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日本代表の帯同ドクターという仕事

 こんな形で、スポーツビジネスに関わる形もあるのか。将来スポーツビジネスにドクターとして医療の面から関わりたいと考えている若い人には、ぜひ本書「サッカー日本代表帯同ドクター」を読んでほしい。漫然と勉強ができるから、医学部・医者を目指すのではなく、「女子アスリートを支援するために、女子代表チームの帯同ドクターを目指す」といった具体的で明確な目標を持っていた方が、その途中にある苦難を乗り越えていけるはず。

 本書の著者である土肥美智子さんは、JFA田嶋会長の奥様でもある。いかにして、土肥さんが今の仕事に辿り着いたのか、その思考のプロセスにヒントがある。

 当たり前だが、今日一生懸命努力しない人が、将来こうなりたいという理想の自分の姿の夢をかなえる事はない。夢を叶えるには、夢を持つ必要がある。具体的な夢があるから、今日頑張ろうと思える。

具体的な夢・目標がない場合、どうしたらいいかという悩みをよく聞く。だが、そもそもどんな仕事が世の中に存在しているか、若者がわからないのは当然だ。どんな選択肢があるかもわからないのに、具体的な自分の将来仕事している自分の姿をイメージできるわけがない。「目標がある→毎日の努力ができる」という好循環のサイクルに自分を置くまでが大変だ。

 夢や目標がない場合、どうしたらいいか。夢や目標でなくても、「夢中」を見つける。そもそも、世の中にどんな仕事があり、どんな人がどんな経緯でその仕事に就いたかを調べてみる。SNSや書籍、コネクションはそのように使うのがいいかもしれない。

自分が、時間を忘れて没頭できる対象、飯を食べるのも忘れて夢中になれるものを、見つける、そしてそれを追ってみる。ひとつでなくていい、複数同時にするのがむしろいい

それでは、本書の内容を少し紹介してみよう。

①ぶれない目標
ドクターを目指したときから、著者はスポーツドクターを目指すと決めていた。千葉大学卒業年度には、すでに将来の道を決めていたという。
スポーツ医学の一択、スポーツドクターになることを。

②独自の強み、先見性を磨く

 今は、業界でどんなことが起きているのか。その流れの中で、将来はどうなりそうなのか。自分は、どのようにして独自性、優位性を確立していけると自分は考えているのか。何が自分は、相対的に強みがあるのか。

著者は、大畠襄先生との出会いを挙げている。日本の医科系大学でで初めてスポーツ外来部を設立した人。「より現場に近い、競技にかかわる医療」が当時はなかった。

 当時は、MRI装置が全国の大学病院に設置され始めた時期。今後スポーツ外傷・障害の診断を飛躍的に改善させるだろうと胸が高鳴った。「この先、スポーツ界に進むにしても、医師として何か得意分野がなければやっていけない。ならば、放射線科で専門医になろう

サッカー日本代表帯同ドクター ~女性スポーツドクターのパイオニアとしての軌跡~


自分なりの将来の見立て、仮説を立てることができるか、どうか。

ここが職業の選択、しいては、自分だけのオリジナルなキャリアを築けるかを分ける。

その後、世の中の雰囲気が徐々に変わっていき、AFC/FIFAの仕事が増えていき、「女子サッカーの大会で、ドーピング検査する女性医師が欲しい」と声がかかるようになったそうだ。

・土肥さんの職歴としては、
2006国立スポーツ科学センター(jiss)に入職。JOC(日本オリンピック委員会)の派遣で、2008北京2012ロンドン2016リオに帯同している。アジア大会、ユニバーシアード。その後、当時のサッカー日本代表のハリルホジッチ監督が、「チームドクターを常時2人体制にしたい。一人は内科医で、サッカーでの帯同経験のあるスポーツドクターがいい」という考えから、土肥さんに声がかかったという。

➂チャンスを逃さない、つかみ取る

そうそう多くのチャンスは訪れない。機会が生じたときに、声がかかる場所に自分がいることができるか。そういうコネクションを持っているのか。社会では、お声がかからなければ、大成しようがない。大きな仕事を任されない。

 人生、どこにチャンスが転がっているかは、わからない。千載一遇のチャンスを生かすためには、チャンスにまず気づく必要がある、そのチャンスに遭遇した時に、つかみとれる自分の力がなくてはならない。

 それよりもずっと前のプロセスで、挫けてしまう人も多い。

「私にできわけがない、私には無理だ」

 もしこの文章を読んでいる読者が、10代・20代であるならば、その考えは、改めた方がいい。今のあなたには、可能性が無限に広がっている。それをみすみす手放しているのは、あなたの凝り固まった思考、ただそれだけ。

 今の自分を、1㎜でも前に進めよう。そのためには下記から実践してみてはどうだろう

・自分を成長させてくれる人と、1秒でも多く接する時間をつくる

・自分の挑戦を阻害する人とは、距離を置く

・自分の具体的な目標、理想の姿を思い描いてみる

→それがないならば、関連書籍やSNSを駆使して、世の中にどんな人がどんな仕事をしている人がいるのかを解像度高く、知ろう。まずは知ることから始まる。

・具体的な目標がなくても、気にする必要はない。動くことを習慣にすることができれば、チャンスに恵まれる機会は大きく増える。行動力があることは大きな武器になる。習慣を変えよう。

・今日1日をがんばろう。頑張らざるを得ない環境に身を置こう、日常を設計しよう。これまで事を成し遂げた人は、他の選択肢を「捨ててきた」人でもある。

 まもなく2月になる。受験生にとっては、最後の大詰めの時期。あなたを応援してくれる人がいる。受験を諦めざるを得なかった人が、世の中にはいる。見えないものに思いを馳せられるか。

すべての受験生を、応援したい。自分の可能性を追ってほしい。

 (余談)本書に、ハリルホジッチ監督と後任の西野朗監督の、日本代表の食事の際のテーブルの配置の話が紹介されている。ハリルホジッチ監督は、長方形の長テーブルで向かい合う形で並ぶ形を好み、選手達の長テーブル・スタッフの長テーブルは完全に分かれており、ハリルホジッチ監督自身はスタッフ用のテーブルのお誕生日席にいつも座っていたという。
 西野監督は、これを変え、食事の際には、5-6人毎の丸テーブルに全部入れ替えた。これによって、選手同士のコミュニケーションが活発になり、会話がぐっと盛り上がるようになったという。先輩が後輩を気遣うようになり、別テーブルに座る選手への声掛け等も増えたと言う。このような環境設定にもヒントが隠されている。

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