ送り、プレゼントも買ってあったけれどそれは送らず、あっけなく12日が終わってしまった。

「50歳だし。俺。まずいな」
 昨日たまたまあったので誕生日おめでとうイブということでそういうと、まずいし、なんか実感がないよといいながら苦笑をした。
「あのさ、」
 ベッドの中にいた。きょうは元気がない。ということでただベッドの上で裸で並ん

もっとみる
雪だるま

雪だるま

 さむい。すごくさむい。
 わたしはさむいさむいといいながら直人の足に冷たい足をくっつける。わっ、冷たいっ。とても大げさに叫び、そんなにぃ? とわたしはクスクスと笑う。寝入り端。
 明け方。薄っすらと空が白み始めてきたころ、直人カーテンをあけ、ほら、みてみ。といいまだはっきり目があいていなくそして夢うつつのわたしに声をかける。ゆさゆさと肩を揺らして。
「わっ、」
 おどろいて、振り返り直人の顔をみ

もっとみる

『ここだよ』

 2月になった。え? もう2月? というぐらい1月は素早く過ぎ去った。皮膚科にいったのは、首がひどくかゆかったためだ。
「タートルが着れないんです」
 皮膚科の先生にいうと、ちょっとみせてね。先生がわたしの赤くなっている首をみて、あーあまあかゆそうね。いまそういったひと多いのよ。ちょっと強めの薬出しておくね。
「はい」
 診察時間はたったの三分。お会計は1007円。っておい! そして薬代は480円

もっとみる