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短編小説

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2020年11月の記事一覧

11月30日

11月30日

「あ、おそい……」
 彼はまだ起きていてというか今まさに寝起き状態でなぜだかインスタントカレーを食べていた。
「うん。おそくなったよ」
 インスタントカレーのインスタントカレー独特の匂いが鼻梁をくすぐる。こんな時間にカレーぇ? わたしは語尾を斜め45度くらいに上げクスクスと笑いながら問いかける。
 うん。腹減ってさぁ。彼もまた同じように笑いついでみたいに、食べる? と聞いてくる。食べないよ。あたし

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11月25日

11月25日

 ブーブーブーと枕の上で振動しているスマホを無視して、ったくこんなに早く誰だろうという怒りが込み上げるも振動が鳴り止むとまた無意識に眠りの中に引寄せられた。
 とにかく眠たかった。最近不眠気味だ。睡眠薬が抗うつ剤が安定剤がうまいこと作用をしてくれない。致死量目一杯まで飲んでいる魔のラムネのような色とりどりの薬たち。これ以上は薬を増やせないかな。と先生にいわれているけれど昨夜は黙ってちょっとだけ多め

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11月17日(短編小説)

 会社の慰安旅行みたいなやつで(紅葉の季節だからって)割と有名な温泉にいった。いったけれども本当は行きたくなかった。なぜなら以前彼といったことのある温泉地だったからだ。何年か前だけれども何十年にも前に思えるのはなぜだろう。
 あのころはまだあたしと彼は絶頂の愛の渦の中にいた。部屋に露天風呂があったし料理だって高級(鰻と牛肉)で布団だってフカフカだったしなにせチエックインをしてすぐに抱き合ったし夕食

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