〈第1回寄稿〉 宮城島さんのレクチャーを聞いて

こんにちは、シン八田利也です。
構造設計家で舞台美術家でもある渡邊織音氏より寄稿いただきました。
ありがとうございます。以下に掲載します。

【観光について】
宮城島さんは写真でも見受けられました、ひとり旅の(一本の木に足を投げ出している写真)感覚と、都市を巻き込む(関東郊外での計画パース)観光の思考の中にいるということがなんだか興味深く感じました。北海道の自然の風景などを見ていると、途方もない土地の大きさと、人間が生きている範囲のスケール感の違いをどのように取り込んでいくのだろうと思いながら、観光の規模の違いをどのように考えて整理されているのかも、もっと知りたくなりました。

【コロナ渦について】
全体的に感じたことですが、コロナ渦における観光が環境に与えていた負荷についてすこし考えるシーンが私にありました。最近よく放映されていた、無人化した都市に流れ込む動植物たちのシーンを思い出すたびに、これまで前提としてきた都市世界観が崩れていくようでした。建築が構成する都市空間と、それらをとり囲む大自然が可視化されて、はじめて包囲されている認識が私たちに飛び込んできます。消費を楽しむ人の手によって作られた都市空間は、常に脅かす可能性の十分にある途方もない自然が待ち受けている世界を、私たちが歓迎できるかが問われているのかもしれないと思ったりしました。これまでの観光を成立させる空間がいかに生理的なしつらえに過ぎなかったかということを感じさせる瞬間もたびたびあったような気もします。この時代だからこその感受性なのかもしれないと思いました。

【ハイチの計画について】
ハイチのようなカリブ諸国にヨーロッパがもたらした植民地化の手段として、宗教活動もひとつかと思いますが、宗教と教育活動も深く関係していると思い興味をもちました。学校建設にはそれなりのお金がいると思い、資本の動向に興味を持っています。宗教団体が建設チームを非営利で構成していることや、日本でもJICAなどが途上国への支援を多くしていることもふまえて、世界中が行っているこのような事例に、なにか特徴的なことがもっと聞ければよいなと思いました。

全体を通して、とても興味深いお話でした。ありがとうございました。


渡邊織音
構造設計・舞台美術家
1986年生まれ、東京都出身。構造設計・舞台美術家。2017年より演劇=グループ・野原に参画。意匠・構造の設計事務所勤務を経て独立。早稲田大学在学時より自力建設や建築デザインを通した国内外のワークショップを中心とした活動に関わり続け、東日本大震災での支援活動をきっかけとして、福島でNPOを設立し、農・食・観光・再生可能エネルギー等の活動に携わる。古民家を改修しながらの生活で、日常の中に失われていくものや、取り残されている姿・風景をじっくりと観察し、様々な分野を横断しながら新しい視点を作り続けている。近年の舞台美術で携わった作品として、利賀演劇人コンクール2018にグループ・野原『冒した者』@富山県利賀村岩舞台、鳥公園のアタマの中展2『おねしょ沼の終わらない温かさについて』(2019)@東京芸術劇場アトリエイースト、ヌトミック『それからの街』@CLASKA(2020)、円盤に乗る派『おはようクラブ』@吉祥寺シアター(2020)

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