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【本紹介】ものの見方を変える

脳は、ものの見方で進化する」。そのタイトル通りの本。

  アマゾンで評価が高くないけれども、自分にとって気づきが多い本と出会うと、なんだか嬉しくなる。それぞれの人にとって「良書」は異なる。①読者が持っている前提知識、②"今"、その本に求めているもの、③著者との対話力、すべてが異なるからだ。つまり、今の自分にとって学びがあると感じるものに出会えて、嬉しく思ってるという事なのだと思う。

 読書録を読み直すたびに、本書に引いたアンダーラインやメモを見返すたびに、何らかの気づき・発見がある。そんな本に一冊でも多く出会いたい。

 知識は、つながることで文脈・解釈が変わってくる。今の自分の解釈と1年後の自分の解釈は、同じ文章に接していたとしても、自分が感じる/考えることは変わる。それが面白い。そして、なぜそれが変わるのかを知るのはもっと面白い。本書はそんな「知覚」に関する本である。

人間には、自分の脳の脳の構造を物理的に変える能力がある。

※網膜芽細胞腫という目の癌を患い、3歳で両目の視力を完全に喪ったベン・アンダーウッドという少年が「舌を鳴らす」ことで(その反射音で)世界を見る方法を体得し、16歳でその生涯を終えるまで、(他の人にとっては無意味な情報から複雑な意味を構築し)、巨大な可能性に満ちた人生を自由に生きた例が、本書で紹介されている。(p.97) ベンは、”他の感覚を視覚の代わりに使うことで脳の構造を変えて、全く新しい知覚の仕方を手に入れた”のだ。

生き残るという進化の目的に従った結果、知覚できるものが違った。

・シャコ(甲殻類)は16個の視覚色素(光を電気に変えて、脳内の受容体が受ける取れるようにする物質)をもつ。人間は3つしかない。
・トナカイは極限の過酷な自然の中で暮らしている。紫外線を反射しない表面を見つけることができれば、好物である苔が生えている場所がわかる。苔を探すために紫外線を見る能力を手に入れた。
・猟犬は人間にはない鋭い嗅覚を持っている。

 環境の中で生き残るためには、周囲の環境に積極的に関わり、試行錯誤を通して学習しなければならない。そのヒント/しくみも本書に紹介されている。

行動することで、脳の構造が実際に変化し、未来の知覚の方法に影響を与える
 何を知覚するかは、興味の対象、性格や気質、文化、そしてそれを体験する文脈によって決まる。
 五感は、基本的にただの機械的な媒体であり、そのため知覚においてごく限られた役割しか果たしていない。例えば視覚の場合、脳が見るために使っている情報のうち、目から取り入れた情報が占めるのはわずか10%だ。残りの90%は、脳の別の場所から入ってきた情報で構成されている。そして本書は主にこの残りの90%のことを扱っている。
 知覚が重要なのは、それがすべての思考、知識、信念の基盤になるからだ。希望や夢も、知覚で決まる。どんな服を着るか、どんな職業を選ぶか、どんなことを考えるか、どんな人を信頼するかということも、すべて知覚で決まるーもちろん、どんな人を信頼しないかということも。
脳の知覚の仕組みは複雑で、かつとても個人的なもの
知覚のプロセスを自覚することで、自分の人生を変えていく力がある。
 知覚の仕組みを理解するには、”それをどう見るのか”だけでなく、”なぜそれをみるのか”ということも大切。
この世界に生きる私たちは、つながりから決して逃れることはできない。
 狭い価値観に合わせた人生は、可能性や好奇心、想像力が間違いなく制限される。
 自分の思い込みを疑えば、かつてはまったく縁がなかった思考や行動にも手が届くようになる。
 知覚でいちばん大切なのは、試行錯誤を繰り返すことだ。行動と反応(フィードバック)を繰り返すこのプロセスを、「応答サイクル」と呼ぶ。わたしたちが何らかの形で世界と関わると、その経験が脳の中に蓄積され、実際に脳の構造を変えることになる。そして脳の構造と、その脳による知覚が、わたしたちにとっての現実だ。
細胞レベルではどのようなことが起こっているのか見てみよう。ニューロンと、ニューロン同士を結ぶ無数のつながりが、脳全体のネットワークを構成している。脳はいわば裏方であり、この裏方さんが極めて複雑な業務をこなしてくれるおかげで、表に出ているあなたという存在が円滑に機能している。外界からの刺激はすべて感覚受容体というものが感知して、それらは脳内の正しい場所に送られる。
 それぞれのニューロンの中にはさらに複雑なネットワークがあり、膜(脂質)、タンパク質(リボソーム)、デオキシリボ核酸(DNA)、酵素で構成されている。新しい情報が電気信号の形で流れてくるたびに、その情報の時間、周波数、長さに応じて脳内のネットワークが変化する。それが、膜、タンパク質、酸、酵素の構成に影響を与え、最終的にはニューロンの物理的・生理的な構成を変化させる。ニューロンとネットワークが、あなた自身と周りの世界に関する決断を下しているので、つまるところはこのプロセスが、あなたという人間を形づくっているといえる。


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