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もし営業が「質問力」をもっていたら

この夏、我が家は大きな買い物をいくつかしました。

湯沸かし器を交換し、ダイニングテーブルと自動車、冷蔵庫の買い換えです。

なかでも複数の大手家電量販店をまわった冷蔵庫選びが、ホントに大変でした。

『無敗営業』という本によると、「過去に出会った中で最高だと感じた営業担当者の特徴を教えてください」という質問に対して、一番多かった回答は、

「わかってくれる・意図を把握してくれる・的確・明確」

だったそうです。

多くの営業組織の研修では、「営業はお客さま視点で」と教えられるそうですが、はたして現場ではどうなんでしょう?

BtoBとBtoCの違いや、訪問営業、店舗対応などの違いはあると思いますが、「お客さま視点」が求められることは共通なのではないかと思います。

すごい勢いでお金が飛んでいってしまった……ので、店員さんの立ち居振る舞いをコーチ目線で観察。こんな質問をしてほしかったな、ということを書いてみます。


希望の条件に合うものが……ない!?

我が家の冷蔵庫は結婚当時に買ったもので、なんと23年もがんばってくれた強者です。

だからもう、手が慣れちゃってるんですよね、開け閉めとか、すべてに対して。

そのため、わたしが新しい冷蔵庫に求める条件は3つでした。

① 野菜室が真ん中にあること
② 野菜室が大きいこと
③ 背が高すぎないこと

一方で、ダンナ氏の条件はひとつ。

① 自動製氷機があること

冷蔵庫の下見を始めて気がついたのですが、最近のタイプは冷凍庫が大きい! そして真ん中にある!

3つしかない条件のうち、2つがいきなりの危機に。

冷蔵庫のような、大きくモデルチェンジすることがない家電は、はっきり言って、どのメーカーも大きく変わりません。

野菜室がちょっと広いけど一番下段にあるか、野菜室がかなり小さいけど真ん中にあるか。

帯に短し、たすきに長し、ってこういうこと!?

選択肢が限られてるけれど、大きな買い物です。妥協はしたくない。どの家電量販店でも、同じお店の別の支店でも、店員さんとあれこれ会話はしました。

そして、かなり不満をもったのです。

店員さんとの会話

お店には、わたしひとりで行ったことも、ダンナ氏とふたりで行ったこともありました。

その際、だいたい会話はふたつのパターンに分かれます。

<パターン 1>

店員さん「冷蔵庫をお探しですか?」

わたし「最近の冷蔵庫は、ずいぶん野菜室が小さいんですね」

店員さん「冷凍室が大きめのものが多いですね」

わたし(あの、見たらわかることを言われても……)

<パターン 2>

店員さん「冷蔵庫をお探しですか?」

わたし「あまり背が高くないものがいいんですよね」

店員さん「最短だと1週間でお届けできますよ」

わたし(あの、会話がかみ合ってないんですけど……)


「営業はお客さま視点で」以前に、「わかってくれる・意図を把握してくれる・的確・明確」のどれもマッチしない状況に、思わず笑ってしまいました。

これまで家電を買うときは、だいたい店員さんに相談したり、その分野に詳しい友人に意見を聞いたりしていましたが、今回は自分で条件を整理し直し、購入するものを決めました。

店員さんに質問してほしかったこと

いい加減、家電量販店まわりに疲れてきたころ、店員さんが「聞いてくれないこと」があると気がつきました。

そこで、自分が「バーチャル店員」になって、条件を整理することに。

バーチャル店員「冷蔵庫をお探しですか?」

わたし「最近の冷蔵庫は、ずいぶん野菜室が小さいんですね」

バーチャル店員「そうかもしれませんね。いまお使いの冷蔵庫は、大きめなんですか?」

わたし「23年前に買ったんですけど、その頃は野菜室が大きめで、真ん中の段にあるものが多かったんですよね」

バーチャル店員「23年前! 大切に使われたんですね。たしかに最近は冷凍室が増えましたね。お料理はよくされますか?」

わたし「いやー、この3年くらいでするようになったくらいですかね」

バーチャル店員「お料理をよくされるとなると、野菜室が大きめのほうが安心ですよね。冷蔵庫のほうはパンパンになってないですか?」

わたし「お鍋とか入れるときゅうくつですが、ふだんはそれほどでもないですね」

バーチャル店員「であれば、サイズ的にはいまと同じくらいがご希望ですか?」

わたし「そこを悩んでて。この先、老人のふたり暮らしになることを考えると、ちょっと小さめにしてもいいのかなという気もしてるんですよね」

バーチャル店員「失礼ですが、いまはおふたりでお住まいなんですか? お友だちを招いたりもされないですか?」

わたし「ふたり暮らしです。友だちは招かないです」

バーチャル店員「ふたり暮らしなら、たしかにもうワンサイズ下でもいけるかもしれませんね」

わたし「ですよねー」

バーチャル店員「ただ、この3年の間にお料理する機会が増えたということであれば、一回り小さい冷蔵庫だと狭く感じる可能性はあるかもしれませんね」

わたし「ああ、たしかに」

この、最後のひと言が決め手になって、いまと同じサイズの冷蔵庫に決めたのでした……。

見えてきたポイントは3つです。

・家族構成
・現在の冷蔵庫の容量と収納率
・料理をする頻度

え、それ、当たり前すぎるんじゃ……という気がしますが、これ、誰も聞いてくれなかったんですよね。20店くらい回ったのに。

最初に紹介した書籍『無敗営業』には、「営業は顧客の悩みを解決するパートナーであれ」という言葉が出てきます。

顧客の悩みを解決するためには、まずどんな悩みがあるのか知る必要がありますし、いろいろと話す中で顧客自身が“気づいていなかった”不満が見えてくるかもしれない。

わたしのバーチャル店員との会話でいうと、サイズの迷いのところです。

「わかってくれる・意図を把握してくれる・的確・明確」という特徴を備えた営業担当者とはつまり、顧客の悩みに関心をもっている人、といえるでしょう。

そして「顧客の悩みを解決するパートナー」となるために必要なのは、質問力

もちろん、冷蔵庫のスペックや新機能についてはていねいに説明してもらえました。でも、わたしは、この製品を使うと生活がどう変わるのかを見せてほしかった。

未来を感じさせてほしかったのです。

営業とコーチングって、実はとても近いところにあるのかもしれません。

自戒を込めて。


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