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あなたは夏をみる人だ うつむいたレースのカーテン越しに あなたは白い夏をみるひとだ 窓辺にもたれながら、口をすこし閉じて 花模様のレースの編み地には 猫の引っ掻き傷ととれない汚れがほほえましい 編み目が透明なガラスをはさんで 庭を映す 手入れをしない原生林のようなみどりの庭を あなたは好む それでもやや正面右の猫の墓たちの 周りはおしろい花や紫陽花を植えて 「移り気」という花言葉を思いながら あなたはもう 見られている 紫に朽ちかかった萼、猫たちの瞳から 一枚のガラス
生きたまま花の化石になりたい という少女がいて 街は、霞のようにかすかに かそけく 輝いているのだった ちちははの眠るやわらかな記憶の棺たち 少女は母似の瞼をとじた 人生を終えて新たな遊行の歩みを告げる釘の音 (釘もまたその命を灼熱の炎のなかで終える) ちちははの顔を埋め尽くした花の来歴はわからない 街に立ち込める麝香の匂い 牡鹿の内臓のすえた臭い この街では、供花は不吉の徴とされ ありとあらゆる哀しみの記憶は 過去へ未来へと作り変えられていった
積乱雲を追って 暗い翳つくる地平を疾走するものがあった 川の古い祠の霊気を吸って 星辰のゆらぎを皮膚に烙印するものがあった (立ち枯れた草木月下のふかい冷え込みのなか 雪豹の仔は生まれた) 机の上の青白い囲みのなかに 閉じ込められた雪豹をみる 書きかけた詩篇のなかで 原野に放たれ 都市の肉を引き裂くおまえをみたかった 力強く疾走し さ苦痛と不和を削ぎ殺してしまうおまえを見たかった 冬ごもりの温みをあらかじめ備え 叫びの瘡蓋を撫で 蘇生できないわたしを叱咤す
積乱雲を追って 暗い翳つくる地平を疾走するものがあった 川の古い祠の霊気を吸って 星辰のゆらぎを皮膚に烙印するものがあった (立ち枯れた草木月下のふかい冷え込みのなか 雪豹の仔は生まれた) 机の上の青白い囲みのなかに 閉じ込められた雪豹をみる 書きかけた詩篇のなかで 原野に放たれ 都市の肉を引き裂くおまえを見たかった 力強く疾走し 苦痛と不和を削ぎ殺してしまうおまえを見たかった 冬ごもりの温みをあらかじめ備え 叫びの瘡蓋を撫で 蘇生できないわたしを叱咤する
剽窃したい人はそこに居て、夏のセロリ をしっぽから齧っている。水は生温いが金魚鉢の赤い魚たちは夢を追わずきょうも元気だ。猫は背を丸めしっぽりと寝ている。 猫を抱きしめる主体は私だが、猫は私に抱きしめられたとは思っていない。 そのように、あなたは私の透けた静脈をみつめる。セロリをほとんど食べ尽くして。 剽窃したい人はそこに居て、その時間には詩人たちの居場所がない。装飾された言葉がない。ただひとつの椅子だけが用意され、永遠という名の木ねじははずされている。 水溶性の欲望があなた
沈黙して眠るほかない 鬱積を投げ合う蒼い人語の地穴で 帆軸を極北に向けた 難破船のようにふかく朽ちていく 沈黙して眠るほかない 世界の清しい涯てを むなしくも夢みて 未だ塔のように屹立する痛み 薔薇の棘ばかりが名をもつ ひそかに おごそかに 薔薇の根を抉る 内部の声をきく極北の郷土より 土をあつめ 根のようにわたしを移植する しずかに発芽した赤い蕾をそっと閉じ 瞼を重くするのは 心音はるかとおくに聞く古の神話の子守歌 わたしは もう 自分に水やりをしな
★脱力 肩幅に足を開き、空をつかむイメージで両手を上げる。その緊張した状態から、首、肩、胸、腰、膝と順に緊張をゆるめていく。 ★「ひらいた声」を出す 「ひらいた声」とは一番リラックスした状態で出す声のこと。椅子に出来るだけ楽に腰掛け、「La」、「Ma」をひと呼吸いっぱいに発声しながら、今日一番の「ひらいた声」をさがす。 ★呼吸する 鼻から深く息を吸い、口から長く吐く。その時、脇腹(横隔膜)が呼吸とともに膨らんだり、萎んだりするかを、自分でさわって確かめながら行う。
白島 真 2020年3月号より当誌の詩誌評を担当することになり、年間を通して毎月100冊から150冊の詩誌を読み込んだ。 筆者が詩誌を友人と発行したのはもう半世紀も前の20代のころの一時期で、今回は全国で発行される量の多さと各々の充実した内容に圧倒された。 初回3月号の詩誌評タイトルは「詩誌文化」とし、冒頭「詩誌の世界は百花繚乱、まさに詩誌文化と呼ぶにふさわしい活況を呈しており、詩の世界もまだまだ未知の可能性を秘めている」と書いたが、この気持ちは担
