見出し画像

【本紹介】Brain 一流の頭脳④

前回の続き。

今回のポイントは、ずばり「運動こそがすべて!」。

これでもかと言うほどに、著者のアンダース・ハンセン医師は強調する。もちろん、運動だけしていればいいという意味ではなく、身体を動かして心拍数を上げる事により、集中力が高まりやすくなり、勉強の効果が上がりやすくなるという意味だ。机に向かう時間は、十分に確保しなければならない。

現在の社会は、脳の進化の速度をはるかに凌ぐ速さで変化している。生活様式の変化に、肉体が追いついていない状態だと、ハンセンさんは指摘する。

 現代人を悩ませている心身の不調は、身体を動かさなくなったことが原因だと考えてよい。運動すれば、脳の機能が強化され、気分が晴れやかになり、ストレス不安やストレスが和らぐ。創造性が増して、集中力が高まる。今は、人類の生物としての歩み方が間違っているのだ。

著者は、学力優秀国フィンランドでの歩数実験を紹介する。

子どもが運動から得る恩恵は、成績が上がる事だけではない。ストレスにも強くなれる。フィンランドの小学2年生258名を対象にして、こんな調査が行われた。子どもはストレスの多い状況にどう反応するか、ストレスに対抗する抵抗力と活動量には何らかの関係性があるのか、というものだ。

9歳児の子どもたちは歩数計をつけて調査を行った。

その結果、

毎日たくさん歩いた子どもは、あまり歩かなかった子どもに比べてストレスを感じにくく、精神状態も安定していた。(ストレスホルモンであるコルチゾールの濃度が、より低かった)

どんな活動を子供にさせれば、良いだろうか。子供には、自身が楽しいと思うような活動が望ましいだろう。ランニング、縄跳び、ボール遊び、何でもよいだろう。好きでなければ、続かない。

・学力を上げるには、心拍数を上げることが効果的

アメリカの研究チームは、スポーツが嫌いで、いつも周囲からもっと運動するように言われていた肥満気味の子どもたちの脳をMRIでスキャンした。すると前頭前皮質(額の後ろにあり、抽象的思考や集中力、計画立案等の能力を司る領域)が活発化していたのである。

この成果を、研究チームは次のようにまとめている。

子どもが潜在的な能力を存分に発揮するには、身体を活発に動かさなくてはならない。
こうした調査の結果を見れば、運動が短期的にも長期的にも、子どもの脳に多大な影響を及ぼす事は明らかである。たった一度の運動で集中力が高まり、それを維持することができて、読解力も向上する。効果は1時間から数時間続いたのち、少しずつ薄れていく。だが大人と同じように、運動を定期的に数ヶ月続けると(要は習慣にすれば)、効果は増大して長続きする。
 どのような運動を選ぶかは大人と同じく大した問題ではない。ポイントは心拍数を上げる事
脳の成長という観点から、運動を積極的にさせた方がいい年齢はあるのだろうか。まだ詳しくわかっていないが、多くの研究データによれば、小学校に通う学童期が最も運動の恩恵を得られるようだ。

運動によって、脳の具体的にどの部分に変化が見られたのか?

科学者たちが最初に気づいたのは、海馬の灰白質が成長していることだった。海馬は灰白質の一部である。とはいえ白質も、やはり運動やトレーニングによって強化される。子どもたちが運動を定期的に行った場合、白質にも変化が見られたのだ。灰白質と同じく、白質も組織が密集して厚みを増していた。つまり機能性がより高まったということだ。

画像1

(写真: 本書 「Brain 一流の頭脳」より)

白質が複数のコンピュータを繋ぐケーブルだとすれば、子どもたちの脳内のデータ転送を行うケーブルの働きが運動によって強化されたということになる。つまり、情報が領域から領域へと効率よく伝わるようになり、脳全体の働きがよくなったのだ。
認知機能が灰白質で処理されていることは確かだが、白質も決して無関係ではない。白質は、子どもたちの学力に関わっていると考えられている。
運動が白質に及ぼす影響、つまり脳のケーブルの働きが強化されるという効果は、決して子どもに限らない。運動やトレーニングをすると、年齢を問わず白質の機能が強化されるという。とりわけ大人の脳の白質と運動量は、かなり関係があると考えられている。

スウェーデンでは、オフィスで立ち机で仕事を行う人が増えているという。

実際座っているときよりも、立っているときの方がエネルギーの消費量は2倍近くになる。学校でも職場でも立って作業すると脳が効率よく働くことが明らかになっている。

要は、脳トレなんか意味がないから、身体を動かせ、と言っているようなものだ。

上記のような話は、にわかに信じがたいだろう。そんな読者に向けて、著者は次のようなメッセージを送っている。

 あなたは、この章で紹介した事実に面くらっただろうか。実は、私もそうだった。あまりの驚きに何度か読み返し、自分が読み違いをしていないかどうか確かめもした。いったいなぜ、このことが一般的に知られていないのか。その理由は、運動がうつ病に及ぼす効果の場合と同じく、やはりこの一言に尽きる。「お金」である。
 もし、薬やサプリメントに運動のような効果があれば、買う人は後を絶たず、1人としてそれを知らぬ者はいないはずだ。子どもでも大人でも運動をすれば、脳にこんな素晴らしい効果がある。
薬やサプリメント、コンピュータゲーム、認知トレーニングと違い、遊びやウォーキング、ランニングのような活動には費用がかからない。そして、どんなサプリメントもかなわない、沢山の素晴らしい効果がついでに得られるのである。

本書を信じるかどうかは、ご自身に、お子さんに試してみてからでもいいはずだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?