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【WBC】野球に学ぶ組織論「団結力」は、いかにして生まれるのか。~Number1077号より

久しぶりのWBCネタになります。プロ野球ペナントレースも佳境に入り、春先のWBCメンバーそれぞれの奮闘、そして海の向こうのメジャーリーグでも大谷選手をはじめとして大勢が活躍しています。特に大リーグ情報は日本時間の朝に入ってくるので、毎朝ニュースでも流され、元気の源になっています。さて、今回は「Number 1077号」で野球特集が組まれ、その中でも私の好きな「組織論」が取り上げられていましたので、ここでシェアしたいと思います。



ラーズ・ヌートバー選手「スペシャルなケミストリー」

「一体感、つまりチームケミストリーは、一緒に戦うチームメイト同士が仲良くなると同時に、エゴをいったん捨てて同じ方向に向かっていくことだと思います。目標が統一できれば自然にファミリーのようになって、よりチームが強くなる。」

集まった時には全員が玄関にエゴを置いてきたようだった。その雰囲気を作ったのはもちろん栗山さん。(中略)普段から一緒に戦っているわけではないからこそチームケミストリーは絶対必要だったし、短期間でそれを生み出して世界一という結果を得ることができた侍ジャパンには完璧に満たされました。」

ラーズ・ヌートバー選手 Number 1077号(AUGUST 2023)より

今はCMでも見かける存在となったヌートバー選手。単身、アウェイの状態で侍チームに溶け込むにはとても勇気が必要だったと思います。持ち前の明るさと思い切りの良さで、テレビ等で見かけるヌートバー選手からは想像できないほど、当初は不安があったようです。しかしそこは周りの助けも支えとなり、一躍人気者に。インタビューを読んでいると、彼こそ本物のサムライではないか、という気持ちになってきます。きっと親御さんのご指導も素晴らしかったのでしょう。

(食事会で)「行ってみたら、自由に着席したらダメだと。どうやって席を決めるかというと帽子の中からクジを引いて座る場所を決めようって。(中略)クジ方式は大正解。これまであまり話したことがなかったメンバーとも交流できたことがチームケミストリーを大きく支えた。

「どこに行っても自分の持ち味を保つのは大事だと思うけど、それと同時に周りのことを気にしないとダメでしょう。失礼に当たったり、自分が浮いてしまうような行為をしたりするのはダメ。日本の文化、チームのやり方を尊重したうえでどう自分の持ち味が出せるかずっと気になっていた。名古屋での初日から翔平が僕を受け入れてくれたおかげで、話しやすくなった。」

ラーズ・ヌートバー選手 Number 1077号(AUGUST 2023)より

大のプロ野球選手がくじ引きで席決め、という光景を想像しただけでニヤけてしまいますね。恐らく皆、中学・高校や大学のチーム等で合流したことがあったり、知り合いのチームメイトなどから話題を膨らませていったのかもしれません。また、ヌートバー選手の「心得」もまた素晴らしい。これは私見ですが、本物の一流の方々は彼と同じような考えを持っているような気がします。そして(申し訳ないですが)半端な「自称」一流、または上げ底組ほど、いつでもどこでも我流を押し通そうとする。小さな自分を大きく見せるわけです。やはり「郷に入っては郷に従え」。改めてこの諺の大切さを思い出させてくれます。

栗山監督「最後は魂が決する」

(監督としてのおもしろみは?という質問に対して)「おもしろかったですね。でも難しかったかな・・・この仕事に何が必要だったかと言われれば、人脈、人間関係ですよね。(中略)今までの人生、どれほどの縁を持って生きてきたかが問われるんです。人生、出逢うべき人には必ず出逢う、一瞬遅からず、早からず、というのは哲学者の森信三先生の言葉ですが、会っていないと思っていた人に実は会っていた、ということがたくさんありました。そのときはわからなくてもその出逢いを無視せず、大事にしていたからここに繋がったのかという人もいて、そういう出逢いが人との縁を繋いでくれるんだなと痛感しました。

栗山英樹監督 Number 1077号(AUGUST 2023)より

やはりキャスターもされていた栗山監督だけあって、言葉の選び方が秀悦です。「人生、出逢うべき人には必ず出逢う」は本当にその通りですね。またそこから「縁」が生まれるということもありますし。大谷選手が高校卒業後にストレートで大リーグに挑戦しようと考えていた際に、日本で研鑽を積んでからにすべきだ、と説いたのが栗山監督。まさに天祐。あの縁がなければ今回のWBCもまた別のストーリーになっていたかもしれません。

また、大谷選手と共に今回のWBC侍ジャパンの精神的支柱となったダルビッシュ選手も日ハム出身。栗山監督とダルビッシュ選手は一緒に仕事をされたことはなかったそうですが、長い月日を経てようやく実現。このあたりも何か運命じみたものを感じますね。

(背中でチームを引っ張った大谷選手のエピソード)「準決勝のとき、翔平は周東に『ここまでなかなか出番が少ないけど、勝負どころは強だから、今日は絶対に周東で勝つんだからな』と伝えていました。周東に限らず、あまり試合に出ていない選手に対して、翔平はそうやって言葉をかけて回っていたんです。みんなが自分のできることを、誰かのためじゃなく、勝つために必要なことをやっていた。そのことがチームのみんなをひとつの方向に向かわせてくれたと思うし、(中略)チームで勝とうぜという想いをみんなが優先させる形になっていったのは、僕じゃなくて選手たちがそれぞれ役割を果たしてくれたからなのかなと思います。

栗山英樹監督 Number 1077号(AUGUST 2023)より

まずは大谷選手の偉大さ!映画でもチームの士気が下がっている時こそ、人一倍大声を出し、ベンチを歩き回ってチームを鼓舞している姿が描かれていました。彼が喜怒哀楽の表情を目いっぱい出すことで、周りへもどんどん伝播し、佐々木朗希選手の160キロの帽子投げに繋がったのではないでしょうか(笑)。寡黙な印象が強かっただけに、開幕前からの成長著しい姿はとても微笑ましかったですね。

そして後半は栗山監督らしい「謙遜」ですが、チームのムードを作るのも監督の為す「技」。決して緩すぎず、厳しすぎず。ちょうどいい撓みとでもいいますか、選手たちが一番良いコンディションでプレーできるように準備するのも監督力だと思います。そういう意味ではこうした栗山監督の姿勢が今回の伝説に残るチームになったのではないでしょうか。


その他の記事も素晴らしい!必見です!!

今回はWBC関連の記事を中心にご紹介しました。が、今回の「Number」はそれ以外にも読みどころが満載。第1回WBCでの「王監督の猛抗議」は、王監督の毅然とした抗議からの紳士的な立ち振る舞いに感動しました。また、ベイスターズの明るさオリックス投手陣に関する記事などを読んでいると、やはり時代によって「チーム論」「リーダー論」は変わってきている部分もあるな、と勉強になりました。もちろん骨子の部分は変わらない面も多いのですが、現代風なのが「明るさ」「楽しさ」「居心地」といった、闘志一辺倒ではない、そもそもの野球を「楽しむ」という側面も大事になっていることを読み解くことが出来ました。これは野球だけでなく、どの分野でも参考になるのではないでしょうか。



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