白島 真 前号では100号を越える詩誌を取り上げたが、その後、さらに8冊をご恵送戴いた。 詩人会議系の詩誌「沃野」632、「軸」137、「道標」178すふの3冊。そして「日本未来派」239、「山脈」通巻149、「菱」209、「RAVINE」210、「笛」293の8誌である。同人誌の世界でこれだけ100号を越える詩誌が存在することは驚きであると同時に、詩の未来にほのかな光明が見え、感慨を覚える。スペースの関係で1誌を紹介する。 ☆「菱」209(鳥
白島 真 今回は詩誌の号数に留意してみた。100号を越えている詩誌に絞って書いてみようと考えたが、何と6月から9月中旬に発行され、たまたま今、手元にあるだけでも30誌もある。当然、全部は掲載し切れないので、詩誌名と号数だけを列挙すると以下のごときである。その中からいくつか取り上げてみたい。(地域や発行者、編集者のお名前は文字数制限があり割愛させてもらった。順は不同です) 『駅』123、『逆光』106、『橋』160、『独合点』140、『環』168、『銀
白島 真 今回はインターネット(以下ネット)における詩の世界に少し触れてみたい。 ネットの普及は1995年のWindows95の発売から加速したと言われている。筆者が初めてパソコンを購入したのが2003年のことで、それ以前も以後も仕事で使うということは皆無であった。メールアカウントには53という数字が含まれているが、それは今から17年前の53歳の時に初購入したことを意味している。 ネットの代表的なSNS(ソーシャルネットワー
白島 真 いきなりの私事で恐縮だが、私は新聞もテレビも見ない。ニュースソースはもっぱらツィッターである。コロナ禍についてのワイドショーなどは幸いにして見たことがなく、徒な不安を煽り立てられることもない。最低限の防御だけはしている。 ★「詩素」8(平塚市・洪水企画)野田新伍・南原充士・池田康による編集。読み物としては南原の「ベートーヴェンのピアノソナタ」が面白かった。全32曲のうち「月光」「熱情」などの呼称が付いているのは13曲ほどで
白島 真 今回はいつもよりやや個人誌が目立ったので取り上げてみたい。その利点は、思うがままに自己主張でき、詩と散文の配分、発行時期、頁数など自由に決定できるところで、個性を全面に打ち出すことができる。難点としては余程工夫をした誌面作りをしないと画一化され、読者に物足りなさを感じさせる。今月手元に届いている個人誌は14誌。装幀もきちんと製本されたもの、中綴じホチキス留め、A3二つ折り、A4二つ折り、A4三つ折り等様々であるが、サイズとし
白島 真 毎月多くの詩誌が届けられ読んでいるが、その形状や装幀も様々である。ハッと目を引く表紙もあれば、ワード出力用紙をホチキスで止めただけのものもある。 これから詩誌を創刊される場合、やはり郵送料を考慮して制作する必要があることは言うまでもない。同人誌間の交互送付が盛んである現状を鑑みると、高額な郵送料は負担が大きい。 よく目にする形状はA4用紙を三つ折りにしたもので、「風化」45(上越市・鮮一考)、「4B」18(東京・中井ひさ子
白島 真 コロナウイルスが猛威をふるっている。4月1日現在で感染者数521人の東京を筆頭に大阪・愛知・北海道・千葉・兵庫・神奈川・埼玉が100人越えである。詩誌名や発行場所、詩人名を新たに覚えてきているが、都市名が出ると具体的な詩誌も浮かび、大丈夫だろうかと心配にもなる。早く収束して欲しいものだ。エイプリルフールの日に、国がマスク2枚を全家庭に配布と決めた無策とも思える政策も記録としてここに留めておく。 詩誌の高齢化対策として若い方の誘致や活躍が
70歳の古希ともなれば、いつお迎えが来てもいいころだ。 この歳で苦悩がどうの、真理がああのとぼやいていれば、仮にそれが心の裡だけのことであったとしても、お前ね、いい加減観念して静かに終活でもして、身辺整理などもしろよ、ジタバタするのは見苦しくねっ?と、大人ずれしたもう一人の自分が語りかけてくる。そうすると書生っぽい私が項垂れて聞き取れないくらいの小声で言うのだ。でも、一応、私は詩を書いている人間だし、真夏のグラスの中で氷がカランと溶けていくように、宇宙のなかでカランと溶けて