見出し画像

写真展「どこまでも」 〜今日から始まるはずだった写真展について

今日から始まるはずだった写真展、中止のお知らせです。
2020年8月17日から開催するはずだった写真展「どこまでも」。

本当は「今日から写真展です」
というお知らせをするはずでしたが、できませんでした。
すごく残念です。

やるべきかどうか、かなり悩みました。
毎年、同じ時期に、同じ場所で、16年続けてきた写真展。
今年が17年目の展示でした。
場所はゴールデン街の「こどじ」というお店。
写真関係の人が多く集まる小さなバー。

10人も入れば満席になる飲み屋に
大勢集まってにぎやかに飲む恒例の写真展。
いつもならその濃密な雰囲気が楽しくて良いのだけど、
今年はそれが良しとされない。

人を呼ばずにひっそりやることも考えたけど、
ぼく自身、この半年で都内に1回しか行っておらず、
頻繁に通うこともできなさそうで、
人も呼ばない、自分も行かない、
そんな状況で写真展をやっていいものか悩んだ末の決断です。

ぼくは写真を仕事にしてるわけでも、
カメラに詳しかったりするわけでもない。
写真を撮ること自体も好きかどうかよくわからない。
写真展をやることになるまで、ちゃんと写真を撮ったこともなかった。

それでも展示を続けていくうちに
学んだことや気づいたことはたくさんあって、
それは仕事にも活きているのは確かだけど、
16年、毎年どんなに忙しくても写真展をやっている理由はひとつだけだ。

「こどじ」という店が好きだからだ。
写真展の間はそこでひたすら飲み続ける口実ができる。
それが続けている理由だ。

毎年この時にだけ会うって人がたくさんいる。
年に一度「たまには飲みませんか」って声をかける良いきっかけになっている。

いまでも写真展の期間の2週間はほぼ毎日深酒をする。
毎日が楽しくてしょうがない。
毎年写真展の前は徐々にお酒の量を増やしていって、
しっかりコンディションを整える。
帰宅の手間をなくすために、
写真展の間だけ新宿にマンションを借りて住んだこともあった。

「こどじ」というお店には30年以上通っている。

初めて行ったのは32年前、父親に連れられてだった。
新宿の映画館で「フルメタルジャケット」を見に行った後だったと思う。

その頃、世の中はバブルにさしかかる頃で
ゴールデン街は時代に取り残された場所になっていた。
再開発のための地上げもあって、
シャッターが降りた店が多くて閑散としていた。

でも飲み屋がひしめいているごちゃごちゃした感じと、
カウンターとイスしかない簡素な狭い空間が、
とても魅力的で幼いながらその世界のとりこになってしまった。

地上げ屋に対抗する「ゴールデン街を守ろう会」
のTシャツを着て中学校の夏合宿に行ったのはいい思い出だ。

とにかく「こどじ」にはよく通った。
一番コアに通ったのは大学時代から社会人になってしばらくの十数年間で、
その頃はほぼゴールデン街に住んでた。

こどじで写真展が始まったのは2003年からだった。
常連客で月2回、お店の壁に写真を貼って
それを肴に飲むという試みが始まった。

ぼくも常連だったので声をかけられたのだけど、
正直、写真を撮ったことはなかった。
カメラも持ってなかった。
写真展をやると決めて初めてカメラを買った。

なんとなく好きだった団地の風景を中心に風景を撮って歩いて、
展示したのが第一回目の写真展。
2004年6月のことだった。

タイトルはちょうどその頃に見た団地を舞台にした
塩田明彦監督の映画「どこまでもいこう」(1999年)に感動して、
撮っているのも団地の写真だし、そこから取って「どこまでも」と付けた。

最初の展示はとにかく緊張した。
よく考えたら「自分の作品」を見せるのはこれが初めてだったかもしれない。
写真関係の人ばかりがくる店で、
人生で初めて撮った写真を見せるプレッシャーに押しつぶされそうになった。

「どこまでも」(2004年6月)

画像1
画像2

初日のことはよく覚えている。
作品を展示したあと、店がオープンするまで外で時間をつぶして、
店がオープンしてもなかなかお店に行けずにふらふらしていた。

携帯電話にお店から電話がかかってきて呼び出された。
意を決して店に行った。
お店には写真家の鬼海弘雄さんがいた。
あの名作「PERSONA」の鬼海さんだ。
少し酔っていた。
で、2時間ほど愛のある強烈なダメだしをされた。
その後も次々と色々な方たちから厳しいお言葉をいただいて、
けっこう心が折れた。
たまにほめられたりもしたけど、何せ初めて撮った写真だったし、
自分でもいいのか悪いのかよくわからなかった。

それから17年、いまだに何だか分からずに写真を撮り続けている。

そして写真展も年一回、必ず開催している。
タイトルはずっと変わらず「どこまでも」のまま。
映画のタイトルから付けただけだけど、
ずっと使える便利なタイトルで、
我ながらコスパのいいタイトルを付けたなと思っている。

今年は17年目、17回目の展示になる予定だったけど、残念ながらの中止です。
お店の方もしばらくお休みするとのことです。

ただ写真展の準備だけは進めていたので、
noteで公開しておこうと思います。

実際にどんなプリントを貼るかは、
当日店に行って決めているので分からないのですが、
開催前に配布予定だったDMと
会期中に来てくれた方に配るために作っていた冊子のページを公開します。
写真はこの1年で撮ったものです。

来年は写真を見ながらにぎやかにお酒が飲めますように。
そんな夏が来ることを心から祈ってます。

「どこまでも17」(2020)

画像3
画像4

(DM表/裏面)


来てくれた人にプレゼントする予定だった冊子です。
(32ページ/表・裏表紙含む)

写真集20_2_ページ_01
写真集20_2_ページ_02
写真集20_2_ページ_03
写真集20_2_ページ_04
写真集20_2_ページ_05
写真集20_2_ページ_06
写真集20_2_ページ_07
写真集20_2_ページ_08
写真集20_2_ページ_09
写真集20_2_ページ_10
写真集20_2_ページ_11
写真集20_2_ページ_12
写真集20_2_ページ_13
写真集20_2_ページ_14
写真集20_2_ページ_15
写真集20_2_ページ_16
写真集20_2_ページ_17


<写真展どこまでも振り返り>

<それ以降の写真展>

2021年写真展

2022年写真展のこと

2023年差進展のこと


この記事が参加している募集

カメラのたのしみ方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?